憎いままに愛する劫火と歩みを共にする、礼儀正しい葬儀者。 何時ぞやの劫火、母なる星から放たれたそれは彼女の故郷を焼き尽くした。劫火は彼女の存在と運命を捻じ曲げ、追悼者としての役割を彼女に与えたのだ。 「燃え残った」もの全てを劫火で以て火葬し、忘れ去られた全ての過去と共に自身を火にくべる日を夢見て、一縷の灯火は今日も宇宙を揺蕩う。 ─────────────── 「拝啓、燃え残った私へ」 星の赤金の血を腐敗させる猛毒、終末を象徴する地獄の業火、神々の怒りを体現し文明を一掃する聖火。「それ」を意味する言葉は天を打ち付ける星の数程もあるのだろう。 「今は小さな火種の燻りも、いずれその花弁が宇宙を覆い尽くす。」 「それ」によって彼女の故郷は燃え尽きた。初めからそうであったかのように、後には白灰のみが残ったのだ────ただ1つの燻りを残して。 「遥か昔のことですから、その記憶の大部分は砂のように色を失い、ひび割れた荒地のように風化してしまいました。」 その余燼はたった一つの火種を拾い上げ、遥か宇宙へと飛び立った。まるで何かを目指すかのように、しかして目的なく揺蕩うかのように。 「それでも、孤独への恐怖だけは未だに鮮明で、私の歩みを引き止めようとします。」 全てに火をつけ、灰になるまで見送る。星火はいずれ野火となり、宇宙を焼き尽くし物語に終止符を打つだろう。 「…だからこそ、私のように孤独に苛まれる記憶を…せめて丁重に弔いたいのです。」 そして、自分もいつか燃え尽きることができるのだと信じている。 「───それとも、燃え残ったことに対する贖罪のつもりなのでしょうか?」 ───────────────