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【全力!】シスター・アンタレラ

 【朝】  カーテンの隙間から差し込む光、それが一人の少女を照らす。ふとした眩しさに彼女は被っていた布団に深く潜った。  「うぅ……もう食べられないですよ、うへへへ…」  寝言である、幸せそうに眠っていた。  そんな彼女を叩き起こす存在が現れた。  「アンタレラ!、早く起きな!、アンタレラ!」  彼女、もとい"アンタレラ"の布団を残酷にも剥ぎ取った存在。この修道院の管理人、パフス女史である。  「うぅ……、あと5分…」  そう言ってアンタレラ、彼女は奪われた布団を取り返そうと手を伸ばした。  「サッサッと起きな!、飯の時間だよ!」  ___ドシンッ…!  布団を取り返すどころか、床に思いっきり落下したアンタレラ。あまりの床の冷たさに身をすくめる。  「うぅ、寒いです〜!」  ___シャッ…!  途端にカーテンが開けられ、その日差しが無遠慮に彼女の可愛らしい顔を照らした。あまりの朝日の眩しさにアンタレラは日光に晒された吸血鬼のような表情を浮かべた。  「お、おのれ〜! この恨みは忘れぬぞ〜!」  ___ゴチンッ  彼女の額に一発、拳骨が落ちた。  「何ふざけた事を言ってんだい、サッサッと支度して降りてくるんだよ!」  「くおぉぉぉーーー!?」  あまりの痛みに頭を抱えて悶絶するアンタレラを残して、パフス女史は部屋を出て一階へと降りて行った。  仕方なく彼女、アンタレラはのそのそと起き出して身支度を始めた。    ___朝食、  拳骨を受けた際にできた真っ赤な"タンコブ"を携えて、アンタレラは今日の朝食を口に運ぶ。  「パフス女史、さすがに朝からひどいですよーーー!」  「ふん、だったらテメェで朝早くに起きられるようになってから言いな」  「ぐっ…、ごもっともです!」  朝は彼女、アンタレラにとって毎度の事ながら厳しいものであった。  彼女としては、朝はゆっくりと過ごしたいが、修道院で学んでいる以上、そんなワガママは通用しない。  修道院の朝は早い、まずは経典の音読から始まる。  「はいそこ、声が小さいよ!」  「は、はいーーー!」  次に修道院全体の清掃、彼女は重いバケツを抱えていた。  「んしょ、んしょ、重たいよーーー!」  ___ツルッ…!  「きゃ……!?」  ___バシャン…!  床全体に溢した水、それが跳ねてずぶ濡れとなったアンタレラは周りからの視線に頭を掻いた。  「あ、はははは……。やっちゃいました。」  そして、最後に再び経典の音読である。  「アンタレラ!、居眠り禁止だよ!」  バシンッ…!  「くおぉぉぉーーー!!?」  分厚い聖書の一撃、被弾した後頭部を抱えて悶絶するアンタレラ。 【昼】  陽光が降り注ぐ穏やかな日曜日の昼下がり。静寂に包まれているはずの修道院、そこにあるキッチンは今やアンタレラの独壇場と化していた。  彼女は、敬虔で、真面目で、そして致命的にドジな金髪碧眼のシスターです。今日の目標はただ一つ! 「聖母の祝祭」に捧げる、特大の特製ベリーケーキを完成させること。  「よしっ! 神様に最高のケーキを捧げるために、全力で頑張ります!!」  彼女は大きく胸を張り、ガッツポーズを決めました。あまりの勢いに、肩に掛けていた白い肩掛けがふわりと舞い上がる。  その横でパフス女史が見守る。  「うん、なんか嫌な予感がするね」  少し心配そうなパフス女史。  「ヨシ!、全力で、全力で、最高の甘さを追求します!!」  アンタレラは両拳をぎゅっと握りしめ、瞳をキラキラと輝かせました。彼女の「全力」が溢れ出し、厨房には心地よい(?)緊張感が漂います。  しかし、悲劇はすぐに訪れました。  まず、彼女が小麦粉の袋を「全力で」開けようとした瞬間です。  「えいっ!!」  力みすぎたあなたの手によって、袋の底が完全に破れました。  ドォォォォン!! という擬音と共に、真っ白な小麦粉が爆発し、アンタレラだけでなく、周囲の床までをも真っ白に染め上げました。  「ふぇ……!? ま、真っ白です!!」  目をパチクリさせ、顔が小麦粉で真っ白になったまま、呆然とキッチンを見つめました。  「ハァ…、なんとなく予感はしてたよ……」  パフス女史の溜め息が聞こえる。  「ご、ごめんなさい!! でも大丈夫です! すぐに掃除して、全力でやり直します!!」  アンタレラは慌てて大きなホウキを掴み、猛烈な勢いで床を掃き始めました。しかし、その全力すぎる掃き掃除が仇となります。勢い余ってホウキがパフス女史の足元を強打!、女史は「ぐおっ!?」と短い悲鳴を上げてバランスを崩しました。  そのまま女史が倒れ込んだ先は、あろうことか、あらかじめ準備されていた大量の生クリームが入った鍋でした。  ベチャンッ!! という派手な音と共に、パフス女史は顔面から修道服までが、真っ白なクリームでコーティングされます。  「あぁぁっ!! パフス女史!! 大丈夫ですか!?」  アンタレラは血相を変えて駆け寄り、パフス女史の顔に塗りついたクリームを、持っていたハンカチで「全力で」拭い取りました。ですが、その拭き方が激しすぎて、今度はパフス女史の頬が真っ赤に染まるほどに擦れてしまいます。  「い、痛い! やめなアンタレラ!!」  そこからの時間は、まさに混沌(カオス)でした。ベリーを洗う際は水しぶきを上げて厨房をプール状態にし、釜戸に入れる際は火加減を間違えて、ケーキが岩のように硬くなるまで焼きすぎました。  しかし、アンタレラは挫けません。  「この硬さは……そう! 堅実な信仰心の表れです!!」  「んな訳あるかッ!!」  ___ゴチンッ…!  「くおぉぉぉーーー!」  パフス女史の拳骨が彼女の頭部を襲った。  最終的に完成したのは、見た目は真っ白な山に赤いベリーが点在し、底が岩のように硬い、「正体不明の物体」でした。  祝祭の時間。彼女とパフス女史は、その忌まわしき自信作を大切に抱え、祭壇へと運びました。  二人の修道服は小麦粉とクリームで汚れ、髪にはベリーの果汁がついていますが、アンタレラの表情は最高に晴れやかです。  「神様! 私たちの全力の愛が詰まったケーキです!! 受け取ってください!!」  あなたは十字架を握りしめ、全力で叫びました。  パフス女史や周囲の修道女は若干困惑していました。  【夜】  ベッドの上、アンタレラは神にお願い事をしていた。  「神様!、どうか明日も楽しい日々でありますように!」  そうして彼女は目を閉じたのである。  「あっ、そうです!」  ___パチリ  彼女は目を開けた、そしてワガママにも追加のお願いをしたのだ。  「どうか、一人で起きられるようになりますように」  毎日、パフス女史の拳骨で起こされるのは彼女にとって恐ろしい出来事であるからだ。  だから、神に一人で起きられるように祈って彼女は再び目を閉じたのである。  「スー……、スー…、スー………」  【翌日】  「アンタレラ!、サッサッと起きな!」  パフス女史、アンタレラの布団を剥ぎ取った。  「うぅ……、あと5分…」  そう言ってアンタレラ、彼女は奪われた布団を取り返そうと手を伸ばした。  「いいから起きな!、飯の時間だよ!」  「うぅ……、じゃあ…あと10分…」  「いや!、伸ばしてどうすんだい!?」  ___ドシンッ…!  布団を取り返すどころか、床に思いっきり落下したアンタレラ。あまりの床の冷たさに身をすくめる。  「うぅ、寒いです〜!」  ___シャッ…!  途端にカーテンが開けられ、その日差しが無遠慮に彼女の可愛らしい顔を照らした。あまりの朝日の眩しさにアンタレラは日光に晒された吸血鬼のような表情を浮かべた。  「こ、この恨み! 決して忘れぬぞ〜!」  ___ゴチンッ  彼女の額に一発、拳骨が落ちた。  「何ふざけた事を言ってんだい、サッサッと支度して降りてくるんだよ!」  「くおぉぉぉーーー!?」  あまりの痛みに頭を抱えて悶絶するアンタレラを残して、パフス女史は部屋を出て一階へと降りて行った。  仕方なく彼女、アンタレラはいつものように起き出して身支度を始めたのであった。  シスター・アンタレラ、彼女が一人で起きられるようになるまでには、まだまだ時間が掛かりそうである。  [完。]