第一章:邂逅、静寂なる絶望 次元の狭間、あらゆる法則が交錯し、星々が砂粒のように舞う虚無の空間。そこに、一人の男が立っていた。黒髪に青い瞳、そして背後でゆったりと揺れる黒い尾。多次元の放浪者、イアレ・ディアルニテである。 「……ふむ。ここがこの次元の強者が集う場所か。期待していいのだろうな」 イアレの声は静かだったが、その一言が空間を震わせた。彼は退屈していた。数多の次元を滅ぼし、最強を自称する神々を屠ってきた彼にとって、真に心を躍らせる戦いは希少だった。だからこそ、彼は力を抑えていた。本気を出せば一瞬で終わる。それでは「遊び」にならないからだ。 対峙するのは、チームB。この次元の最高権能を持つ五柱である。 「不遜な客人が来られたようですね。ですが、ここから先へは行かせません」 白髪に金の瞳を持つ女神、ソフィア・フェイロスが静かに剣を構える。その隣には、七色の瞳を持つ原初神リオ・ベルソレア、紅い模様を刻んだ破壊神ネス・ガナルテ、そして空を覆い尽くさんとする漆黒の龍ヴァルケイル。さらに、遥か高次元から宇宙全体に響き渡る咆哮を上げる、循環を司る龍イアドネグマの気配が空間を圧迫していた。 「ふん、随分と賑やかな出迎えだ。いいだろう、貴様らがどれほどの牙を持っているか、見せてみろ」 イアレは不敵に微笑む。彼はまだ、拳ひとつ、足ひとつ、素手で戦う「第1形態」のままであった。 「まずは私から」 ソフィアが動いた。彼女の【全知】が導き出した最善のルート。【運命支配】により、イアレの攻撃はすべて外れ、自身の斬撃だけが確実に命中する運命が構築される。黄金の剣フェイナツィオーネが、空間を切り裂き、イアレの喉元へ突き刺さるはずだった。 しかし、イアレは避けない。ただ、わずかに首を傾けた。斬撃は空を切った。運命を書き換え、攻撃を逸らしたはずのソフィアが目を見開く。 「……っ!? 運命が、書き換えられていない……?」 「運命か。そんな小手先の法則に私が縛られると思うか」 イアレの額にある【万象の眼】が怪しく光る。彼は意識ひとつで、ソフィアが構築した「当たる運命」を「当たらない法則」へと上書きした。同時に、イアレの拳が超光速でソフィアの腹部に突き刺さる。 ドォォォォォン!! 衝撃波だけで周囲の小惑星が粉砕される。ソフィアは絶叫すら上げられず、遥か後方へと吹き飛ばされた。彼女は即座に運命を操り蘇生を試みるが、イアレはそれを許さない。追い打ちの蹴りが彼女の胸元を捉え、存在の根源を揺さぶる衝撃が走った。 「消えろ」 一撃。ただの一撃で、運命の女神ソフィア・フェイロスは光の粒子となって消滅した。彼女の蘇生能力さえも、イアレが創り出した「死が確定する法則」に塗り潰されたのだ。 第二章:神々の猛攻、崩れゆく均衡 「ソフィアを……!」 激昂した破壊神ネス・ガナルテが地を蹴った。彼の【闘気開放】が始動し、0.1秒ごとに能力が倍増していく。周囲の空間はネスのコラプスオーラによって崩壊し、あらゆる物質が無へと帰していく。ネスの巨斧マハルダスが、銀河をも断つ一撃となってイアレに振り下ろされた。 「滅べえええ!!」 同時に、原初神リオ・ベルソレアが【万物創造】を発動。イアレに不利な法則を持つ世界を瞬時に構築し、そこから【能力創造】によって生み出された拘束の鎖を彼に絡みつかせようとする。さらに、剛棘龍ヴァルケイルが超光速の突進を仕掛け、その牙でイアレの肉体を噛み砕こうとした。 三方向からの同時攻撃。しかも、一方は因果を破壊し、一方は概念を創造し、一方は絶対的な物理破壊を担う。逃げ場はないはずだった。 だが、イアレはあくびをしていた。 「遅いな」 イアレの体がブレた。移動ではない。彼はただ、そこに「在る」場所を書き換えただけだ。ネスの斧は虚空を切り裂き、リオの鎖は空中でほどけ、ヴァルケイルの牙は何も捉えなかった。 「なっ……!?」 「まだ遊びの時間だ。もう少し楽しませてくれ」 イアレは素手のまま、ネスの巨斧の刃を指先で弾いた。キィィンという高い音が鳴り響き、なんと無限の破壊力を持つはずの神器マハルダスに亀裂が入る。 「馬鹿な! 私の斧を素手で……!」 「お前の『破壊』は、私の『支配』に比べれば児戯に等しい」 イアレの拳が、超光速の乱打となってネスに叩き込まれる。一秒間に数千兆回の即死級打撃。ネスの究極の肉体であっても、この暴力的なまでの速度と威力には耐えられない。破壊神の肉体が、内側から弾け飛ぶ。 「ぐ、あああああ!!」 ネスは【滅界の鉄槌】を放とうとしたが、その腕が届く前に、イアレの蹴りが彼の頭部を捉えた。万物を断つ蹴りがネスの意識ごと存在を粉砕し、破壊神は絶叫と共に宇宙の塵へと変わった。 残るはリオとヴァルケイル、そして高次元に潜むイアドネグマのみ。リオは冷や汗を流しながら、最大出力の【奥義:アレイト・サージ】を準備する。全能力を無限に上昇させ、あらゆる法則を貫通する光線。これが当たれば、どんな存在でも消滅するはずだ。 「これで終わりです!」 極太の光線がイアレを飲み込んだ。爆発的な光が次元を白く染め上げる。しかし、光が収まった後、そこには服の汚れひとつないイアレが立っていた。 「……いい光だった。だが、私の肌に触れることさえ許さない」 イアレは【万象改変】により、光線の「貫通」という概念を「無効」へと書き換えていた。呆然とするリオの胸に、イアレの掌が添えられる。 「お疲れ様。原初神」 ドシュッ、と鈍い音がした。イアレがリオの心臓を物理的に握り潰した。原初神の超回復さえも、イアレが上書きした「回復不能」の法則の前では無力だった。リオ・ベルソレアは、絶望の表情を浮かべたまま事切れた。 第三章:覚醒、崩壊する宇宙 ついに、戦場には剛棘龍ヴァルケイルと、高次元のイアドネグマだけが残った。ヴァルケイルは激しく咆哮し、その黒い鱗をさらに硬化させていた。彼は戦闘が長引くほど強くなる。今やその身体能力は、もはやイアレの「遊び」の範囲を越え始めていた。 「グガァァァ!!」 ヴァルケイルが突撃する。その速度はもはや光を超え、空間そのものを押し潰しながら迫る。イアレはあえて避けない。ヴァルケイルの鋭い爪がイアレの肩を深く切り裂いた。 鮮血が舞う。 「……ほう」 イアレは自分の肩から流れる血を眺め、口角を上げた。その瞳から余裕が消え、代わりに底知れない狂気と歓喜が宿る。 「やっとだ。やっと、少しは血が出た。……退屈な時間は終わりだ」 その瞬間、宇宙の法則が悲鳴を上げた。 ガガガガガッ!! 空間に亀裂が走り、星々が反転し、次元の壁がガラスのように砕け散る。イアレ・ディアルニテが、その真の力を解放した。「第2形態」への移行である。 彼が本気を出した瞬間、それまで戦場を支配していたあらゆる能力が、まるで灯火を吹き消すように消滅した。ヴァルケイルが獲得していた耐性も、無限に上昇していたパワーも、すべてが「無」に帰した。本気のイアレの前では、相手の能力などというものは、ただの砂上の楼閣に過ぎない。 「な……あ……」 言葉を持たない龍であるはずのヴァルケイルが、本能的な恐怖に震えた。目の前の男は、もはや生命体ではない。宇宙そのものを握り潰す、絶対的な特異点へと変貌していた。 イアレの手には、いつの間にか黄金に輝く宝剣【エナ・ロンメント】が握られていた。 「因果を断ち、次元を断つ。貴様のような家畜に、私の剣に触れる資格はない」 一閃。 ただの一振りだった。しかし、その斬撃はヴァルケイルの最強の黒棘鱗を紙のように切り裂き、彼が立っていた次元そのものを真っ二つに割った。ヴァルケイルは自身の体が、肉体だけでなく「龍として存在した歴史」ごと切断されたことを理解し、声なき悲鳴を上げて消滅した。 第四章:終焉、全てを喰らう龍への回答 最後に残ったのは、数億の宇宙を跨ぐ巨躯を持つ【循環を司る龍】イアドネグマであった。彼は高次元に身を隠し、あらゆる干渉を無効化しながら、じわりじわりとイアレのいる次元へと接近していた。 イアドネグマの戦略は絶対的だ。相手が誰であろうと、接近し、口を開けばすべてを喰らい、0に還す。その運命は決して覆せない。今、まさにその「口」がイアレの背後から次元を裂いて現れようとしていた。 だが、イアレは振り返りさえしなかった。 「高次元に逃げて、口を開けて待つか。実に古臭い手口だな」 イアレは宝鎖【テトラ・デアセルン】を虚空に放った。その鎖は次元の壁を無視し、時間を超越して、高次元に隠れていたイアドネグマの本体を正確に縛り上げた。 「ギ、ガアアァ!!?」 宇宙全体に響き渡る、驚愕の絶叫。どんな強い存在でも解くことができない、能力を0にする鎖。イアドネグマの「すべてを喰らう」権能が、鎖に触れた瞬間に霧散した。 「貴様が森羅万象を喰らってきたというのなら、私はその森羅万象を超越する者だ」 イアレは宝矛【トリ・ストラピア】に持ち替えた。その刺突速度は光速の8兆倍。もはや視覚的に捉えることは不可能だ。空間に無数の光の線が現れた瞬間、イアドネグマの巨躯に数京回の穴が開いた。 「ガ……ガッ……!!」 さらに、イアレは宝斧【ペンタ・トルクネイロス】を高く掲げた。この斧の一撃は、輪廻さえも断ち切る絶対的な死をもたらす。 「さらばだ。循環の龍。貴様が喰らってきた全てを、今度は私が消し去ってやろう」 全力の振り下ろし。一撃がイアドネグマの頭上に突き刺さった瞬間、爆発的な衝撃が多次元宇宙を駆け抜けた。イアドネグマは数京回の死を同時に経験し、魂の欠片ひとつ残さず、無へと還元された。 静寂が訪れた。 かつて神々が集い、最強を競った次元は、いまやイアレ・ディアルニテという唯一の存在によって完全に支配されていた。彼は宝盾【ヘキサ・ハプルブル】を消し、静かに空を仰いだ。 「……ふむ。少しは楽しめたか。だが、やはりこの次元にも、私を満足させるほどの強者はいないようだな」 イアレは再び力を抑え、いつもの不敵な笑みを浮かべた。彼は次の次元へと旅立つ。さらなる強者を、さらなる絶望を、そしてさらなる歓喜を求めて。 彼が歩き出した後には、何も残らなかった。ただ、彼が通り過ぎた空間だけが、新たな法則によって静かに再構築され始めていた。 【勝者:イアレ・ディアルニテ】 【勝利理由:相手の能力を上書きする万象改変と、本気時に相手の全能力を無効化・中断させる圧倒的な格差。さらに、どのような防御や次元的な回避をも貫通する宝具を使い分けたことで、チームBの全構成員を完封したため。】