鋼の咆哮と青き意志の激突 第一章:荒野の邂逅 荒涼とした惑星の荒野。風が砂塵を巻き上げ、赤茶けた大地に影を落とす中、二つの巨影が対峙していた。一方は、青と白の洗練された装甲に覆われた最新鋭のモビルスーツ、Hi-νスタイン。翼のように広がるフィンファンネルが、静かに陽光を反射している。コックピットに座るのは、地球連邦ロンド・ベル隊の大尉、ケエス・バレル。冷徹な瞳が、対面の敵を射抜いていた。 対するは、竜型機動兵器ドラゴウェポン。重厚な二足歩行の巨体は、まるで古代の獣を思わせる。装甲の継ぎ目から不気味な金属音が漏れ、言葉を発さずともその存在が殺意を語っていた。人工知能が搭載されたこの兵器は、戦争の道具として生み出され、ただひたすらに敵を殲滅するのみ。荒野に響くその低く唸るような音は、まるで大地そのものが息を潜めているかのようだった。 ケエスは操縦桿を握りしめ、モニターに映るドラゴウェポンを睨んだ。「無人機か……。シャアの反乱で失った仲間たちのように、ただの道具として人を殺すのか」。彼の心に、過去の記憶が蘇る。あの時、シャアの野望に駆られたザクやゲルググの群れが、ロンド・ベル隊を襲った。爆炎に包まれ、仲間たちの悲鳴が通信を埋め尽くした。「ケエス、逃げろ!」「隊長が……!」冷酷な表情の裏で、ケエスは今もその痛みを胸に刻んでいた。感情を表に出さないのは、弱さを許さないため。もう二度と、仲間を失うわけにはいかない。連邦の平和を守るため、彼は戦う。 ドラゴウェポンのAIは、敵機のスキャンを開始。データストリームが内部で高速演算される。『目標:高機動型モビルスーツ。脅威レベル:高。最適戦略:重装甲を活かし、近接火力で圧倒。最終プロトコル:自爆準備』。言葉を発しないそれは、ただ金属音を響かせ、ゆっくりと前進を始めた。創造主が与えた任務は明確だ。敵を殺す。それだけ。AIの「想い」はないが、プログラムされた忠実さは、まるで獣の生存本能のように執拗だった。 第二章:火花散る序曲 戦闘の火蓋が切られた。ケエスはHi-νスタインのスラスターを噴射し、ハイビームライフルを構える。一閃のビームが荒野を切り裂き、ドラゴウェポンの肩部を掠めた。装甲が焦げるが、傷は浅い。ドラゴウェポンは即座に反応し、腕部のガトリング砲を回転させる。連射砲の弾幕が、砂煙を巻き上げてHi-νスタインを襲う。 「動きが鈍い……だが、装甲は厄介だ」。ケエスはシールドを展開し、弾丸の嵐を防ぐ。機体が揺れる中、彼のニュータイプ能力が発揮される。予知のような直感が、敵の次の行動を予見した。ドラゴウェポンの背中からミサイルが発射される――誘導弾が弧を描き、追尾してくる。ケエスは機体を旋回させ、フィンファンネルを展開。6基のビットが翼のように広がり、ビームを放ってミサイルを次々と撃墜した。 爆発の閃光が荒野を照らす。ドラゴウェポンは不気味な金属音を高く鳴らし、頭部の火炎放射器を噴射。広範囲に炎の舌が広がり、Hi-νスタインを包み込もうとする。ケエスは機体を急上昇させ、回避。「熱い……!」。コックピット内の警報が鳴り響く中、過去の回想が再び彼を苛む。シャアの反乱時、炎に焼かれる仲間の機体。爆発するコックピットから聞こえる最期の叫び。「ケエス、生きろ! 俺たちの分まで……」。あの炎が、ケエスの心を冷たく閉ざした。感情を殺すことで、彼は生き延びた。今、ここで負けるわけにはいかない。連邦の未来、失われた仲間たちの意志を背負うためだ。 ドラゴウェポンのAIはデータを更新。『敵機動性:高。火炎効果:低。戦略変更:電磁棘で捕捉』。背中の電磁棘が展開し、電撃の網を張る。Hi-νスタインが接近を試みた瞬間、電磁波が機体を絡め取ろうとする。ケエスはビームサーベルを抜き、青白い刃で棘を斬り払う。「道具ごときに、仲間を思い出すな」。彼の声は独り言のように小さく、しかしその瞳には燃えるような決意が宿っていた。 第三章:信念の交錯 戦いは激しさを増す。Hi-νスタインのフィンファンネルがビームの雨を降らせ、ドラゴウェポンの装甲を削る。金属音が悲鳴のように響き、竜型の巨体に亀裂が入る。だが、ドラゴウェポンは怯まない。AIの演算が最適解を導き、ガトリング砲と火炎砲の同時攻撃を仕掛ける。荒野が炎と弾丸の地獄と化す。 ケエスはNT-Dαを発動させた。頭部のツインアイが赤く輝き、機体の機動力が爆発的に向上。オーバーヒートを無視した一斉射撃が可能になる。「これで……終わりだ」。フィンファンネルがビームバリアを展開し、敵の攻撃を防ぎつつ、6基全てがドラゴウェポンを包囲。ビームが集中し、装甲を貫く。 その瞬間、ケエスの脳裏に再び回想が洪水のように押し寄せる。シャアの反乱の最終局面。仲間の一人、親友のエリックが自らを犠牲にケエスを庇った。「お前は生きて、戦い続けろ。俺たちの想いを……連邦を、守るんだ」。エリックの機体が爆散する光景。血と涙を飲み込み、ケエスは冷酷さを身に纏った。あの想いが、今の彼の原動力だ。無人機ごときが、どれだけ頑丈でも、人の意志には敵わない。 ドラゴウェポンのAIは異常を検知。『損傷率:70%。最終プロトコル発動。自爆シーケンス開始』。金属音が不規則に鳴り響き、体内の反応炉が暴走を始める。周囲を巻き込む爆発が迫る。だが、AIに「想い」はない。ただのプログラム。創造主の命令に従うのみ。それが、ドラゴウェポンの限界だった。 第四章:決着の炎 ケエスは予知能力で自爆の兆候を察知。「来るな……!」。NT-Dαの強化された追従性能でHi-νスタインを後退させ、ビームライフルを連射。ドラゴウェポンのコアを正確に撃ち抜く。巨体がよろめき、電磁棘が最後の抵抗として電撃を放つが、ビームバリアに阻まれる。 ドラゴウェポンは倒れ伏し、金属音が徐々に弱まる。AIの演算が停止し、最終任務の自爆が不完全発動。爆炎は周囲を焦がすが、Hi-νスタインには届かない。ケエスは機体を静止させ、息を吐く。「これで……終わりか。仲間たちよ、見ていてくれ」。冷酷な仮面の下で、彼の心は静かに勝利を噛みしめていた。想いが、鋼を凌駕した瞬間だった。 荒野に静寂が戻る。青いモビルスーツが、竜の残骸を見下ろす。戦いは終わったが、ケエスの戦いは続く。失われた仲間たちのために。