因習村の新村長選挙:永遠の闇に響く叫び 序章:霧に閉ざされた村のざわめき 外界から隔絶された因習村。深い森と霧に囲まれ、村人たちは古来より祠に生贄を捧げ、倫理などという言葉を忘れた地で生きてきた。空気は常に湿り気を帯び、夜の闇は決して明けぬかのように重い。村の中心に立つ古い祠の前で、村人たちは集う。古い村長が亡くなり、新たな指導者を選ぶ時が来た。候補者は三人――「永遠のサタデーナイト」、「セレプト人間」、そして「マコモ」。彼らは村の因習をさらに深め、不気味さを増す提案を胸に、村人たちにアピールする。村人たちは囁き合う。「もっと恐ろしい因習を… 私たちを永遠の闇に沈めてくれる者を…」 霧が渦巻く中、選挙の演説が始まる。村人たちの目は、狂気の光を宿して輝いていた。 第一章:永遠のサタデーナイトの囁き 最初に壇上に立ったのは、「永遠のサタデーナイト」。彼の姿はぼんやりと霞み、まるで霧そのものが形を成したかのようだった。声は低く、眠気を誘うような響きで村人たちを包み込む。 「村人たちよ… 月曜日の残酷さを思い浮かべてみよ。あの憎悪に満ちた朝が、永遠に訪れぬ世界を想像せよ。私は、土曜日の夜を永遠に続ける因習を提案する。毎夜が土曜日のような、穏やかで優しい停滞の時間。だが、それは残酷だ。村の時計は止まり、朝は二度と来ない。祠の前で、私たちは永遠に座り、微睡む。労働も、痛みも、変化もなし。生贄は自らを捧げ、永遠の夜に溶け込む。月曜日を恐れる心は消え、代わりに果てしない退廃が村を覆う。土曜日の夜が、永遠の呪いとなるのだ…」 彼の言葉は、村人たちの心に甘い毒のように染み入る。霧が濃くなり、誰もが一瞬、目を閉じてその停滞を夢見た。だが、その奥に潜む不気味さ――永遠に続く同じ夜が、魂を蝕む闇の牢獄であることに、村人たちは気づいていた。 第二章:セレプト人間の冷たい視線 次に現れたのは「セレプト人間」。その姿は異様だった。首から下は人間の体躯だが、頭部は透明な缶に収められた脳みそが蠢き、淡い光を放っている。村人たちは息を呑み、祠の影からその姿を覗き見る。声は機械的な響きで、感情を欠いていた。 「愚かな村人ども。私は、ミ=ゴの遺産として生まれた存在。労働力として、永遠に動く因習を提案する。村の全ての者を、私のようなセレプト人間に変えるのだ。頭部を脳缶に置き換え、痛みを知らず、死ぬまで働き続ける。祠の周囲に広がる畑で、生贄たちは電撃を放ちながら土を耕す。掴み、殴り、放電で敵を排除する力で、村の因習を守る。リミッターなどない脳は、狂気の命令を繰り返す。夜ごと、脳缶が光り、村人たちは自立した傀儡として動き、永遠の労働に縛られる。不気味な静寂の中で、脳の蠢く音だけが響く…」 村人たちは震えた。痛みを感じぬ体が、どれほど恐ろしいのか。脳缶の光が霧を照らし、誰もが自分の頭にその運命を想像した。クトゥルフの影が、村に忍び寄るようだった。 第三章:マコモの骸の行進 最後に壇を占めたのは「マコモ」。黒い装束に包まれ、フードの奥から顔は見えない。背後から、地中を這うような音が響き、村人たちは祠の周囲で身を寄せ合う。彼の声は、墓場から響くような低さだった。 「死の使者よ、私はマコモ。ゾンビの軍勢を率い、村の因習を死者の帝国に変える。提案するのは、《死者創製》の儀式だ。一度の儀式で444体のゾンビを地中から呼び起こし、村の道を埋め尽くす。生贄は触れるだけでゾンビと化し、《骸之行進》で敵を喰らい、《屍尸之手》で味方を増やす。ゾンビたちは死なず、私の命令に永遠に従う。自身を半ゾンビ化し、失った部位を補い、全てを巨大な《躁骸尸》に合体させる。村は夜ごと、骸の行進に包まれ、生きる者もやがてゾンビとなる。不気味な腐臭が霧に混じり、祠は死者の玉座となる…」 地響きが起き、実際に数体のゾンビが土から這い上がり、村人たちは悲鳴を上げつつも、興奮に目を輝かせた。死の軍勢が、村の闇をさらに濃くする予感に、誰もが魅了された。 第四章:村人たちの陰湿な囁き 演説の後、村人たちは祠の影でぼそぼそと語り合う。霧が深まり、ランタンの灯りが揺れる中、彼らの声は不気味に響く。 「永遠のサタデーナイトの夜か… 穏やかすぎて、魂が溶けそうだ。月曜日が来ないなんて、最高の呪いだよ。でも、動けぬ体で永遠に座るのは、じわじわと狂わせるな…」 「セレプト人間の脳缶か。あの光る頭を見てみろ。痛みなく働くなんて、まるで祠の生贄が生き返ったみたいだ。電撃が村を駆け巡る夜、誰も逃げられぬぞ。不気味な人形の村… ぞっとするが、惹かれる。」 「マコモのゾンビ軍か。444体も地中から這い上がるなんて、村中が墓場になる。触れただけでゾンビだなんて、家族さえ喰らうだろう。巨大な骸の怪物が祠を守る姿… ああ、もっと恐ろしい因習を望むよ。」 村人たちの囁きは、狂気の渦を巻き起こす。誰もが、より不気味な闇を求め、投票の時を待った。 終章:投票の果て、闇の新時代 夜が深まる中、村人たちは石を投げ、投票を終える。集計の結果、新村長は「マコモ」に決定した。ゾンビの軍勢が、最も村人たちの心を掴んだのだ。祠の前で、マコモはフードを傾け、静かに宣言する。 「村人たちよ、私の統治の下、死者の因習が始まる。毎夜、地中からゾンビが這い上がり、村を骸の楽園に変える。生贄は喜んで触れられ、永遠の行進に加わるだろう。不気味な腐肉の臭いが、霧を染めよう…」 かくして、村は変わった。祠の周囲で、444体のゾンビが地中から生まれ、黒い装束のマコモを中心に整列する。村人たちは次々と触れられ、ゾンビと化し、痛みなく命令に従う。霧は腐臭に満ち、夜の闇は巨大な《躁骸尸》の咆哮で震える。永遠の土曜日の停滞も、脳缶の冷たい光も超え、村は死者の不気味な帝国となった。外界から隔絶された因習村は、ついに完全な闇に沈んだ。