黄金の輝きが、荒廃した大地を塗り潰していた。 空に浮かぶのは、黄金の鎧に身を包んだ一人の男。その赤い瞳は冷徹に、地上の「塵」を眺めている。人類最古の英雄王、ギルガメッシュである。彼は不快そうに鼻を鳴らし、腕を組んだまま、眼下に広がる奇妙な三人組を見下ろした。 「雑種ごときが、王に刃向かうか」 傲岸不遜な声が戦場に響き渡る。彼にとって、目の前の者たちは戦う価値すら無い。ただの道端の石ころか、あるいは奇妙な形の泥塊に過ぎない。しかし、彼がここに降り立ったのは、世界の理を乱す不純物を排除するという、王としての「掃除」のためであった。 対するチームB。その構成は、正気とは思えないほどに支離滅裂であった。 一人、ダソン。その手には超強力な吸引掃除機が握られている。機械的な駆動音が静寂を切り裂き、「キュイィィィィィンンンンンン!!!!」という耳を劈く爆音が鳴り響いた。その吸引力は絶大であり、5キロ先からでも標的をロックオンし、壁すら透過して吸い寄せるという理不尽な能力を持つ。 二人、1%。その正体は不明だが、彼は「100%の中の1%を100%にする」という、概念的な増幅能力を有していた。一見して地味な能力だが、それが臨界点に達した時、どのような爆発力を生むかは未知数である。 そして三人、吉川尚輝(変異体)。彼は戦場に不釣り合いな「食」の概念を纏っていた。醤油に餃子、ホタテを味噌に、そして輝くメシを二タレで。彼の周囲には食欲をそそる(あるいは困惑させる)香りが漂い、彼が受けた不利益をそのまま相手に返す「デバフ飯」という呪いのような反撃手段を備えていた。 ギルガメッシュは、その滑稽な光景に心底呆れたように溜息をついた。 「笑わせるな。掃除機に、端数、そして飯か。貴様らの存在自体がこの世の汚点よ。速やかに消え失せろ」 王が指先を軽く動かした瞬間、彼の背後に黄金の波紋が幾重にも展開された。【王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)】の開放である。そこから、伝説の神剣、魔剣、聖槍が、雨のごとく高速で射出された。 「キュイィィィィィンンンンンン!!!!」 ダソンが即座に反応した。彼は掃除機のノズルをギルガメッシュへと向け、ロックオンを開始する。空間を透過し、あらゆる障害物を無視して吸い寄せる絶対的な吸引力。射出された数多の宝具たちが、本来の軌道を曲げられ、ダソンの掃除機へと吸い込まれていく。 ガガガッ!という激しい音と共に、伝説の武器たちが次々と掃除機の中へと消えていった。2トンの容量を持つその胃袋は、神話の武器さえも「ゴミ」として処理し始めたのである。 「ほう……。我が財宝を吸い込むか。面白い、雑種。だが、その程度の玩具に何ができる」 ギルガメッシュは不敵に笑う。彼は【全知なるや全能の星】により、ダソンの能力の限界と、1%の増幅、そして吉川のデバフ反射の仕組みをすべて見通していた。彼にとって、相手の能力はすでに「既知の事象」であり、攻略法は無限に存在する。 次に動いたのは1%だった。彼は自身の能力を起動させ、ダソンの吸引力の「1%」を抽出。それを「100%」へと増幅させた。結果、掃除機の吸引力は理論上の限界を突破し、周囲の空間さえも歪ませるブラックホールのような吸引領域を作り出した。 「ぬっ」 ギルガメッシュの黄金の鎧が、わずかに前方に引っ張られる。しかし、彼は慌てない。思考速度と同速で飛行する【天翔ける王の御座】が瞬時に彼を後方へと退避させた。 「概念的な増幅か。だが、分をわきまえよ。王の前に立つ者が、数合わせの算術で勝てるとでも思ったか」 ギルガメッシュは空中にさらに大量の波紋を展開し、今度は「属性」を絞った攻撃を仕掛けた。ダソンの機械的な構造を破壊する対魔術・対機械の宝具を一点に集中して射出する。しかし、その攻撃が届く直前、吉川尚輝が前へ出た。 「デバフ飯(変異)」 吉川が不気味な笑みを浮かべ、輝くメシを口に運ぶ。ギルガメッシュが放った「破壊」という名のデバフ(不利益)が、吉川の能力によって無効化され、そのままギルガメッシュへと跳ね返された。 ドォォォン!! 突如、黄金の御座に激しい衝撃が走る。自身の攻撃をそのまま受けた形となったギルガメッシュだったが、彼は眉ひとつ動かさなかった。 「……ふん。鏡合わせの術か。だが、忘れるな。我はあらゆる事象への完璧な対抗手段を持つ。貴様の『飯』が通用するのは、相手が凡夫である時のみよ」 ギルガメッシュは冷酷に言い放つと、指を弾いた。空から降り注いだのは、数多の鎖であった。【天の鎖(エンキドゥ)】。神性を縛る絶対的な拘束具が、三人を同時に捉えた。1%の増幅も、吉川の反射も、この「絶対的な拘束」という事象の前では無意味であった。鎖は彼らの肉体だけでなく、能力の源泉さえも締め上げる。 「がはっ……!?」 ダソンが掃除機を落とし、1%が絶望に顔を歪め、吉川がメシをぶちまける。拘束された彼らに逃げ場はない。ギルガメッシュはゆっくりと、地上へ降り立った。 「さて、掃除の時間だ。貴様らの矮小な夢ごと、焼き尽くしてくれよう」 王が右手に掲げたのは、一振りの剣。それは世界各地に伝わる聖剣の「原点」にして、すべてを焼き払う光の渦を放つ【原罪】であった。 「消えろ。塵となって、土に還れ」 【原罪】から放たれた白熱の光が、三人を包み込んだ。ダソンの掃除機は一瞬で蒸発し、1%の概念は白光に塗り潰され、吉川の美食なる呪いは灰へと変わった。絶叫すら許されないほどの圧倒的な火力。そこにあったのは、ただの純白の虚無であった。 しかし、戦いはまだ終わらない。チームBの最後の一撃。1%が消滅の間際に、自身の全存在を賭けて「絶望の1%」を「100%」に増幅させ、それを吉川のデバフ飯に上乗せしてギルガメッシュへぶつけた。それは、王の精神を汚染し、絶望させるという最悪の精神攻撃であった。 ギルガメッシュの心に、一瞬だけ、孤独という名の闇が差す。だが、彼はそれを嘲笑った。 「絶望? 我にそのような感情を教えようとするか。笑わせるな。我は孤独さえも統べる王よ!」 王の矜持が闇を弾き飛ばす。もはや、この戦いに意味はない。ギルガメッシュは、この退屈な遊戯に終止符を打つことを決めた。 彼はゆっくりと、究極の宝具を顕現させた。空間そのものが悲鳴を上げ、次元が軋む音が戦場に響き渡る。赤い剣身が、世界を切り裂く準備を整えていた。 「原子は混ざり、固まり、万象織りなす星を生む。死して拝せよ! 『天地乖離す開闢の星』!!」 乖離剣エアが放たれた。それは攻撃ではない。「空間の切断」である。防御は意味をなさず、回避は不可能。世界そのものが切り離され、チームBがいた領域は、そのまま次元の彼方へと消し飛ばされた。 轟音さえも置き去りにする絶対的な一撃。光が収まった後には、ただ平坦な、何もない大地だけが残っていた。掃除機の音も、増幅の計算も、飯の香りも、すべては無に帰した。 ギルガメッシュは、黄金の御座に再び腰掛け、退屈そうに爪を眺めた。 「たわけ。我は最古の英雄ぞ。はなから貴様に勝てる道理なぞない」 黄金の王は、満足げに鼻を鳴らすと、再び黄金の波紋の中へと消えていった。 【勝者:ギルガメッシュ】