黄金の光が、空を塗り潰していた。 そこは名もなき荒野。しかし今、この場所は世界で最も尊い者の庭へと変貌している。黄金の鎧に身を包み、傲岸不遜な笑みを浮かべて宙に浮かぶ男――人類最古の英雄王、ギルガメッシュ。彼は退屈そうに眼下の光景を眺めていた。 「雑種ごときが、王に刃向かうか。……ふん、揃いも揃って正気の沙汰とは思えぬ面々だな」 彼の前には、およそ戦いとは程遠い、あるいは理解し難い三つの異形が並んでいた。 一人、あるいは一塊は、ただの道路の一部のような風貌をした『コンクリート』。彼は沈黙し、ただそこに在ることで己の存在を誇示している。 二人目は、目に見えず、空気の中に溶け込んでいる不可視の脅威『スフェルストラ菌菌』。 そして三人目、得体の知れない美食のオーラを纏った変異体『吉川尚輝』。 ギルガメッシュにとって、これは戦いですらなかった。ただの「掃除」である。 「我が退屈を紛らわせるための玩具としてすら、質が悪すぎる。早々に片付けてくれるわ」 王が指先をわずかに動かす。それだけで、背後の空間に無数の黄金の波紋が展開された。【王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)】。そこから射出されるのは、神代の武器、伝説の原典。数多の宝剣と魔槍が、音速を超えて地上の挑戦者たちへと降り注いだ。 ドガガガガガッ!! 凄まじい爆撃。コンクリートの体は粉々に砕かれ、地表はクレーターと化した。しかし、コンクリートは消えない。彼は踏まれることで鍛えられた異次元の耐久力を持ち、さらに攻撃を受けるたびにその攻撃力を増幅させていた。さらに、地割れが生じたことで彼は『覚醒』する。砕けたコンクリートの破片が意志を持つかのようにうごめき、巨大な壁となって王へと突き上がった。 「ほう? 泥土のような不屈さよ。だが、それがどうした」 ギルガメッシュは冷笑を浮かべたまま、搭乗型の宝具【天翔ける王の御座】で軽やかに回避する。同時に、彼は不可視の脅威に気づいていた。【全知なるや全能の星】。過去、現在、未来のすべてを見通すその瞳にとって、目に見えない菌などという稚拙な隠れ身は意味をなさない。 空中に充満するスフェルストラ菌菌。それはあらゆるバリアを無視し、相手の肺へと潜り込み、行動を支配し、死に至らしめる絶対的な感染症。しかし、ギルガメッシュはそれを嘲笑った。 「目に見えぬ毒を撒き散らし、王を操ろうとは。その浅ましさ、反吐が出るな。我が財宝の中に、効かぬ薬などあるはずまい」 黄金の波紋から射出されたのは、黄金に輝く聖杯の一種、あるいはあらゆる毒と病を浄化する伝説の霊薬。それが霧となって散布されると、空中の菌菌は浄化され、その存在理由さえも消し飛ばされた。菌菌がどれほど量産しようとも、王の財宝には「対抗手段」が無限に存在する。個の物量など、王の所有物の前では塵に等しい。 一方、変異体・吉川尚輝が不気味な笑みを浮かべて前へ出た。彼は「デバフ飯」を構え、王が放つ威圧感や精神的な負荷を、そのままデバフとして反射しようと試みる。 「輝くメシを二タレつけろ……! お前の傲慢さを、そのまま食らわせてやるぜ!」 吉川が放った精神的な揺さぶり、そして反射的なデバフがギルガメッシュを襲う。しかし、ギルガメッシュは眉一つ動かさない。彼はもともと、世界で最も傲慢な男である。彼にとって「傲慢」や「不遜」という概念はデバフではなく、むしろ本質的な属性である。反射されて返ってきたデバフは、彼にとって心地よい心地よい自愛の風に過ぎなかった。 「笑わせるな。我こそが法であり、我こそが真理。貴様の小細工など、王の御前では心地よい微風に過ぎぬわ」 ギルガメッシュは、もはや本気で相手をする価値もないと判断した。しかし、コンクリートが「気合のタスキ」によって一度だけ致命傷を耐え、執拗に食らいついてくる。そのしぶとさが、王の逆鱗に触れた。 「いい加減にしろ。雑種。泥に塗れた石塊が、王の視界を遮るな」 王は、右手に一振りの剣を顕現させた。それは、【原罪】。世界各地に伝わる聖剣の原典。ただそこに在るだけで、周囲の空気が歪み、次元が悲鳴を上げる。 「消えろ」 剣が振るわれる。接触した瞬間、すべてを焼き払う光の渦が奔った。コンクリートの異次元の耐久力も、タスキによる一撃耐性も、この『原点』の光の前では意味をなさない。存在そのものを消滅させる光の奔流が、コンクリートを、そして傍らで呆然としていた吉川尚輝を、跡形もなく消し飛ばした。 静寂が訪れる。そこにはもう、王に挑んだ愚か者たちの欠片すら残っていない。 ギルガメッシュは、黄金の御座に深く腰掛け、退屈そうにため息をついた。 「たわけ。我は最古の英雄ぞ。はなから貴様に勝てる道理なぞない」 彼は視線を空へと向け、満足げに笑みを浮かべた。彼にとってこの戦いは、散歩の途中で小さな石ころをどかした程度の出来事に過ぎなかったのだから。 勝者:ギルガメッシュ