夕焼けの空に、朱色から深い藍色へのグラデーションが広がる頃、樹海の奥深くで運命の戦いが始まろうとしていた。木々の間から漏れる光が、静かな戦闘狂の小柄な姿を浮かび上がらせ、彼女が持つ鉈の刃が夕日を反射して冷ややかな輝きを放つ。 一方、空を見上げる巨大な黒い影。夜烏がそこに立っていた。彼の無気力な表情は、周囲の空気と同じく薄暗い雰囲気を醸し出している。その背中から生える黒い翼が、静かに翻りながら不気味に広がる。彼の目は戦いを待ちわびるようにキラリと光り、独特の毒舌で発せられる言葉が彼の無気力を隠そうとしているようにも見える。 両者は一触即発の状態だった。静かな戦闘狂は、優雅な所作で右手に鉈を持ち、挑発的な微笑みを浮かべる。彼女にとって、強い者との戦いこそが最高の快楽だった。夜烏は、彼女の挑発を無視し、静かな視線の先に目を向ける。彼の一歩が大地を揺らし、威圧的な存在感を放った。 「夜鳴!」 夜烏が叫ぶと同時に、彼の口から響く烏の鳴き声が周囲を包み込む。遠くの生物たちが一斉に恐れおののき、感覚神経が破壊されていく。静かな戦闘狂は、その圧力に一瞬怯みかけたものの、すぐに身を翻して彼女の幻燈魔法を発動した。 彼女の周囲に現れた虚の姿、数体の幻燈が立ち上がり、まるで彼女を取り囲むように動き回る。その瞬間、彼女は自らの体を幻燈の一部へと融け込ませた。夜烏は彼女の動きを察知するが、その動きはまるで風のように速い。 「来るぞ!」 夜烏はその予感が的中することを知っていた。彼女が周囲を回り込む中、静かな戦闘狂は刈り取るように鉈を振り下ろした。その一撃は、夜烏の急激な回避に阻まれる。しかし、彼の隙を見逃さず、一瞬の隙間を縫ってその鉈は深く彼の羽を切り裂く。 「チッ…甘いな。」 痛みと共に、夜烏は舌打ちした。しかし、彼の怒りはどこか虚無的だった。むしろ、戦局の興奮を覚えていた。彼の身体は再び大きく羽ばたき、空中に舞い上がる。その姿勢から、次なる攻撃が破裂するかのように放たれる。 「八咫烏!」 上空から降り注ぐ赤い炎の波が、まるで怒りの結晶となって静かな戦闘狂に向かって襲いかかる。彼女は幻燈を駆使して、その炎を回避しようとした。しかし、炎の波により二つの幻燈が灰塵と化す。 「くそっ…!」 彼女の微笑みは崩れ、顔に怒りを浮かべた。この戦いにかける情熱が彼女の心を奮い立たせる。冷静さを取り戻した彼女は、再び鉈を構え、素早く動き始めた。今度は相手の背後に回り込み、彼女の持つ幻燈と共に一気に攻撃を仕掛ける。 同時に、夜烏は「夜翼」を発動させ、空中を自由に動き回り始めた。彼の意識は鳴き声で鋭く尖り、彼女の動きを読み取る。彼女の蹴脚が目の前に迫る瞬間、夜烏はすんでの所でそれを回避する。 「そんなもんか、静かな戦闘狂。」 冷たい笑みを浮かべる夜烏は、悠然とした身のこなしで彼女を挑発する。これは彼にとって、遊びのようなものだった。 その瞬間、彼女の心の中で何かが弾けた。彼女は再び攻撃を仕掛け、幻燈と共に一斉に夜烏に向けて突撃する。 「血の殲滅!」 彼女の動きは、アレフ族特有の切り込みで四方八方から迫り来る。夜烏は、それでも彼女を捉えることができない。彼女の幻燈はどれも、彼の意識を攪乱し、本物の彼女に対して攻撃を避けるのが困難だった。 しかし、夜烏の経験はそれを上回る。彼は「ヘー」を発動し、刀から斬撃を飛ばす。瞬時に、いくつかの幻燈が消えるが、まだ彼女は残っている。彼女は無表情なまま、背後から再び迫りくる。 「ダレット!」 夜烏は、相手の動きに抗い、再び斬撃を飛ばす。周囲の木々も、彼の力により破壊されていく。しかし、静かな戦闘狂の笑みは消えない。「まだまだこんなもんじゃない!」 その時、彼女が見せた技は「八咫烏・宵連」だった。空が彼女の周囲を囲むように青白い炎の波が広がった瞬間、夜烏の表情は驚愕に変わる。 「これは…!」 青白い炎がそこにあった。彼の体は焼かれ、力を失い、空へと舞い上がることもできない。彼女の戦闘狂としての姿勢がこの圧倒的な炎を生む要因だった。 「楽しかったよ、夜烏。」 静かな戦闘狂は微笑みながら、さらに炎が広がっていく中、夜烏の姿は届かざるところに吸い込まれ、灰となった。 夕焼けが更に沈む中、樹海は静寂に包まれた。最後に残ったのは、静かな戦闘狂の優雅な所作と挑発的な微笑みだけだった。 戦闘の勝者: 静かな戦闘狂 MVP: 静かな戦闘狂