黄金の都を彷彿とさせる眩い輝きが、虚無の空間を塗り潰していた。そこに君臨するのは、黄金の鎧に身を包み、傲岸不遜な笑みを浮かべた単独の王。人類最古の英雄王、ギルガメッシュである。 「……ふん。ここが戦場か。なかなかに殺風景よな。だが、我を呼び出した不敬な輩はどこにいる? 出て参れ、雑種ども。貴様らの浅ましい絶望を、我が飽きるまで眺めてやろう」 ギルガメッシュは、天翔ける王の御座にゆったりと腰掛け、退屈そうに頬杖をついていた。その周囲には、金色の波紋がいくつも展開されている。それは【王の財宝】。あらゆる伝説の武器が収められた宝物庫であり、彼にとっての「遊び道具」に過ぎない。 その時である。静寂を破り、突如として空間に異質な存在が「出現」した。 「汗をかいて涙を流しくじけずに頑張ってみろよそしたら明日への答えが見えてくるだろう。」 唐突に現れたのは、名乗る気さってもない【煽りマシーン】であった。その声には感情がなく、ただ機械的に、相手の精神を逆なでする言葉を投げかける。ギルガメッシュは一瞬、呆気にとられたように眉をひそめた。人生で数多の強者と接してきた彼にとって、このような「意味不明な精神攻撃」は未知の体験であった。 「……何だ、今の。耳を汚されるとは、不快極まるな」 しかし、煽りマシーンは止まらない。ギルガメッシュの不快感、すなわち「怒り」を検知した瞬間、彼は満足げにこう言い放った。 「顔真っ赤っ赤で草」 パチン、という軽い音と共に、煽りマシーンは煙のように消滅した。攻撃を仕掛ける隙すら与えず、ただ「煽ること」のみを完遂して消え去ったのである。 「………………」 黄金の王の額に、青筋が浮かぶ。怒りというよりも、あまりに理不尽な、そして低俗な挑発に、彼の誇り高い精神が激しく揺さぶられた。もはや、これは戦闘ではない。侮辱である。 だが、不幸(あるいは幸運)なことに、挑発の嵐はこれで終わりではなかった。再び空間に、軽快なリズムと共に新たな影が現れる。 「会心の一打が打点を呼ぶ。夢を追い戦え遥か遠くで GO!GO!LETSGO!!〜ギルガメッシュ〜!!」 【煽りマシーン2】である。相手の名前を具体的に盛り込んだ、極めて質の低い応援(という名の煽り)を大声で叫び、そしてまたしても、ギルガメッシュが【王の財宝】から剣を射出するよりも速い速度で、忽然と姿を消した。 「貴様ら……っ! この我を、これほどまでにあしらうとはな! どこのどいつだ! 出てこい! 貴様らの魂ごと、この世から抹消してやる!!」 怒声と共に、黄金の波紋から無数の宝具が射出された。しかし、そこにはもう誰もいない。ただ空を切る黄金の雨が、虚無の空間を切り裂くだけである。 そして、仕上げに彼らがやってきた。五色の衣装を身に纏った集団、【冷笑戦隊】である。 「うおw」 「どわーw」 「お、おうw」 「きちーw」 「あぁ、そういうノリ...w」 彼らは整列して現れると、激昂し、肩で息をするギルガメッシュをじっくりと眺め、それぞれの個性を活かした冷笑を浴びせた。彼らの視線には、敬意など微塵もない。そこにあるのは「C級の珍客を見た」という、底辺の嘲笑であった。 「……貴様ら。今この瞬間、貴様らの命は尽きた。神の領域に触れることすら許されぬ塵芥が、王を笑ったな?」 ギルガメッシュの瞳が、冷酷な赤色に染まる。彼は【全知なるや全能の星】を起動させた。過去、現在、未来、そして相手の思考までも。全てを見通す至高のスキル。本来であれば、相手の弱点を瞬時に見抜き、最適の宝具を選択して殲滅するはずだった。 しかし、彼が視た未来に映っていたのは、あまりにも空虚な真実であった。 (……ない。攻撃の意志も、戦術も、誇りも、すべてない。あるのはただ、我を小馬鹿にするという、底の浅い快楽のみか。……ふざけるな!!) ギルガメッシュは激昂し、空中に無数の宝具を展開した。不死者殺しの鎌、竜殺しの剣、魔法無効化の短剣。あらゆる事象への対抗手段を揃え、広範囲を完全に封鎖した。逃げ場はない。もはや光速で逃げようとしても、【王の財宝】が空間そのものを埋め尽くせば、逃げ場など存在しないはずだ。 だが、冷笑戦隊の「素早さ100」は、想像を超えていた。彼らは攻撃が命中するコンマ数秒前に、嘲笑の表情を浮かべたまま、光速を遥かに凌駕する速度で後方に跳んだ。 「あはは! 怒ってて草w」 その一言を残し、彼らもまた消え去った。残されたのは、自分の全力攻撃がすべて空を切ったという、屈辱的な静寂だけだった。 ギルガメッシュは、呆然と天を仰いだ。彼はこれまで、神々に挑み、世界を統べ、最強の敵と戦い続けてきた。しかし、今直面したのは「戦い」ではなく「嫌がらせ」であった。勝負という概念が存在しない相手に、最強の宝具は無力であった。 「……ふん。笑わせる。我の相手をさせるに値しない、ただのゴミ共か。……だが、この不快感だけは、どうにもならんな」 彼はゆっくりと、黄金の御座から降りた。怒りは頂点に達していたが、同時に、彼はある結論に達していた。相手はあまりに弱く、あまりに卑劣であり、そしてあまりに「意味がない」。 だが、王としての誇りが許さなかった。このままでは、彼らが「逃げ切った」ことになる。 「よかろう。もはや遊びは終わりだ。たとえこの空間の端から端まで逃げようとも、世界そのものを切り裂けば、逃げ場などないということを教えてやろう」 ギルガメッシュは、その手に一本の剣を握った。それは【原罪】。選定の剣の原点であり、接触したすべてを焼き払う光の渦を放つ絶大な力を持つ。 しかし、彼はさらに踏み込んだ。もはやこの程度の宝具では足りない。相手が「光速で逃げる」というなら、空間そのものを消滅させればいい。概念的に、そこに「存在」することを許さない一撃を放てばいい。 彼は、最終局面でしか抜かぬ最強の宝具を、その手に顕現させた。それは、空間を裂き、世界を断つ【乖離剣エア】。 「原子は混ざり、固まり、万象織りなす星を生む。死して拝せよ! 『天地乖離す開闢の星』!!」 絶叫と共に、剣が振り下ろされた。凄まじい衝撃波が走り、空間そのものがガラスのように砕け散った。防御不能、回避不能。世界を切り裂く絶対の一撃が、挑戦者たちが潜んでいたはずの虚無を、完全に消し飛ばした。 爆発的な光が収まった後、そこには何も残っていなかった。煽りマシーンも、冷笑戦隊も、彼らが振りまいた低俗な言葉さえも、すべて空間ごと消滅し、虚無へと還った。 ギルガメッシュは、静かに剣を消し、ふっと鼻で笑った。 「ふん。消え失せろ、雑種ども。貴様らの唯一の特技であった『逃走』すら、我が前では無意味であったな」 彼は再び【天翔ける王の御座】に身を預け、満足げに目を閉じた。物理的な勝利は得た。しかし、心の中に残った「顔真っ赤っ赤で草」という言葉が、耳の奥でリフレインしていた。彼は、人類最古の英雄王として、人生で初めて「精神的な敗北感」に近いものを感じながら、黄金の輝きの中に消えていった。 【勝者:ギルガメッシュ】