黄金の輝きが、虚無の空間を塗り潰していた。 そこに君臨するのは、人類最古の英雄王、ギルガメッシュ。黄金の鎧に身を包み、赤い瞳に冷徹な傲慢さを宿した彼は、不快そうに鼻を鳴らした。彼の背後には、黄金の波紋が幾千と展開され、そこから世界中のあらゆる伝説を上回る宝具の切っ先が、獲物を狙う飢えた狼のように突き出している。 「雑種ごときが、王に刃向かうか」 その声は絶対的な支配者の響きを持っており、空間そのものを震わせた。対峙するのは、銀髪に七色の瞳を持つ至高の女神、リオ・ベルソレア。そして、得体の知れない球体――胃碼廻廊。さらに、場違いな喧騒を巻き起こす「煽りマシーン2」という奇怪な存在。 「お初にお目に掛かります、黄金の王よ。私はこの世界の理を司る者。あなたの誇り高さは理解しておりますが、此度の戦いは避けられぬようです」 リオは静かに、慈悲深い微笑みを湛えて語りかける。しかし、その身に纏う神気は、一介の神の次元を遥かに超えていた。彼女は即座に自身のスキルを発動させ、周囲の空間を「自身に絶対的に有利な世界」へと書き換えた。物理法則が変転し、彼女の傷は瞬時に塞がり、あらゆる事象が彼女の勝利へと収束し始める。 ギルガメッシュは、その光景を眺めて冷笑を浮かべた。 「ふん、小細工を。我の眼に映らぬ理など存在せぬ。貴様の描く『有利な世界』など、我が全知の星の前では稚拙な塗り絵に過ぎんわ」 【全知なるや全能の星】。常時発動するこのスキルにより、ギルガメッシュはリオが構築した世界の構造、因果、そして彼女の思考さえも完全に透視していた。彼は余裕を持って、黄金の波紋から数多の宝具を射出した。 ――激突。 空を切り裂く神剣、魔剣、聖槍。それらがリオを襲うが、リオは【万物改変】により、それらの攻撃の「概念」を書き換えた。鋭利な刃は花びらに変わり、破壊の衝撃は心地よい風へと変質する。 「無駄ですよ。この世界において、私は全ての法則の支配者です」 だが、ギルガメッシュの不敵な笑みは消えない。彼は、相手が「概念改変」を主軸にするならば、それに特化した対抗手段を宝物庫から取り出すだけのことだ。黄金の波紋から現れたのは、魔法を無効化し、理を断つ特殊な短剣。それがリオの展開した世界に突き刺さった瞬間、彼女の絶対領域に亀裂が入った。 「何……!?」 「我が財宝にない物など、この世に存在せぬ。貴様の神気など、我にとっては単なる珍しい玩具に過ぎん」 その時、戦場に不協和音が鳴り響いた。 「会心の一打が打点を呼ぶ! 夢を追い戦え遥か遠くで GO!GO!LETSGO!! ギルガメッシュ〜〜!!」 煽りマシーン2が、耳を劈く爆音で王を挑発し、そして満足げに消滅した。静寂が戻った瞬間、ギルガメッシュの額に青筋が浮かぶ。 「……あの下卑た機械は何だ。不快極まりない。塵一つ残さず消し飛ばしてくれようか」 怒りに任せて宝具を射出せんとしたその時、ギルガメッシュは違和感に気づいた。足元に、ぽつんと一つ、テニスボールに似た球体が転がっていた。 胃碼廻廊である。 それは何の意志も持たず、ただ物理的に転がっていた。しかし、ギルガメッシュの【全知】が警告を鳴らす。これは単なる球体ではない。触れた瞬間、あるいは攻撃を加えた瞬間、あるいは不定期に――宇宙の理を塗り潰す超新星爆発をC-pointとして内包した絶望の特攻兵器である。 「ふん、このようなゴミが。消えろ」 ギルガメッシュは指先一つで、小さな宝具の針を射出した。それは正確に胃碼廻廊を貫いた。その瞬間、世界の色彩が反転した。 ドォォォォォン!!!!! 想像を絶する爆発。フィールド全体を消し飛ばすどころか、次元の壁さえも融解させる超新星爆発が、ギルガメッシュとリオを同時に飲み込んだ。胃碼廻廊という「思考のない爆弾」に対し、攻撃を仕掛けたことは最悪の選択であった。 しかし、爆炎の中から現れたのは、黄金の輝きを失わぬ王の姿であった。彼は【天翔ける王の御座】により、爆心地から超高速で離脱し、同時に伝説の盾を用いて衝撃の大部分を遮断していた。一方のリオは、自身の超回復スキルと次元登行能力により、辛うじて生存していたが、その表情には焦りが浮かんでいた。 「……想定外の雑種が混じっていたか。だが、これで退屈はせずに済む」 ギルガメッシュの瞳に、真の闘争心が宿る。彼はもはや手加減をしない。黄金の波紋がかつてない規模で展開され、空を埋め尽くした。 「見よ、雑種。これが真の王の力だ」 彼は【天の鎖】を解き放った。絶対束縛の鎖が、女神であるリオを絡め取る。リオの神性が高ければ高いほど、その拘束力は増す。リオは【能力創造】により、鎖を断ち切るための超振動の剣を創造したが、ギルガメッシュはそれを予見し、さらに強力な拘束宝具を重ねて投入した。 「くっ……! 離しなさい!」 「離すか。貴様ほどの格を持つ者が、我の前に膝をつく様こそ、最高の娯楽よ」 リオは最後の手段に出た。自身の全能力を無限に上昇させ、全ての法則を貫通して放つ至高の光線――【奥義:アレイト・サージ】。 「これで終わりです。王よ!」 七色の光が、全てを消滅させる質量を持ってギルガメッシュへと突き進む。それは宇宙の誕生と終焉を同時に体現したかのような、絶対的な一撃であった。 だが、ギルガメッシュは動じなかった。彼は静かに、一本の剣を掲げた。 それは、世界各地に伝わる選定の剣の原典――【原罪】。接触した全てを焼き払う光の渦が、リオの光線と正面から衝突する。激しい衝撃波が周囲の空間を粉砕し、次元の裂け目が無数に走った。 光線と光の渦。互いのエネルギーが拮抗し、世界が白く染まった。しかし、ギルガメッシュはまだ「切り札」を抜いていなかった。 「原子は混ざり、固まり、万象織りなす星を生む。死して拝せよ!」 彼の手の中で、空間そのものが歪み始めた。それは単なる剣ではない。空間を切り裂き、世界を乖離させる究極の断絶。 「『天地乖離す開闢の星』!!」 乖離剣エアが振るわれた瞬間、リオが構築した「自分に有利な世界」ごと、因果、法則、そしてリオという存在の境界線が、文字通り「切り離された」。 防御不能。回避不能。概念改変すら、その「切断」という絶対的な結果の前では無意味であった。 光の奔流と共に、リオ・ベルソレアの姿が空間の裂け目へと消えていく。彼女が創造した世界はガラスのように砕け散り、後に残ったのは、静寂と、黄金の鎧を纏った一人の王だけだった。 ギルガメッシュはゆっくりと剣を収め、呆然と立ち尽くした虚空を見上げた。そして、深い溜息をつく。 「退屈よな……我が手を下すまでもなかったわ」 彼は黄金の御座に深く腰掛け、不機嫌そうに、しかしどこか満足げに、消え失せた敵たちの残滓を眺めていた。 【勝者:ギルガメッシュ】