【激突:虚空の支配者 vs 概念の斬撃】 第一章:静寂を切り裂く雷鳴 空は不気味なほどに澄み渡っていた。しかし、その静寂は「侵略者」の到来によって一瞬で塗り替えられる。 城壁の外、地平線の彼方から現れたのは、単身で城を落とそうという不遜な男、そらであった。彼は地面を歩かず、文字通り「空を歩いて」いた。その足取りは軽やかで、まるで庭園を散歩しているかのような余裕に満ちている。 「さて、そろそろ時間かな。風が教えてくれたんだ。ここが一番、脆いところだってね」 そらが指先を軽く弾いた瞬間、快晴だった空が急変した。猛烈な突風が巻き起こり、視界を遮る濃霧が城壁を包み込む。同時に、空から不可視の圧力が降り注ぎ、城壁の石材がみしみしと悲鳴を上げ始めた。天候操作による環境支配。攻城側の大将・そらは、戦う前から盤面を自分の色に染め上げていた。 対して、城の最高地点、天守閣のバルコニーに立つ男がいた。燃えるような長い赤髪をなびかせ、不機嫌そうに鼻を鳴らす巨躯の男。レイド・アストレアである。 「あぁ? なんだぁ、あのナヨナヨした野郎は。霧だか何だか知らねぇが、視界が悪くてかならーねぇな。おい、そこの女兵士! オメエ、いい体してんじゃねえか。後でオレの部屋に来い。激マブだぜ」 隣にいた女性騎士が顔を赤くして憤慨するが、レイドは気にせず、手元にある「箸」を軽く回した。世界最強の剣聖が持つ武器は、皮肉にもただの箸であった。だが、彼がそれを握った瞬間、周囲の空気が物理的に凝固し、絶大な威圧感が城内を支配した。 「ま、いいぜ。援軍が来るまで時間潰しに、あのガキをぶっ飛ばしてやるよ。役者が違ぇンだよ、オメエ」 第二章:空間の迷宮と天剣の奔流 戦いの火蓋は、そらの「空間切り取り」によって切られた。 パチン、と指を鳴らす。その瞬間、城壁を守っていた精鋭兵たちが、忽然と姿を消した。彼らは次の瞬間、空中でバラバラに配置され、互いの武器で突き刺し合うという地獄絵図に陥っていた。物理的な防御など無意味。そらは空間そのものを操作し、敵を「配置」し直したのだ。 「なんとかなるよ。だって、もう勝負はついてるから」 そらは余裕の笑みを浮かべ、空を滑るようにしてレイドの懐へ飛び込む。同時に[碧天]を発動。空間ごと物理防御を無視し、レイドの心臓を直接切り裂く不可視の一撃が放たれた。 しかし、レイドは動かなかった。いや、動く必要がなかった。 ガキィィィン!! 空気を切り裂く音が響いた。レイドが持っていた「箸」を軽く一振りしただけで、空間を無視して放たれたはずの斬撃が、真正面から弾き飛ばされたのだ。 「あぁ? 今、何をした? 空間を切り裂いただと? 笑わせんじゃねぇぞ、オメエ。概念ごと斬れるのがオレの『天剣』なんだよ」 レイドの瞳に、戦闘狂としての歓喜が宿る。彼は一歩踏み出した。その一歩だけで、城の石畳がクレーターのように陥没し、衝撃波がそらを襲う。 「遅ぇんだよ! オメエ!」 箸による超高速の突き。それはもはや光速を超えていた。そらは空間認識能力でその軌道を察知し、瞬時に自身の位置を背後に転移させた。だが、レイドの攻撃は「点」ではなく「面」であった。転移した先の空間さえも、レイドの斬撃が既に切り裂いていた。 「ぐっ…!?」 そらの肩に浅い斬撃が入る。驚愕に目を見開くそら。空間を操作して逃げたはずなのに、追いつかれた。いや、レイドは「逃げた先の未来」を斬っていたのだ。 第三章:知略の盤面と武勇の極致 「想定外だね。でも、だからこそ面白い」 そらは冷静さを取り戻すと、[暁]を発動させた。周囲に不可視の歪みを展開し、レイドが放つ猛烈な攻撃をそのままレイド自身に跳ね返そうという策である。 レイドが吠え、箸を縦に薙ぎ払う。城壁の半分が消失するほどの威力を持つ一撃。それが[暁]の壁に当たり、反転してレイドに襲いかかる。 だが、レイドはそれを避けない。あえてその攻撃を正面から受け止め、さらに強い力で押し潰した。 「自分の攻撃に耐えられねぇなんて、情けねぇなオメエ! 盛り上がってきたじゃねぇか!」 レイドの猛攻に、そらは防戦を強いられた。空間転移を繰り返し、敵の背後を取り、翻弄する。しかし、レイドの天剣は空間の概念すら断ち切るため、転移の瞬間さえも斬撃が追随してくる。 戦場は混沌を極めていた。そらが天候を操作し、猛烈な雷雨と暴風を呼び寄せ、レイドの視覚と聴覚を奪う。さらに重力を操作し、レイドの体を地面に縫い付けようとする。 「奥義[大気重力波]!!」 回避不能の波状攻撃が、不可視の圧殺となってレイドを襲う。城壁の瓦礫が粉々に砕け散り、大地が激しく振動する。逃げ場のない重力の檻。そらは確信した。これで、この暴力的な男を拘束できると。 しかし、轟音と共に土煙が舞い上がった中心から、不敵な笑い声が聞こえてきた。 「ガハハハ! 重いぜ! だが、オレの腕っぷりには、この程度じゃ蚊が止まったようなもんなんだよ、オメエ!」 レイドは重力波を、ただの「腕力」と「気合」でねじ伏せていた。筋肉質の体が赤く昂ぶり、彼を縛っていた重力という概念さえも、その圧倒的な武勇が塗り替えてしまった。 第四章:天の霹靂と終焉の斬撃 時間切れが近づいていた。城の遠方に、Bチームの援軍である大軍勢の地響きが聞こえ始める。 「しまった、援軍か。急がなきゃ」 そらの表情から余裕が消え、切迫感が漂う。彼は全魔力(能力)を振り絞り、最後の切り札を繰り出した。 「[晴天の霹靂]!!」 突然、嵐が消え、一点の曇りもない青空が広がった。そして、予兆もなく、天から究極の雷撃がレイドの頭上に垂直に降り注いだ。それは自然現象ではなく、空間の特異点から呼び出された、絶対的な消滅の光。 ドォォォォォン!! 視界が真っ白に染まるほどの爆発。城の天守閣は跡形もなく消し飛び、周囲の地面はガラス状に溶け落ちた。静寂が訪れる。そらは、肩で息をしながら、煙の中に立つ影を見た。 そこに立っていたのは、服こそボロボロに焼けていたが、不敵に笑うレイドであった。彼は箸を口に咥え、呆れたように肩をすくめていた。 「……ったく、派手なもんだな。だがよ、オメエが一番忘れてたことが一つあるぜ」 レイドが地を蹴った。その速度は、そらの空間認識能力が「感知」するよりも速かった。 「なんだっ……!?」 「『最強』ってのはな、理屈じゃねぇんだよ。オレが斬りたいと思った。だから、斬れた。それだけのことなんだよ、オメエ!」 レイドの箸が、そらの目の前の「空間」ではなく、「そらという存在の因果」を斬り裂いた。 [天剣・絶界斬] 空間転移も、重力操作も、全てが無意味となった。レイドの斬撃は、そらが作り出したあらゆるルールを無視し、直接的にその身を捉えた。 「……あはは、やっぱり、なんとかならないか」 そらは静かに笑い、そのまま意識を失い、後方に吹き飛ばされた。 結末 地平線から到着したBチームの援軍が、壊滅した城壁と、呆然と立ち尽くすAチームの残党、そして山のような瓦礫の上に腰掛けているレイドを発見した。 レイドは、拾い上げたどこかの女兵士のヘルメットを弄びながら、大きくあくびをした。 「あーあ、退屈だったぜ。ま、いい暇つぶしにはなったんじゃねぇか、あのガキはよ」 空を歩く旅人は、最強の剣聖という理不尽な壁に阻まれ、その野望は潰えた。 【勝敗】 Bチームの勝利 (理由:Aチームのそらが空間操作と知略で圧倒的に優位に立っていたが、Bチームのレイド・アストレアが持つ「概念すら斬る」という規格外の武勇が、全ての能力的制約を突破し、最終的に物理的・精神的に制圧したため。また、援軍の到着時間までレイドが持ちこたえ、さらに敵将を撃破したため完全勝利となった)