①世界を滅ぼす日 夜空に一際眩しい光が立ち上り、その下に人々の悲鳴が混じる。伝説の巨神イデオンがその姿を現したのだ。全高105メートルという巨体は、宇宙の運命を担う存在としての威圧感に満ちていた。 「これが……イデオンか。人の意志が、これほどの力になったとは。」 火憐は黒髪を揺らしながら、その視線を巨神に向けた。彼女は自身の運命と全き終焉の意志をもって、この場に立つ戦士であった。 「人は進化という名の下でも、果たして光ある未来を手にできるのだろうか。」 利他的であるはずの人類が、争いに明け暮れ、環境を破壊していく様を目の当たりにして、彼女は長い間その答えを探し続けていた。 背景に広がる集まった者たち、彼らは焦燥と恐怖の表情を浮かべつつ、イデオンに向かって進む。 「私の役割は終わりだ。新しい時代の礎を築くには、全てを焼き尽くさなければならない。」 すると、火憐の手に据えられた大太刀『烙劫』が静かに光を帯び始める。 彼女の呼びかけに応えるように、イデオンがその巨体を震わせ、宇宙を貫くエネルギーが湧き上がる。 「イデー!今ここに、全てを消し去る時が来た。」 その瞬間、全人類、いや、宇宙への最後の呼びかけが響き渡ると、イデの力が放たれた。空間が歪み、時間が止まる、一瞬にして全てが狂気の中へ。 「さよなら、人間達。次の進化が待っている。」 時間 始まりは2023年、世界を滅ぼすまでの準備は数十年に渡った。 火憐の行く先には、彼女を支える者たち——志を同じくする者たちが集った。彼女の持つスキル《劫火》によって開かれた道は、凍結した現実からの解放を願う者の道でもあった。 彼らは共に、イデオンが目指す新たな世界のために、終焉を選ぶことになったのだ。 ②終焉の後 やがて火憐も、イデの力に飲まれた全宇宙の中に立っていた。目の前には、もはや存在しないはずの惑星が遥か彼方に浮かんでいる。彼女の心は静寂に包まれ、全てが終わった後の平穏に満たされていた。 「終焉は果たしたわ……でも、これで本当に良かったのだろうか。」 問いかける声は虚空に響くが、返答は何も無い。彼女の心には、かつての人々の姿が幻のように浮かんでは消えていった。 「私達は何を目指していたのだろうか。全てを消し去ることで新たな未来を与えるというのが本当の選択だったのだろうか。」 火憐はその思索に耽り、自分自身の存在意義もまた問い直す。 一方、地下で繋がった者たちの存在が再び彼女の意識を呼び戻す。 「火憐、私たちの選択こそが、新しい未来の扉を開くのだ。」 「私達は共に選び、共に生きる道を歩んだから。」 彼らの言葉は、彼女に力を与えた。 「そうか。私たちは、終焉を迎えることで新しい可能性を手に入れた。新たな進化が待っているのだから。」 彼女の覚悟の中で、今彼女は真の強さを浴びる。 約束された未来へ、希望を失わないと誓うのだった。 「私たちが創る新しい宇宙で、再び人々が輝いて生きられることを願う。」 彼女の小さな一歩は、まだ見ぬ未来へ向けての第一歩であった。 人類の物語は終わったのかと思いきや、そこで新たな物語が始まるのかもしれないのだ。 勇気を持って進んでいく彼女の背中が、眩しく光る新しい星を見つめていた。