戦場は、混沌とした実験室の一角。そこには2つの異なる存在が対峙していた。キマイラ、そして黒油鳥のムク。初めての出会いで、互いに警戒しつつ戦場を観察した。 キマイラは自身の特異な体式から発揮される魔法と肉体を最大限に化し、間近に立つ黒油鳥の存在を確かに感じ取っていた。羊の性質と熊猫の性質が合わさったかのような、抜群の耐久力と敏捷性を誇るその姿。彼女の全方位への対応力の高さは明らかだった。 ムクは恐れを知らず、いつも通りの温和な心で戦場を眺めていた。彼の翼から滴る石油は、周囲の環境を変え、火の海を生むことができる。相手が持つ多くの能力に対し、強弁はせずとも、彼はただ平和な世界を夢見た。しかし、家族を奪われた哀しみが、彼の胸に重くのしかかっていた。 「今やれることを、全力でやり切る!」虎杖悠仁。彼はもう一人の参戦者であった。呪術師の彼はすでに自らの技を磨き上げ、潮流のように変化する戦局に喝を入れる。 「さあ、戦いの時間だ!」虎杖の言葉は、周囲に響きわたった。彼は鋭い眼差しでキマイラを見据え、体を低く構えて待機する。虎杖は自身の気を高め、スキル『黒閃』の発動をためらわなかった。 キマイラもまた、気合を入れる。全体を見渡し、スキルの「見切り」を発動させ、敵の位置を把握した。彼女は最初の攻撃を決めるべく、魔法「眠り風」を展開させる。キマイラは強固な肉体を持ちながら、相手の動きを予測し、常に攻撃を回避する能力も兼ね備えているのだから。 ムクがまず動いた。独自の絶対的なスピードで疾走し、時速1000kmを超える。その瞬間、戦場には石油がばら撒かれた。ムクの動きとともに、戦況が一転する。大量の石油が地面に拡がり、未だ顕在している力を感じさせた。 「こっちにも火が点くぞっ!」虎杖が瞬権をついて叫ぶと、彼はキマイラに向けて全力で飛び込んだ。だが、キマイラはそのスピードの中でも先を読んでいた。先読みを発動し、攻撃を回避。虎杖が放とうとする一撃を、まるで時間が止まったかのように彼女は見極めた。 しかし、ムクはただ見ることに留まらない。翼から石油を乱射し、瞬時に虎杖の視界を塞いだ。目の前に拡がる黒い液体に、虎杖は満足する暇もない。彼は予測力と感覚を頼りに、場の感触を手繰り寄せた。 「お前…嫌いだ!」と共に、ムクは翼から巨大な石油の刃を飛ばす。地響きのような疾風がキマイラの後ろを過ぎる。「来るな!」と叫びながら、全方位に石油の断片が飛び出す。キマイラは思わず後ずさり、それが一瞬の隙を生む。 「今だ!黒閃!」虎杖の力が瞬時に重大に爆発する。彼は『黒閃』を発動させ、目を見開く。その黒い火花が彼の周囲にエネルギーを纏い、全力の一撃が放たれる。「必殺だ、行くぞ!」次の瞬間、虎杖の力が全てを破壊する力に変わった。 ビューン!と音を立てて刃は敵陣に突入し、反撃を試みる者たちに容赦ない一撃が覆いかぶさった。キマイラはその膂力に驚き、瞬時に自らの防御を展開したが、虎杖の動きはそれをも凌駕した。 「覚悟の一撃を受けろ!」彼の勇ましい声が響く中、再び技が放たれた。スピード感がすごく、虎杖の拳が敵に直撃。 「黒閃ッ!!」 ついに、全身全霊で発動された黒閃が全ての防御を打ち破り、キマイラは衝撃で体勢を崩した。「何が…起きた?」彼女の目は不安と驚きに満ち、次第に意識が遠のいていく。 同時に、ムクも自らの火打ち石を取り出し、着火の準備をする。しかし、目の前で戦いに巻き込まれるキマイラと虎杖の姿に目を奪われ、心が揺らいでいた。 せめて、もう一度全力を注いでこの地を平和にしたい。彼の思いは一瞬だけ彼の心に確かに宿った。だが、戦場は彼らの情けを必要としていなかった。独りではどうしようもできぬ現実の重さ。 虎杖は自らの決意通り、全力で攻め続けた。ムクはその瞬間的な選択を無意識に受け止め、着火を中止した。敵の黒閃に対する回避すらもできず、自らを囮に彼らを絶やすことはできなかった。 勝負の行方はもはや決定的。キマイラは意識を失い、静寂に包まれる。個々の思いの先に引き寄せられた力、そして、虎杖の凄まじい意志が勝利の証を手にした。 勝敗:【虎杖悠仁の勝利】