第1章:鉄と火と、大きすぎる猫 辺境の街の片隅に、ひときわ激しい火花を散らす鍛冶屋がある。看板に掲げられたのは「チタンの父・鍛冶工房」。その店構えは質素だが、漂ってくる熱気と、時折鳴り響く重厚な打撃音は、訪れる者にここが非凡な職人の居場所であることを悟らせた。 店に入ると、まず目に飛び込んでくるのは、山のように積み上げられた希少金属のインゴットと、最新の航空宇宙工学の理論に基づいた合理的な配置の作業台である。そして、客を真っ先に迎えるのが、看板猫のタイタンだ。メインクーン種特有の巨大な体に、ブラウンタビーとホワイトの美しい毛並み。金色の瞳を輝かせた彼は、客の足元にすり寄り、「にゃ〜」と甘い声で挨拶をした。 「いらっしゃい。タイタン、客だぞ」 奥から現れたのは、がっしりとした体躯のドワーフ、チタンの父であった。彼は前世で航空宇宙部門の合金加工工場に勤めていたエンジニアであり、その知識を異世界での鍛冶に転用している。彼の瞳には【鍛冶師の開眼】というスキルが宿っており、客が身につけている武具の材質、強度、そして欠陥を一瞬で看破することができた。 今回の客は、帝国から派遣された精鋭騎士団の一団だった。彼らは疲弊し、甲冑には至る所で深い亀裂が入っていた。彼らが抱えていたのは、失われた古代文明の遺物とされる「超新星の杖」という、禍々しくも神々しい輝きを放つ一本の杖であった。