黄金の都の如き豪華絢爛な空間に、三人の挑戦者が降り立つ。対するは、玉座に深く腰掛け、退屈そうに頬杖をつく黄金の鎧の男。その赤い瞳は、眼前の雑種たちを値踏みするように冷徹に、そして傲慢に見据えていた。 「雑種ごときが、王に刃向かうか」 ギルガメッシュの声は静かであったが、その響きには絶対的な支配者の威圧感が宿っていた。彼は立ち上がることさえせず、ただそこに在るだけで世界を屈服させる王の風格を纏っている。 挑戦者の一人、青い戦闘スーツに身を包んだ槍兵、クー・フーリンが不敵に笑い、紅い槍を構える。 「へっ、相変わらず鼻につく野郎だ。だが、今回は一人じゃねえぞ。賑やかにやってやろうじゃねえか」 その傍らでは、白髪に華やかな装飾を施した騎士、アストルフォがヒポグリフの背に揺られながら、天真爛漫に手を振っている。 「えーい、なんとなく強そうだから挑んでみたよ!よろしくね、金ピカのおじさん!」 そしてもう一人。ルークという名の男が、無表情にそこに立っていた。彼は武器も持たず、ただ静かにそこに存在する。しかし、彼が纏う空気は異質であった。それは「存在」しているが、同時にあらゆる「定義」を拒絶している空虚な闇のような静寂であった。 ギルガメッシュは、ふっと口角を上げた。彼の瞳には【全知なるや全能の星】が発動しており、目の前の三人が持つ理、能力、そして彼らが描く未来のすべてが、開かれた書物のように読み解かれていた。 「ふん、面白い。概念を拒絶する空虚、不屈の猟犬、そして理性を捨てた道化か。我を退屈させぬ工夫だけは認めてやろう」 開戦の合図など必要なかった。クー・フーリンが地を蹴り、電光石火の速度で突き出す。必中の一撃、死棘の槍(ゲイ・ボルク)がギルガメッシュの心臓を狙う。 だが、ギルガメッシュは眉一つ動かさない。彼の背後の空間に黄金の波紋が展開され、そこから一振りの短剣が射出された。それは「必中の因果」さえも切り裂く、対必中・対呪いの宝具。槍の軌道がわずかに逸れ、ギルガメッシュの頬をかすめるのみに終わる。 「ぬおっ!?」 「遅いな、雑種。貴様の槍が心臓を貫く未来など、我には最初から見えておるわ」 同時に、アストルフォが空から強襲を仕掛ける。魔書『螺湮城教本』を展開し、空間を転移させながら死角から肉薄する。さらに【破却宣言】により、ギルガメッシュの次なる行動をあらかじめ破壊しようと試みる。 しかし、ギルガメッシュは冷笑した。アストルフォの未来予測さえも、全知の星の前では「既知の事実」に過ぎない。 「道化よ。未来を視るなどという小細工、王の前で披露するなど滑稽千万!」 黄金の波紋から放たれた無数の剣と槍が、アストルフォの逃げ道を完璧に塞ぐ。弾幕のような宝具の嵐。アストルフォはヒポグリフと共に激しく回避するが、逃げ場のない空間に追い詰められた。 そこで、ルークが動いた。 ルークが静かに右手をかざす。その瞬間、空間に満ちていたはずの「武器」という概念が、激しく拒絶された。【武具の存在の否定】。ギルガメッシュから射出された無数の宝具が、標的に届く直前で霧のように消滅し、無へと帰したのだ。 「……ほう」 ギルガメッシュの瞳に、初めて興味の色が浮かぶ。攻撃が消えたのではない。武器であるという「意味」を否定され、この世から消し去られたのだ。さらにルークは【能力の使用の拒絶】を発動し、自身に向けられるあらゆる干渉を遮断する。 クー・フーリンが再び槍を突き出し、アストルフォが攪乱し、ルークが全ての攻撃を無効化する。完璧な連携。概念の拒絶という絶対的な盾を持つルークがいる限り、王の財宝による物量攻撃は意味をなさないはずであった。 だが、ギルガメッシュは余裕を崩さない。彼は【天翔ける王の御座】に乗り込み、上空へと舞い上がった。 「概念を拒絶するか。確かに面白い。だが、雑種よ。貴様が拒絶できるのは『既存の理』のみ。王の財宝には、理の外にある原典、そして理を上書きする至宝が揃っておる」 ギルガメッシュは、宝物庫から一振りの剣を取り出した。それは【原罪】。世界各地に伝わる選定の剣の原点であり、接触したすべてを焼き払う光の渦を宿した聖剣である。 「消してみせよ、空虚なる男よ」 ギルガメッシュが【原罪】を振るう。放たれたのは、単なる物理的な斬撃ではない。世界の根源的な「罪」と「浄化」の奔流。ルークは即座に【拒絶否定の理】を展開した。しかし、【原罪】は「拒絶」という概念さえも焼き尽くすほどの高密度な光の渦となってルークを飲み込んだ。 「が……ああっ!」 ルークの拒絶は、より上位の「原典」である光の前に、その効力を失った。概念を否定する力を持つ彼にとって、原点である【原罪】は、否定することさえ許されない絶対的な正解であった。ルークは激しい光に焼かれ、地に伏す。 「ルーク!」 クー・フーリンが怒りに任せて叫び、死翔の槍(ゲイ・ボルク・オルタナティブ)を最大出力で放つ。広範囲を吹き飛ばす大爆発がギルガメッシュを襲う。同時にアストルフォが【破却宣言】を全開にし、ギルガメッシュの防御手段を封じようとした。 しかし、ギルガメッシュは空中で不敵に笑った。彼の背後には、黄金の鎖が展開されていた。【天の鎖(エンキドゥ)】である。 「捕らえよ、天の鎖!」 目にも止まらぬ速度で射出された鎖が、クー・フーリンとアストルフォの四肢を絡めとる。この鎖は神性に近いほど、あるいは強大な力を持つほど強固に拘束する。不屈の戦士であるクー・フーリンでさえ、その拘束力に身動きが取れなくなった。 「くっ……この鎖、離れねえ! ちっ、なんて拘束力だ!」 「わわっ! 動けないよー!」 三人の挑戦者が、完全に制圧された。ルークは光に焼かれ、クーとアストルフォは鎖に縛られ、なす術もなく黄金の王を見上げる。ギルガメッシュはゆっくりと地上に降り立ち、冷徹な眼差しで彼らを見下ろした。 「よい足掻きであった。特に概念を拒絶する男、貴様の理は心地よい刺激となった。だが、忘れるな。我は全ての宝の所有者。貴様が拒絶する理の『原典』さえも、我が蔵には収まっておるのだ」 ギルガメッシュは、ゆっくりと右手を掲げた。その手のひらの上に、一振りの剣が現れる。それはこれまでの宝具とは格が違う。空気が震え、空間そのものが悲鳴を上げ、世界が裂ける予兆に満たされる。乖離剣エア。 もはや遊びの時間だ。王は、この不遜な挑戦者たちに、絶対的な絶望と、王の威厳という名の終焉を与えることに決めた。 ギルガメッシュの声が、世界を震わせて響き渡る。 「原子は混ざり、固まり、万象織りなす星を生む。死して拝せよ!『天地乖離す開闢の星』!!」 刹那、世界が裂けた。 防御不能、回避不能。空間そのものが切り裂かれ、あらゆる概念、あらゆる理、あらゆる存在が、その絶対的な一撃の前に消滅する。ルークの拒絶も、クーの不屈も、アストルフォの予測も、すべては意味をなさなかった。ただ、黄金の光がすべてを塗り潰し、すべてを無へと還した。 静寂が訪れる。 そこには、ただ一人、黄金の鎧を纏った王が立っていた。彼の足元には、もはや何も残っていない。挑戦者たちの誇りも、能力も、命さえも、世界ごと切り裂かれて消え去った。 ギルガメッシュは、ふっとため息をつき、再び玉座へと歩き出した。 「退屈よな…我が手を下すまでもなかったわ」 黄金の王は、不敵な笑みを浮かべながら、再び静寂に包まれた都で、次なる「暇潰し」を待つのであった。 【勝者:ギルガメッシュ】