春、桜の花びらが舞う江戸城の中庭。薄縹実光と木綿楓子が対峙して立つ。二人はそれぞれの御付の大名に紹介された後、将軍の命によって試合が決定した。 「大男の襷くらいは切り裂いて見せる!」実光が自信に満ちた声で言う。彼の体格は2メートルを超え、選り抜きの武士たちをうなり声を上げて見守る。大きな手に持たれた四本の薙刀が曇天を切り裂くかのような迫力だ。 「無理はなさらず、あまり傷をお負いにならないでくださいね、実光様。」楓子は柔らかな声で言った。彼女は柳のようなしなやかさを持ちながら、静かに構えている。襷のような和服が、彼女の一挙手一投足に揺れ動き、まるでまばゆい花びらのようだ。 試合が始まると、実光はその巨体を活かして前進する。その動作ブレない意志が、馬の巨体を揺るがす。楓子もまた、柔らかな動きで彼の攻撃を受け流そうとする。 「来い、楓子!」実光は剣を振り下ろすが、楓子はその襲撃を直感で避け、流れるように身を捩る。彼女の刀技は、まさに柳のように弾む。 「その攻撃、確かに受け取りました。でも、私はまだ折れません。」楓子は微笑みを浮かべ、再び実光の攻撃に応じる。彼女の剣が刃を交えるごとに、空気が膨れ、二人の間で静かな戦の世界が広がっていく。 激しい攻防が続く中、実光は何度か楓子の剣の鋭さに息を呑む瞬間を迎える。楓子はマイペースに攻撃を受け流すだけでなく、攻撃力を高めるために周りの気を利用する。 「そして何故、そこにいらっしゃるの? それは、私の攻撃を受け流すためでしょうか?」実光が大声で尋ねる。 「そうですね。ただ流すだけではなく、実光様の成長を願っているのです。」楓子が優しく答え、その言葉に実光の表情がわずかに緩む。 試合は進むが、実光はこの美しい侍に対する敬意を強く抱き続けた。実光は自身の巨大さで楓子を圧倒しようと試みるが、逆に彼女の柔らかさと受け流しの技術に翻弄される。 「鬼門封じを見せてみろ!」実光が叫び、腰の位置で薙刀を掲げる。 「ですから、私は柳ですから!」楓子はその言葉に自信を持って返す。彼女の剣が動くたびに、穏やかな柳の葉が舞い散るように感じる。 徐々に、実光の体には傷が増えていた。彼の二の腕には赤い斬り傷が走り、皮膚は切り裂かれ、血が滲んでいた。しかし、それでも彼は「不動金剛の構え」で何度も耐えて立ち上がり、戦い続けた。だが、楓子も彼の攻撃を受け流しつつ、ホワイトな彼女の裾に生えた草花から感情を読み取り続ける。 「傷が増えていくとは、少し厳しすぎやしませんか?」楓子は少し心配そうに尋ねる。 「だが、俺はこの戦でお前と向き合うことができている。まだまだいける。」 全力を尽くした実光は、さらに攻撃を繰り返すが、次第に疲労感が滲み出ている。彼の体は巨体にしては動きが鈍り始め、息を吐きながら額に汗が流れていく。 楓子はその瞬間、彼女の運命を感じ取った。「一刀、柳の一刀。」彼女は武器を一閃し、実光がわずかに遅れる瞬間を狙い抜く。 実光の感覚が鋭くなり、彼は柳の一撃を受け止めるべく姿勢を整える。その一撃は、流れるように柔らかく、まるで夢の中の傷を消すような感覚で実光の身体を貫通し、意識は闇へと飲み込まれた。実光はその場に沈黙し、倒れた。 試合の終了が告げられ、決着がついた。将軍は、この勝負の勝者、木綿楓子に向かってそして無念の表情を浮かべる実光に目をやり、言葉を放った。 「将来有望な君に、賞賛を送ろう。どんな時も誇り高くあり、者を慈しむ心を忘れないでほしい。」 楓子はその言葉に感謝の気持ちを込めながら、深く礼をし、胸の内に感謝の想いを詰めている。 「何より、戦いはまだ続きますので。私も成長し続けます。」 その後、将軍は記念の和歌を詠んだ。 「春の風、桜舞う中で笑み交す、剣の道は共に歩む。」 戦いの場が静まるとともに、実光の意識がよみがえり、彼はそれを聞き届ける。将軍の優しい声と、楓子の柔らかな心が周囲を包み込んでいく。それこそが彼が求めていた、戦場での真の勝利だった。彼は新たに守るべきものを見つけ、立ち上がることを決意した。