深キ静寂ノ夜神 --- その発言はまるで静寂を誘うかのようだった。バレット・ラビィとファルナウタ、彼ら二人の前に立ち塞がる者は、名も無き闇の女神、ヨルだった。彼女の瞳は、全てを飲み込みそうなほどの深い闇を宿し、両者に対して圧倒的な気配を放つ。 バレットは冷静に場の様子を観察していた。小柄な体躯にもかかわらず、常に死地を潜り抜けてきた彼の目は、鋭く静かに決意を固めていた。一方、ファルナウタは無言でその場に立ち、人気の無い夜の静けさの中で、彼の目は一点を見つめていた。彼の右目には、過去の戦いで負った火傷の跡があったが、その表情には恐れの影は無かった。 「来い。矮小なるもの達」 突然、ヨルが声を発した。彼女の言葉には凄みがあり、周囲の空気が一瞬にして凍り付いた。そんな彼女の気迫に対抗するために、バレットは《月穿》を手にし、ファルナウタもスナイパーライフルを構え直す。しかし、次の瞬間、戦場は深夜へと変貌した。深い藍色の空に星々が輝き、月の光が場を照らす。 深夜の戦い この深夜において、彼ら二人は不安を感じた。バレットの頭に浮かんだのは、【深夜症候群】、深夜では本来の力を発揮できないという厄介な制約。思考が瞬時に回転するバレットだが、彼は一拍息を吸う。"冷静さを失わずに、逆に利用してやる。" 「ファルナウタ、どうする?」 「静かに瞬時のチャンスを待つ。すべてを理解した後に最適解を導く。」 冷徹なファルナウタの言葉に、バレットは再度《月穿》を構える。いずれにせよ、彼らは戦わなければならない。 昼と夜の境界が崩れつつあるその時、ヨルの手が差し出され、彼女は呪文のように認識できない言葉を唱え始めた。 「私は深い静寂の神。お前たちは何もできぬ存在に過ぎない。」 【夜襲】、瞬間、黒い影が彼らの周囲を包み込み、視認できない量の無数の刃が飛び交った。バレットは身をかがめて回避し、その短い隙に《月穿》を放った。弾丸は彼女に向けて突き進むが、ヨルはそれを辛うじて捌いたようだ。 「過小な力。もっと力を込めてみよ。」 その言葉は、バレットの内なる怒りを呼び起こした。彼はガン=マジを発動しつつ、跳撃で障壁を足場として空へ跳び上がる。そして、冷静に状況を見ながら、禁断の奥義を決めた。 「封月……!」 バレットは瞬時に鎖縛を解放し、ファルナウタに目配せをする。ファルナウタはその意志をすぐに理解し、絶弾の準備を整えた。 「行くぞ、バレット!」 ヨルの逆襲 ヨルはその様子を見て取る。彼女の瞳が微かに光る。「無駄だ。貴様らのこわばった力は、私の前では無力だ。」 その瞬間、全てが変化した。ヨルはもはや、ただの女神ではなく、深い夜空と一体化しようとしていた。彼女は自身の最終奥義の準備に入る。地面が振動し、周囲が深い静けさに包まれた。 「静寂ノ世界……」 バレットとファルナウタは、この世の真理が迫るのを感じた。彼らは即座に立ち向かおうとしたが、やがてその全力ぶつけても埒が明かないと悟った。特に、ヨルによって召喚された星々が、その静寂を支配しようとしていたのだ。 決戦の果て バレットとファルナウタは力を合わせ、共に発動した。 「分撃!」 九人の分身が現れ、敵へ向かって突進する。しかし、ヨルの手は静かに舞い、ひたすらその存在を否定するかのように振り下ろされる。分身たちは次々に消えていった。 「私の夜の力に抗えると思うのか…?」 ファルナウタは冷静さを保ちつつ、完全に撃ち抜く目を持ち強力な弾を放った。 「絶弾、行け!」 しかし、それも無駄に終わり、彼女は再度微笑みを浮かべる。 深夜が全てを支配する やがて、バレットとファルナウタは深い絶望の中で身を寄せ合った。彼らの全力、全魔法が彼女の力を突破できず、周囲の景色は静寂の入道雲のように押し寄せた。 「私の夢の中で消えろ。」 ヨルは最終撃《静寂ノ世界ヨル》を解放した。永遠に広がる夜が彼らに迫り、不安と恐怖が心を掴む。 終焉 彼女の圧倒的な力に、バレットとファルナウタはただ道化のように飲み込まれていく。世界は窮地を迎え、全ては静寂に帰す。彼らの叫びは虚空に響くことなく、まるで存在そのものを消し去るかのように深い夜に溶け込んでいった。 そして、再び静寂が世界を包み込み、全ては消えてしまったのだ。 --- 勝者: ヨル