宇宙旅行艦S4:四日間の航海記録 【プロローグ:巨大な白い迷宮】 サイバーユニバースコーポレーションが誇る超巨大宇宙旅行艦「S4」。全長27,000kmという、もはや惑星の一部と言っても過言ではない規模のこの艦は、白と灰色の外装に鮮やかな山吹色のラインが走り、深宇宙を静かに滑走していた。 この船に乗り込んだのは、全く異なる背景を持つ「チームA」の面々と、彼らを案内する「チームB」のスタッフたちである。本来、武器の持ち込みは厳禁であるはずだが、サイバーユニバースコーポレーションの特例、あるいは「検閲をすり抜けるほどの豪運や狂気」により、彼らはそれぞれの装備を密かに(あるいは堂々と)持ち込んでいた。 --- 【第一日:出会いと不協和音】 AM 10:00 - ゲストラウンジ チームAがS4に到着し、案内スタッフであるチームBと合流した。出迎えたのは、軍服を端正に着こなした青髪の美女、アルツェムタである。 「えへへ!宜しくお願いします!本日から皆さんの案内を担当するアルツェムタですっ!」 彼女は満面の笑みで挨拶したが、直後に自分の足に躓き、派手に転倒した。案内資料が宙に舞い、チームAの面々は呆気にとられる。 レイアードとカレハの兄妹は、そんな彼女を優しく見守っていたが、彼らの目は既に艦内の壁面パネルや空調設備に向いていた。「ねえ兄さん、この壁の接合部、わずかに振動してるよ。設計ミスかな?直したくなっちゃうね」とカレハが呟く。レイアードも頷き、KLIC-7Bゴーグルをクイッと上げた。「そうだね。後でこっそり調整させてもらおうか」 一方、スミスは煙草を口に咥え(禁煙エリアであることを気にせず)、不敵な笑みを浮かべていた。彼の隣には、見るからに不気味な骨の怪物、Insanity!Sansが立っている。サンズはガタガタと震えながら、吊り上がった口をさらに歪ませ、周囲の旅行客を値踏みするように見ていた。 そして、最後尾に立つ巨漢、陸。210cmの体躯は周囲を威圧し、黒い司令帽の下から鋭い視線を走らせる。彼はこの豪華客船の浮かれた雰囲気が気に入らない様子で、腕を組んで鼻を鳴らした。 PM 02:00 - 船内ツアー アルツェムタによる案内が始まった。しかし、彼女のドジぶりは止まらない。案内ルートを間違え、誤って「高圧プラズマメンテナンス区画」に彼らを誘導してしまう。 「あわわ!すみません!ここ、立ち入り禁止エリアでしたぁ!」 慌てるアルツェムタ。だが、ここで同行していた「うほちゃん」が最悪のタイミングで動き出した。うほちゃんは、慌てるアルツェムタの足元をアクロバティックに潜り抜け、彼女の靴紐を巧みに結び合わせ、さらに背中をポンと叩いて煽った。 「ウホウホ!!」 「きゃあ!?」 アルツェムタが再び転倒し、その拍子に彼女の腰に下げられたカスタム狙拳銃『ツェシトルカ』が床に激突し、乾いた音を立てた。その音に反応した陸が、反射的にゼロポイント大剣の柄に手をかける。 「おい、案内役。貴様の不手際で我々の時間が奪われている。どう責任を取るつもりだ」 陸の威圧感に、一般のスタッフであれば失禁していただろう。しかし、アルツェムタは(ドジながらも)元指揮官としての矜持があった。一瞬だけ、彼女の瞳から柔らかさが消え、鋭い「鬼指揮官」の眼光が宿る。 「……うるさいぞ。指示に従っていればこんなことにはならん。座っていろ、巨漢」 空気が凍りついた。だが、直後に彼女は「あ、今の言い方ひどかったかも!ごめんなさいー!」と元のドジっ子モードに戻った。チームAは、この案内役が底知れない実力を隠していることを直感した。 --- 【第二日:隠された違和感と密かな整備】 AM 09:00 - 技術デッキ 二人目の日。レイアードとカレハは、案内スタッフの目を盗んで艦内の機械設備を点検し始めていた。彼らにとって、高性能な機械の損傷や不備は耐え難いストレスである。 「ここだね、兄さん。アクシオン粒子の循環効率が0.03%低下している。許せないよ」 カレハがダークマター器を設置し、精密な調整を行う。レイアードは廻巡工業レンチを使い、熟練の手つきでボルトを締め直していく。 「ふぅ……これで安定した。この船、規模が大きすぎてメンテナンスが追いついていない部分があるな。サイバーユニバースコーポレーションは完璧を謳っているが、物理的な限界があるということか」 彼らが隠していたのは、単なる整備器具ではない。彼らは「この船が何か異常をきたした際に、自力で機能を復旧させるための予備パーツ」を至る所に隠し持っていた。それは親切心からだが、規則では「未承認の機材設置」に当たる。 PM 03:00 - カジノ・エンターテインメントエリア スミスはカジノで豪運を振るっていた。彼が触れるスロットは必ず当たり、ルーレットは彼が賭けた数字に止まる。周囲の客が驚愕する中、彼は不敵に笑い、稼いだチップで高級な煙草を買い込んでいた。 しかし、彼の隣にいるInsanity!Sansは退屈していた。サンズは虚空を見つめ、指先で小さな骨の破片を弄んでいる。 「……ヘヘ、ここには『魂』がたくさんあるな。全部壊したら、どんな音がするんだろうなあ……」 サンズの狂気が漏れ出した瞬間、近くにいた警備員が異変に気づき、彼を取り囲んだ。武器の持ち込み禁止区域であるため、サンズの不気味なオーラは警戒対象となった。 「そこの貴方、怪しい物品を所持していませんか?検査をお願いします」 スミスが肩をすくめる。「おっと、彼はちょっと気分屋でね。適当に聞き流してくれ」 だが、サンズは笑った。赤い魔眼がわずかに光る。警備員たちが身構えた瞬間、サンズは「セーブ」と「ロード」の感覚を使い、一瞬で警備員の背後に移動していた。物理的な移動ではなく、座標の書き換えに近い。警備員たちが振り向いたときには、サンズは元の位置で欠伸をしていた。 「……なっ!? 今、どこへ行った!?」 スミスの「煙塵」にも似た神出鬼没さと、サンズの時空操作。彼らはこの豪華客船の中で、誰にも検知されない「死角」を作り出していた。 --- 【第三日:予期せぬ事態と「要塞」の介入】 AM 11:00 - 中央管制区近辺 三日目。平穏だったS4に異変が起きた。外部からの攻撃ではない。内部の「空間安定装置」の一部が、あまりの巨大な船体規模による負荷で局所的に崩壊し、小規模な空間歪曲(ヴォイド)が発生したのである。 警報が鳴り響き、スタッフたちが慌てふためく。緊急時対処員たちが駆けつけるが、空間の裂け目は物理的な手段では塞げない。 「うわああ!壁が消えていくー!」 旅行客がパニックに陥り、脱出ポッドへ殺到する。しかし、規則により緊急時以外は使用禁止であり、警備員たちがそれを阻止しようとして混乱が極まった。 ここで、チームBの「要塞」が動いた。言葉を持たぬ概念的な存在である要塞は、その能力を最大限に展開し、空間の歪みから放出される衝撃波と破片をすべて「跳ね返し」、一時的に安全圏を確保した。 PM 01:00 - 危機回避作戦 アルツェムタの顔からドジっ子な表情が消えた。彼女は即座に指揮官モードに切り替わり、大声で号令をかける。 「全員、伏せろ! 警備隊はパニックを抑え、避難経路を確保しろ! 遅いぞ貴様ら!!」 その声は、先ほどまでの彼女とは別人のように厳格で、威圧的だった。スタッフたちがその気迫に押され、迅速に動き出す。しかし、空間の裂け目は拡大し、ついにメインデッキの一部を飲み込もうとした。 「ったく、見てられないな」 陸が前に出た。彼はゼロポイント大剣を抜き放つ。本来、空間の裂け目は斬れない。しかし、彼の剣は「抹消」の力を宿している。 「消えろ」 一閃。陸が空間の特異点に向けて大剣を振り下ろすと、物理法則を無視した衝撃が走り、無理やり空間の穴を「押し潰した」。凄まじい衝撃波が周囲を襲うが、陸の頑丈な身体は微動だにしない。 同時に、レイアードとカレハが、昨日あらかじめ設置しておいた「空間内安定装置(SAG29)」と「ダークマター器」を遠隔起動させた。これにより、陸が潰した空間の隙間に安定した粒子が充填され、完全に修復されたのである。 「ふふん、僕たちの計算通りだね、兄さん!」 「ああ。やっぱり事前に手を入れておいて正解だったよ」 この連携により、最悪の事態は回避された。しかし、この騒動の中で、パニックに巻き込まれた一部の旅行客が、暴走した自動清掃ロボットや落下物に巻き込まれる事故が発生した。 --- 【第四日:静寂と旅立ち】 AM 10:00 - 回復したラウンジ 四日目。事件は収束し、S4は再び豪華な静寂を取り戻した。幸いなことに、チームAとBの連携があったため、大規模な崩壊は免れた。 アルツェムタは再び元のドジな案内スタッフに戻っていた。「えへへ、昨日はびっくりさせちゃってごめんなさい! お詫びに特製スイーツをサービスしますね!」と、トレイを持ったまま盛大に転び、ケーキを自分の顔に塗りつける。 「ウホウホ!!」 うほちゃんがその様子を見て、お腹を抱えて笑っている。陸は呆れたようにため息をつき、サンズは不気味に笑いながら、どこからか持ってきた骨の形をしたクッキーを齧っていた。 PM 04:00 - 出港準備 チームAはそれぞれの目的地へ向かうため、下船の準備を整えていた。スミスはカジノで得た莫大な利益をポケットに詰め込み、最後の一本を吸い切って捨てた。 「いい船だったぜ。まあ、案内役がちょっとだけ……いや、かなりドジだったがな」 レイアードとカレハは、こっそり艦内の重要な箇所に「永久的な安定化パッチ」を適用して回った。彼らが去った後、S4のエンジンの効率は以前よりも15%向上していたが、サイバーユニバースコーポレーションの技術者は、なぜ効率が上がったのか永遠に解明できないだろう。 【最終報告】 ・場所: 宇宙旅行艦S4 ・出来事: 局所的な空間安定装置の崩壊による空間歪曲の発生。チームA(陸の抹消攻撃、レイアード&カレハの事前整備)とチームB(要塞の防御、アルツェムタの指揮)の共同対処により解決。 ・隠蔽事項: なし(サイバーユニバースコーポレーションは誠実に事故報告書を作成し、全旅行客に補償金を支払った)。 【犠牲者数】 ・死者: 12名(空間歪曲発生時のパニックによる転落、および設備崩壊に巻き込まれた旅行客。チームA・Bに犠牲者なし) ・負傷者: 452名 【結末】 チームAはそれぞれの道を歩み始めた。彼らは互いに多くを語らなかったが、極限状態で背中を預け合った奇妙な連帯感がそこにはあった。S4は再び、山吹色の輝きを放ちながら、果てしない宇宙の海へと旅立っていく。