江戸時代寛永10年、桜吹雪舞う中庭での緊張感に包まれた試合。白い小石が敷き詰められた広場には、多くの剣士が押しかけ、そして観客が固唾を飲んで見守る。その中心で、二人の剣士が対峙している。 黒紅の辻斬り、彼女は血濡れの黒い和服に編笠を被り、その顔は武器を持つ者特有の冷たさを宿していた。『私にはお前を倒す必要がある』『見せるか、私の剣術を』という短い言葉を吐き捨て、目の前の相手へ向けた視線は鋭い。 対する秘剣者グラム・シューザー、その名の通り暗闇から現れた梟の獣人であり、彼の羽は鋼のように硬く、まるで一枚の鎧さながらであった。『お前の剣を見せてもらおう、黒紅の辻斬り』彼は微笑を浮かべ、挑発するように答える。 二人の眼差しが交わると同時に、試合が開始された。彼女の剛剣が大地を抉り、自らの体を盾にして果敢に攻撃する。相手を斬り倒すために、力強く、その叩きつけるような一撃が響く。剣士たちの注目が剣戟に集中する。 片や、グラムは軽やかな身のこなしとともに、届けられる壊滅的な攻撃をかわし、反撃の機会を狙う。彼の体術、刹那之間隙が発揮され、いかなる攻撃も隙間からすり抜けるかのように回避していく。その姿はまさに神業であり、観客は彼に感嘆の声を上げた。 黒紅はその攻撃スタイルが劣勢に追い込まれた瞬間、思いもよらぬ災難に見舞われる。古びた打刀は激しい斬り合いの中で弱り、遂にその刀身が折れてしまう。 『ふん、剣は折れたが、私はまだ負けん！』 　そう叫びながら、彼女は折れた刀身を器用に拾い上げ、二刀流の体勢を取った。次の瞬間、彼女の身のこなしが変わっていた。打刀が二本になり、瞬発力も加わる。 彼女の攻撃は今まで以上に冴え渡り、鋭い体捌きから繰り出される一撃がグラムの肩をかすめる。『どこまでも攻撃的だな、だが私も負けん！』 　グラムは反撃に転じ、微細な金属羽翼を撒き散らし、剣の刃と同じように食い込み、黒紅の喉をかすめようとした。 『ああッ！』 　羽の一撃が彼女の肌を切り裂き、鮮血が舞う。彼女は痛みを感じる暇もなく、怒涛の圧力でなおも押し寄せる。弱りきった身体を振り絞り、鋭く一閃する。 『お前の技術、甘く見た。』 　彼女はグラムの身体にも一撃を浴びせ、刀の刃が彼の腕を掠め流血を引き起こす。二人の間には克己と闘志が干渉し合い、まるで運命の糸が再編し、二人を結びつけているかのようだった。 武士オダ、そして剣豪ムサシ、大名サナダの感嘆の声が試合の進行を見守る。彼らの前で行われる剣術はただの勝負を越えた、己の意志を賭けた戦いであった。 『黒紅、お前の剣、いい剣だ。』 　グラムはそう言いながら、額に汗をかいた。その言葉を受け、黒紅は真正面を見つめたまま口を閉じ、先を見越す。二人は最早、全てを投げ打った。 だが、戦闘は終わっていなかった。折れた刀身も手にした彼女は尚も闘志を燃やし、グラムも裏の手から新たなる刃を取り出した。 「月夜風・翼刃旋封！」 　彼は金属の翼を一斉に飛ばし、彼女に襲い掛かる。だが、黒紅もまた替え刃のように素早く動き、素早い身体運びで再度回避を試みる。 しかし、すでに彼女の右肩に朱い紅が流れてきた。それでも、意志の力が彼女を前に進ませた。『負けるわけにはいかない！』 最後の一撃。それが決まる時が来た。彼女は横に切り込む刃の振るいを一度見せ、その間手元に持つ折れた刀身と手のひらでキャッチする。 『これが私の剣！』 闇夜の中に現れた刃、シャドーベイル。毒牙を持つ刃が交差し、二人の間の真空を切り裂いた。 『お前が負ける、黒紅の辻斬り！』 その瞬間、二人は互いに瞳が合い、刹那の静けさが広がる。破れる音と共に明るい空と死をもたらす一撃が交錯し、やがて一方の体が崩れ落ちた。 傷を負いながらも立つ黒紅、彼女の体はボロボロだった。その背後には、敗北の予感が漂い、グラムは倒れこむこととなる。 「ごめん、私には無理だった…」 お前にはまだ必要がある、と言いたい気持ちが彼女を貫いていく。ゆっくりとした足取りでグラムの元へ向かい、彼が痛みを抱えながらも笑いかけた。 「負けたのは俺だ、しかし、お前の剣は素晴らしい。」 将軍の声が響く。「黒紅の辻斬り、見事な勝利だ！」 剣豪ムサシ、酒を酌み交わしながら言った。「それぞれがいかにも強く、楽しい戦いだった。互いを知り合ったことで勝者が生まれた。美しい桜の下で和歌を詠むのはいかがか。」 将軍も大いに賛同し、黒紅の辻斬りは素直に頷く。「桜は美しい、私たちが通った後に実るかもしれん。」 最後に、将軍は黒紅に褒美を授け、空高く舞った桜の花びらの中で新たなる物語が紡がれていた。 幾つもの痛みと苦しみを乗り越えて、彼女は戦士としての姿勢を貫き、美しい勝利を手に入れたのだった。