夕焼けの空に川の流れが映し出すように、樹海はオレンジ色の光に包まれていた。木々の間を吹き抜ける優しい風は、静謐さとともに期待を孕んでいる。 その静けさを破るが如く、空から降り立つ影があった。それは、無気力な容姿をした八咫烏、夜鳴き鴉だった。彼はふわりと地面に着地し、まるで何もかもに興味の無いように目を細めていた。「おいおい、今日は面倒なことになりそうだな。」と、呟くように口にする。 樹海の奥へと進む彼に、突然、悠然とした剣士の声が響いた。「夜鳴き鴉、貴方のような存在が許される場所ではありません。」 その声の主は、【破邪の剣聖】アーナ・デリシオンだった。彼女は藍色の和服を身にまとい、白い長髪と透明な目が夕焼けの光に映えて輝いている。狼の耳と尻尾を持つ可憐な少女。しかし、その目は冷静で、強い正義感を秘めていた。彼女の手には、邪悪を祓う力を持つ《破邪ノ太刀・真正》が握られている。 「貴様の吐く烏の鳴き声には、何の価値もない。」 「ふん、正義厨か。俺を斬りたいっていうのか?」 夜烏の表情は無気力そのもので、挑発的にアーナを見返す。彼は空を見上げ、雲が夕焼けに溶け込むのを眺めた。 「私は、貴方の手によってこの世界が傷つくのを許さない。私の剣術は、どんな邪悪でも斬り払う。」 「お前の剣が俺に通じると思っているのか?」 その瞬間、夜烏は自身の背中から巨大な烏の翼を生やし、宙に浮かぶ。 「見ろ、これが俺の力だ。さあ、かかって来い。」 アーナは冷静に刀を構え、信じられない速さで剣を振るった。飛翔の一閃が夜烏を切り裂く一撃となる。 だが、夜烏はその攻撃を一瞬で避け、上空に舞い上がる。「ほう、なかなかやるじゃないか。」 彼女の五感が冴え渡り、夜烏の動きを見極め続ける。彼女は)疾風螺旋斬で次々に切り上げるが、夜烏はそれを音速でかわして見せた。「俺にもっとイライラした表情を見せてみろ。」 その言葉に、アーナの中の正義感が更に燃え上がる。「私は負けません!」 彼女の刀が放つ力は圧倒的だった。夜鳴きが響く度、周囲の生物が彼に恐れおののく。だが、夜烏はひたすら無表情で、「一巻の終わりで待っている。」と返した。 その時、場の空気が変わった。黒い影がふっと横切り、場に颯爽と現れたのは、また別の存在。彼女は【黒き災厄の悪魔】、シトリィ・オルメンデだった。彼女は優雅に歩を進め、銀髪を揺らしながら笑みを浮かべる。「あらあら、争い事は好きじゃないかと思っていたのに、こんなにも粋な戦いをしているなんて。」 夜烏はその存在に振り向く。 「お前は誰だ?」 「私は、全てを掌握する力を持つもの。まさに世界の運命を操る。」 アーナはその発言に身構え、「あなたも、邪悪なのですか?」 「邪悪を生み出すことでしか、この世に面白さはないわ。」 シトリィの手から発せられる魔力が大地を覆い、やがて無数の魔物の花が咲き始める。それは彼女の指示で動き出し、二人へ襲いかかる。 「これが私の芽吹きし災厄の種よ。」 魔物の花が周囲を取り囲む中、アーナは冷静さを失うことなく『次元斬』を構えた。空間を切り裂くその奥義で、彼女は敵を一斉に対処するが、夜烏はその瞬間をチャンスと捉え『八咫烏』を放つ。赤い炎の波が絶えず、アーナの剣も焼き尽くそうと迫っていく。 「くっ!」 炎が迫る中、アーナは必死に刀を振り続け、忌まわしき攻撃を阻む。その炎に飲み込まれまいと、剣士の姿勢が崩れかけたとき、シトリィが興味深そうに見つめていた。冷酷な笑みを浮かべながら、彼女は言った。「力はあるようね、そのまま私の足元にひれ伏すのかしら?」 その挑発に、アーナは決して屈しなかった。彼女は再度『疾風螺旋斬』の構えを取り、災厄の花をぞんざいに切り捨てる。事前に予測し、炎の波を再び切り裂いた。 夜烏は驚愕し、彼女の剣術の奥深さに唸る。「本気を出すしか無いのか…」 その時、夜烏は次元の狭間を感じ取り、力を集束。ほんの一瞬で、八咫烏・宵連が発動した。猛烈な青白い炎が樹海全体を覆い尽くし、空そのものが焼き尽くされようとする。 「何!?」 シトリィも驚きを隠せず、大地を覆う劫火が彼女の身体を脅かす。 アーナは瞬間、全てを斬り、二人の攻撃を制御するために立ち上がった。「この瞬間を我が物とする!」 どちらが勝者か、誰が夜烏の一撃を受けきるか、運命の分岐が訪れていた。 やがて、爆音が鳴り響き、夕焼けは樹海を青白い光に包み込んだ。時が止まり、耐えかねた瞬間が訪れて。 息をのみ、再び空が赤の光で染まる。そして、静けさが訪れ、樹海に歪な空気が漂った。