舞台は静かな森の奥、雲一つない青空の下、瑞希とルピナスは相対して立っていた。周囲の空気が張り詰め、二人の間には不穏な緊張感が漂う。お互いの力と能力を理解し合うことはないが、ひとつだけ確信していた。どちらも全力を尽くさなければ生き残れないこと。 瑞希は、虚ろな橙色の目でルピナスを見据える。「この力を手に入れるために、戦う…それだけだ。」 ルピナスは陽炎のように輝く存在で、金髪をさらさらと揺らし、微笑みながら木杖を軽く振った。「不触の魔法を使いこなせなければ、あなたには勝てないわ。しかし、最高の勇者に相応しいのかしら?私の力を試してみて?」 その言葉を聞いた瞬間、瑞希の体内にある「パンドラの箱」が反応する。心の奥深くから湧き上がる絶望の感情と共に、力への渇望が益々強くなっていく。道場で磨き上げた柔術に加え、空手、合気道を駆使して、全力でルピナスに挑みかかる。 「力が…もっと欲しい!」瑞希が叫び、拳を振り抜いた。強烈な一撃が晴れた空気を震わせ、ルピナスの顔が一瞬にして真剣な表情に変わった。だが、彼女はすでに「不触の魔法」を使い、空間に一つの障壁を作っていた。瑞希の拳はその壁に当たり、何の抵抗もなく空中を舞う。 「あっ、そこ罠でーす」ルピナスの言葉が響いた。瑞希の周囲に一瞬の光が閃き、草むらから魔術罠が起動した。 「罠、だと…」瑞希は反射的に身体を低くかがめ、回避する。 「いい反応ね…」ルピナスは軽快に笑う。次の瞬間、彼女が杖を叩きつけた。それに呼応するかのように、地面は震え、周囲から一筋の光柱『ソル』が降り注いできた。太陽の光を凝縮したその魔法は、空から直撃し、地を抉り、炎を周囲に巻き起こす。 瑞希は思わず目を背けたが、その瞬間、思考が働いた。「全力で受け止める…それが私の道だ!」瞬時に踏み込んで、瑞希は自身の体重をかけたまま、同時に今までの戦闘経験を生かし魔法の衝撃を受け止める。大きな衝撃が体を貫き、内部から焼き焦がすような苦痛が全身を駆け巡る。 「これではまだ足りない!」瑞希は自らの痛みを吐き出すように叫び、自身の中のパンドラの箱に手をかける。「力が…もっと欲しい…!」 次の瞬間、瑞希の目が明滅し、身体中に力が漲りはじめた。その時、彼女は自らの信念を感じた。「絶望を超えて、力を手に入れる!」 ルピナスはその変わり果てた姿を見つめて微笑む。「いいわ、私も本気で行く!」彼女は紅色の眼を開放した。禁呪覚醒『無銘』が発動し、彼女の周囲に軽やかなエネルギーが漂った。何もかもが、まるで一瞬にして静止したかのようだった。 「あなたの強さが、今度は足枷になる!」言葉通り、ルピナスの力は瑞希の強さを逆転させた。彼女の体の動きが鈍くなり、意識が遠のくような感覚が走る。それでも瑞希は諦めなかった。「私は…戦う!私の力が…こんなもので絶望してたまるか!」 燃え盛る感情と共に、瑞希は再び立ち上がる。そして自らの胸の中で膨れ上がる力を、彼女は全ての感情を一瞬で振り回し、全力の一撃を叩き込むために振りかぶる。彼女の拳がルピナスに向けてなぎ払われ、轟音が響き渡る。「パンドラの箱の力、見せてやる!」 拳はまるで打撃音を裂くかのように振り下ろされたが、ルピナスはその攻撃を軽々とかわしていた。「そんな力で私に勝てると思ってる?あなたはまだ私の程度を知らないわ!」 その瞬間、瑞希は衝撃で一瞬の隙が生まれた。「私が本気だって、思い知らせてやる!」瑞希は続けざまに膨れ上がった力で攻撃を仕掛けるが、次の瞬間、ルピナスの魔法が再び発動する。体が動かなくなる束縛に捉われ、全ての攻撃が虚しく響く。「さあ、歴史から消えてしまいなさい。」 ルピナスの力が空間を切り取り、瑞希の意識が暗黒の中に沈んでいく。「私の力は、本当の力へと至らせる方法…」瑞希は最後の瞬間、力不足を嘆いた。天に響く声が聞こえた。「力を求めるからこそ、果てしない悲哀が生まれる。」 彼女は見つけられず、ルピナスの言葉が全てを覆う。「誰もが大魔王からは逃げられない。お前が選んだのは、私との戦いだった。」 結果として、瑞希の身体は消え、彼女の心の内に眠っていた力は、再びぬるま湯のように感情の海へと飲まれていった。彼女は敗北し、地面に倒れ、かつての力は消え去った。大魔王に敗れた彼女は、パンドラの箱の今後の行く先を知ることはなかった。 ◆勝者: 【不触(さわれず)の魔法使い】ルピナス