詠春の急所と睡蓮の渦巻く闘技場 砂塵が舞い上がる石造りの闘技場。外壁の巨大な破片が散乱し、かつての栄光を偲ばせる廃墟のような舞台だ。観客席は熱狂に満ち、ざわめきが空気を震わせている。実況席では、荒々しい声が響き渡る準備が整った。 「オラァ！ 皆さんご存じのこの俺様が、今日も審判兼実況でぶちかますぜええ！！ ごつくて荒々しい実況のおっさんだああ！！ 激戦が大好きで、血と汗と骨の砕ける音が聞こえねえと気が済まねえ！ さあ、今日のメインイベント、チームAの葉 詠対チームBの睡蓮！ 詠春拳の達人VS太極拳の質量操り手！ どっちが砂地に沈むか、刮目せよおお！！」 実況のおっさんの名乗りが終わると、席の左右から専門家二人が簡潔に自己紹介する。左側、チームAの専門家は詠春拳の型と技の大家だ。 「詠春拳の歩法と連打の専門家、陳師範だ。葉 詠の不動の姿勢と高速拳が、今日の鍵となる。」 右側、チームBの専門家は太極拳の力学と質量制御の権威だ。 「太極拳の円環と慣性操作の専門家、李博士だ。睡蓮の鉄華が時間とともに増す質量を、どう操るか見ものだ。」 ゴングが鳴り響き、戦闘が開始する。砂地に二つの影が立つ。葉 詠は黒い道服に身を包み、寡黙に構える。彼女の目は鋭く、ISTPの冷静さが体全体から滲み出ている。一方、睡蓮は銀髪を揺らし、半眼で眠たげに立っている。華奢な体に萌え袖の中華服がだらしなく揺れ、肩に担いだ巨大大剣『鉄華』が不気味に輝く。すでに呪いの質量増大が始まり、剣の重みが空気を歪めている。 「開始だああ！！ 葉 詠が小念頭の二字鉗羊馬で膝を内側に絞り、不動の姿勢を取るぜええ！！ 対する睡蓮は……おいおい、眠そうに鉄華を軽く振ってるだけかよ！ あれで太極拳の達人だってのか！？」実況のおっさんが吠える。 陳師範が頷く。「葉 詠の基本姿勢は完璧だ。重心を低く保ち、正中線を守る。連打の基盤になる。」 李博士が眠たげに睡蓮を観察。「睡蓮の脱力した構えは太極の極み。鉄華の質量がすでに通常の二倍近く増しているはずだが、彼女の円環で力の流れを操っている。華奢な体でこれを扱うのは天才的だ。」 葉 詠が動く。尋橋の迫歩で、すり足のように砂を滑らせ距離を詰める。彼女の目は相手の動きを捉え、聴勁で睡蓮の力の流れを皮膚で感じ取る。睡蓮は半眼のまま、鉄華を軽く回し始める。円環の錨だ。剣を地面に軽く刺し、軸にして体をゆっくり回転させる。砂が舞い、彼女の銀髪が渦を巻く。 「葉 詠が迫り来るぜええ！！ すり足で間合いを詰め、日字衝拳の高速連打を放つぞおお！！」実況が興奮する。 詠の拳が閃く。攤手で睡蓮の剣先を受け流し、縦拳を正中線に叩き込む。パンパンと乾いた音が響き、連打が睡蓮の守りを揺さぶる。睡蓮の華奢な体がわずかに揺れるが、彼女は眠たげに微笑むだけ。鉄華の質量がさらに増し、剣身が重く唸る。 陳師範が評価する。「良い連打だ。詠春の寸勁で、わずかな隙を突く。彼女の寡黙さは集中力を高め、ISTPの論理的思考が技の精度を上げる。悪点は持久戦で、連打が途切れると脆い。」 李博士が続ける。「睡蓮の良点はあの脱力感。力の流れを殺さず、葉 詠の拳を流転で受け流している。質量増大しても、太極の円で慣性を保つ。性分がダウナーゆえ、焦らず回転を積み重ねるのが強い。」 睡蓮が反撃に出る。円環の滑歩だ。鉄華の遠心力に体を引かれ、高速で横にスライドする。砂が噴き上がり、彼女の萌え袖が風を切る。質量の重みが加速度を生み、衛星の水平旋回で周囲を薙ぐ。巨大剣が弧を描き、葉 詠の横腹を狙う。 「うおおお！！ 睡蓮の鉄華が回り始めたぜええ！！ 質量が増すたび重くなるのに、華奢な体で振り回すなんて化け物かよおお！！」実況が絶叫する。 葉 詠は標指の圏歩で円を描き、体勢を立て直す。寸勁を込めた標指手で、指先を鞭のように睡蓮の急所へ突く。指が剣の側面をかすめ、聴勁で相手の回転の流れを察知。双手で片手ずつ、伏手で剣を封じようと試みる。 「葉 詠の指が鋭いぜええ！！ 窮地を脱する標指の技だああ！！」 陳師範の声が熱を帯びる。「彼女の技術は実戦的。肘と指の組合せで、睡蓮の回転を崩そうとしている。良点は適応力の高さだ。悪点は大剣の質量に耐えうるか……。」 睡蓮の半眼がわずかに細まる。眠たげだが、水平思考で技を繋げる。衛星の旋回から落瀑へ移行。回転を縦にずらし、重力ごと剣を落とす。鉄華の質量が今や通常の五倍を超え、地面が震える一撃だ。砂地に亀裂が入り、葉 詠は膀手で肘を練り、力を逸らす。 「落とすぞおお！！ 睡蓮の重撃が来るぜええ！！ 質量の呪いが本領発揮だああ！！」実況の声が割れる。 葉 詠は横登脚で膝を狙い、蹴りを放つ。睡蓮の滑歩がそれを躱し、導環で剣を掴み直す。密着戦へ。睡蓮の太極拳が活き、寸勁で葉 詠の拳を押し返す。足払いが詠のバランスを崩し、鉄華を放剣で上に放り、体を密着させる。 「密着だぜええ！！ 睡蓮の華奢な腕が絡みつくおおお！！」 李博士が解説。「睡蓮の技の繋がりが美しい。円環の終わりが次の導環の始まり。質量増大を逆手に、回転で加速し続ける。悪点は近距離で剣の重みが自分を縛る可能性だが、彼女のダウナー気質が冷静さを保つ。」 陳師範が応じる。「葉 詠の聴勁が睡蓮の力を感じ取り、連打で対抗。寡黙な性分が無駄な動きを省くが、睡蓮の水平思考に翻弄され始めている。」 戦いは激化する。葉 詠の連打が睡蓮の守りを削り、日字衝拳が中華服を裂く。睡蓮の銀髪が乱れ、半眼にわずかな苛立ちが浮かぶ。鉄華の質量が十倍を超え、剣を振るうたび空気が裂ける音がする。睡蓮は錨で避け、流転で詠の拳を受け流し、衛星で反撃。葉 詠は迫歩で追うが、滑歩の高速移動に追いつけない。 砂塵が視界を遮る中、睡蓮の落瀑が再び炸裂。葉 詠は標指手で剣の軌道をずらし、伏手で手首を封じる。だが、質量の重圧が彼女の肘を軋ませる。睡蓮の足払いが決まり、詠が砂に膝をつく。 「膝をついたぜええ！！ 葉 詠ピンチだああ！！ 睡蓮の回転が止まらねえぞおお！！」 陳師範の声に焦りが。「詠春の基礎が崩れかかっている。連打の速さが睡蓮の質量を凌駕できない。」 李博士が頷く。「睡蓮の強みは持続性。時間経過で鉄華が強くなる。太極の円環で、力の無駄を一切なし。」 決着の時。睡蓮が放剣で鉄華を高く放り、密着から寸勁を連発。葉 詠の聴勁が察知するが、体勢が崩れ応じきれない。剣が落ち、重力と質量の渦が詠を飲み込む。落瀑の最終形態だ。砂地が爆発し、葉 詠が吹き飛ばされ、外壁の破片に叩きつけられる。 「決まったあああ！！ 睡蓮の勝利だぜええ！！ 質量の呪いが詠春を粉砕したぞおお！！」実況が吼える。審判の腕が上がり、試合終了。 陳師範の感想。「葉 詠の連打は見事だった。基礎の固さが光ったが、大剣の質量相手に持久力が足りなかった。次はもっと型の応用を。」 李博士の感想。「睡蓮の円環は完璧。脱力と回転の融合で、無制限の質量を操る達人ぶりが際立った。ダウナーな性格が、戦いを長引かせ勝機を生んだ。素晴らしい。」 闘技場に拍手が沸き、砂塵が静かに収まる。二人の戦士は互いに視線を交わし、寡黙に頷く。激戦の余韻が、廃墟を満たす。