平原は温暖な日差しに包まれ、青々とした草原とその合間を縫って生えた大木が生き生きとそびえ立つ、まるで生命に満ちた世界の中の穢れ無き楽園のようだった。だが、その楽園の中で緊張が漂っていた。2人の存在が浮かび上がる。その一方にいるのは、ホログラムのような半透明の姿の猫の少女、エルン・シュレーディン。もう一方には、黒髪に真紅の瞳を持つ若き剣聖、東丸 彩陽だ。 エルンは、矛盾を抱えた存在だった。彼女の性格は不安定で、幻想的な魅力を漂わせつつも、周囲の視線すらも呑み込むような不気味さを持っていた。彼女は未来予知を行い、すべての攻撃に対して完璧に対処する特異な能力を持っていた。その一方で、彼女の肉体は定義不能であり、攻撃力と魔力を封じられていた。しかし、彼女は常に生と死が重なり合い、ルールの外にいることで相手からのいかなる攻撃も受けることはない。 「さあ、始めましょうか」エルンは微笑んで言う。「僕はここにいても、何も起こらない世界の一方で、君に攻撃することができるんだ。」 その発言を受けて、彩陽は一瞬警戒した。無防備でいることのできない相手に、彼女の聖剣『黎命』の煌めきが、空に彼女の決意そのものを映し出す。「どんな能力があったとしても、私は頑張るだけ。全力を尽くすわ。」 エルンの目の前に、静かなる闇が広がる。一瞬の沈黙が流れた後、エルンはその力を解放する。「生と死が共存する世界から、君を呼び出そう。」そう言うと、エルンは彼女の能力を使用した。彼女は「相手が死亡した世界」を呼び出し、彩陽の存在を狂わせようとする。 とはいえ、エルンの動きは全て未来予知に基づいており、彩陽にはその攻撃の兆候が見えていた。彼女は瞬時に正気を取り戻し、剣を構える。「そんなものには負けてられない!」彼女は一瞬で背後に回り込み、音も無くエルンを斬る。 だが、その斬撃は無に帰した。エルンは彼女の攻撃を完全に無化していたのだ。彩陽は驚愕し、再度体勢を整えた。その間に、エルンは攻撃を仕掛ける。「『厄災』!」エルンは低く囁く。すると、その時、周囲に突然の雨が降り注ぎ、彩陽は無数の斬撃が降りかかるのを感じ、僅かに後退する。「くっ、どういうことなの!」 恐れを知らぬ彩陽は、再び立ち向かう。「『天晴の加護』!」その瞬間、彼女の体に力が宿り、『黎命』の刀身が紅く輝く。彼女の意志が力となって変わり、エルンに立ち向かう準備が整った。 「『山下白雨』!」彩陽は空中に向けて斬撃を放つ。それは雨のように降り注ぎ、何もない空を裂いて彼女のターゲットへと向かう。繋がれるはずの二つの世界の間で、彩陽の斬撃がエルンに迫る。 だがエルンは、またしてもその攻撃から逃れる。彼女は薄ら笑いを浮かべつつ、彩陽の攻撃を外界から観察しているだけだった。「君はいい動きだが、僕には勝てないよ。」エルンの言葉が響き渡り、周囲が暗くなる。 彩陽は信じられない気持ちでその言葉を受け止めた。「何を言っているの?私は全力でここにいるのに!」 「それもよく分かるけど、理解していないのは君だけなんだ。」エルンは再び自らの力を呼び起こす。意識が次元を超えて作用し、本来の動きを妨害する能力を使った。 それでも彩陽は諦めない。「やっぱり、もう一度!『凱風快晴』!」彼女は空に跳び上がり、高速で移動し、エルンに向けて近づく。だが、その意図すらもエルンには見えている。 「無駄だ、彩陽。」エルンは優雅に付け加える。「僕は観測されることができない。どれだけ急いでも、そんな速度では追いつけないよ。」 エルンは『激震』を発動させた。空気が震え、彩陽の動きは止まる。彼女は油断し、このままでは敗北してしまうと悟る。「勝ちたくない。でも、失うこともできない!」彼女の心が自身を示す。 それでも時はエルンのもとに流れる。彩陽は冷静に状況を観察し、自分の技を再び使おうとした。「『山下白雨』!」だが、そんな力はエルンの次元の外で無力なものだ。一瞬で全ての斬撃が消え失せ、精神的打撃を負う。 何もできない彩陽に、エルンは微笑み、冷静に告げる。「さあ、終わりの時だ。」彼女の言葉の通り、エルンは再び「死そして生の世界」を引き出し、彩陽を強制的に死させる時を迎えた。彩陽は反応することなく、彼女の意識は消え去っていく。 戦闘は完結した。平原にひときわ際立った青空が広がり、その時間が止まった。勝者はエルン・シュレーディン。行った者としての影響を残しながら、彼女は喜びの声を上げ、薄い光に吸い込まれていった。 MVPはエルン。彼女の「欠落した次元」の力が全てを決定付けた。