荒野の葬列と鋼の要塞 ―ガンドルド鉱山への行軍― 第一章:不協和音の旅立ち 赤茶けた大地が地平線まで続く絶望の荒野。そこを、都市レンチ街からガンドルド鉱山へと向かう、巨大な要護衛艦が鈍い金属音を立てて進んでいた。横幅2km、高さ0.5kmという、もはや移動する要塞とも呼べるその巨艦は、時速10kmという鈍重な速度で、砂塵を巻き上げていた。 操縦席に座る二十歳の女性、フェアは、明るい声を張り上げて通信機に話しかける。 「みんなー!聞こえる?ここからは本当に危険なエリアだよ!でも大丈夫、私の操縦に任せて!みんなで協力して、無事に鉱山まで届けようね!」 彼女の元気な声とは裏腹に、護衛に就いた面々の面持ちは様々であった。パワードスーツに身を包み、不敵な笑みを浮かべるラチェット・シード主任。無表情にヴァイオリンを構えるソフィ。冷徹な眼差しで周囲を警戒する氷浦圭人。そして、どこか上の空で地べたに座り込んでいるフロイデ。空には白鯨ペルの背に乗った冬姫が、優雅にお茶を啜りながら静かに宙を漂っていた。一方で、不気味な沈黙を保つZKとZGの軍勢、そして正体不明の「彼」という巨悪が、この護衛任務に混じっていた。彼らが「襲撃者」として牙を剥くタイミングは、誰にも分からなかった。 第二章:死者の咆哮 旅が始まって数時間。静寂を破ったのは、地響きのような咆哮だった。前方から、地平線を埋め尽くすほどの「黒い波」が押し寄せてくる。それは、死者の軍勢――ゾンビの群れであった。 「来たわね!いいタイミングよ!」 ラチェット主任が叫ぶと同時に、パワードスーツのブースターが火を噴いた。彼女は先陣を切り、圧倒的な物理火力でゾンビの群れを文字通り「粉砕」していく。攻撃力15倍という凄まじい衝撃波が、数百体のゾンビを一瞬で肉塊へと変えた。 しかし、敵の数は数億。そして、その中には絶望的な「核」が存在した。ゾンビの王、ZK。そして、あらゆる武器を携えたゾンビ軍団を収容する巨大バンカーを抱えたZGである。 「……不快な音。消えてください」 ソフィが静かに弓を引く。彼女が奏でる【エンザイエティ】の音色が戦場に広がると、襲撃してきたゾンビたちの動きが鈍り、互いに疑心暗鬼に陥るという奇妙な光景が広がった。死者に精神があるのかは不明だが、その音色は「存在の根源」を揺さぶり、彼らの統率を乱した。 そこへ、氷浦圭人のゼロフレイムが炸裂した。青白い氷炎が放射状に広がり、数千体のゾンビを一瞬にして絶対零度の彫像へと変える。「ゼロバースト」の衝撃で、周囲の空気さえも凍りつき、戦場は白銀の世界へと塗り替えられた。 第三章:内なる裏切りと絶望の巨像 だが、戦況は急転する。護衛のふりをしていたZKとZGが、ついに本性を現した。彼らは外敵を撃退するふりをして、要護衛艦の懐へと潜り込んでいたのだ。 「ガハハハ!この船ごと、全員俺の配下にしてやるよ!」 ZKが叫ぶと同時に、艦内に大量のゾンビが召喚された。さらには、地上で待機していたZGのバンカーが開放され、1万体を超える武装ゾンビたちが艦の甲板へとなだれ込んだ。ショットガンの銃声と爆発音が鳴り響き、要護衛艦の装甲が激しく損壊していく。 さらに、最悪のタイミングで「彼」が動いた。あまりに巨大すぎて普段は風景の一部にしか見えないその悪魔が、1分に一度のテレポートを使い、要護衛艦の真上に現れたのだ。 ドォォォォォン!! 「彼」の巨大な質量が、高さ0.5kmの艦の屋根を直撃した。凄まじい衝撃に、艦全体が大きく傾く。操縦席のフェアが悲鳴を上げる。 「きゃああ!何!?急に大きな衝撃が!操縦不能になるー!」 第四章:理不尽な幸運と天命の固定 絶望的な状況の中、フロイデはあくびをしながら、転がっていた適当なガラクタをゾンビに向かって投げた。すると、それが「運良く」ゾンビの指揮官格の目の前にある燃料タンクに当たり、誘爆。連鎖的にZGの武装ゾンビたちが巻き込まれ、数百体が自爆するという奇跡的な展開となった。 「うふふふふっ、あら、残念だったわね〜」 同時に、冬姫が静かに口を開いた。「その身を悔い、契れ」 彼女の権能【契】が、混乱する戦場に波及する。襲撃側に回った一部のゾンビや、精神を持つ個体たちが、突如として冬姫への絶対的な忠誠心を抱き始めた。彼らは仲間だったはずのZKに牙を剥き、冬姫を守るための盾となった。白鯨ペルが超音波を放ち、敵の「攻撃が当たる運命」を徹底的に破壊し、要護衛艦への致命的な打撃を最小限に食い止める。 第五章:反転の極致と終焉 しかし、ZKの粘着質な攻撃と、「彼」の分身たちのレーザー攻撃が、ついにラチェット主任を追い詰めた。パワードスーツが激しく火花を散らし、大破する。だが、ここからが彼女の本領だった。 「CORD:γ、起動!!」 自爆と共に、さらに強化されたラチェット主任が再出現する。1回、2回……そして45回。死ぬたびに適応し、耐性を上げ、相手の攻撃を無効化するバリアを張り直す。彼女は「反転効果」を使い、ZKが放った破裂の爆音をそのままZKへと返した。さらにFACTRが発動し、ゾンビ化という現象の「根本」を破壊。配下となっていたゾンビたちが、次々と塵へと還っていった。 「これで終わりよ!」 ラチェットの15倍物理攻撃が、ZKの核を貫いた。同時に、氷浦圭人が最大出力のゼロシュートを「彼」の分身たちに叩き込み、戦場を完全に氷結させた。 しかし、勝利の歓喜は短かった。 第六章:あまりに下らない結末 激戦の末、襲撃者であるZK、ZG、そして「彼」は完全に沈黙した。生き残った参加者たちは、疲れ果てながらも、あと数キロでガンドルド鉱山に到達するという安堵感に包まれていた。 だが、その時だった。 艦の甲板に、一匹の小さな、あまりにも小さな、名もなき野良ネズミが迷い込んだ。そのネズミが、運悪く(あるいはフロイデの幸運の反動か)、艦のメイン動力炉へと繋がる極小の冷却パイプの、たった一箇所だけ弱くなっていたネジを、かじり切った。 ――チッ、という小さな音。それが全ての始まりだった。 冷却液が漏れ出し、それが高圧の蒸気となって配管を突き破り、それが偶然にも付近にあった予備の燃料タンクに引火。連鎖的な内部爆発が発生した。もともと「彼」に踏みつけられ、ZGの爆破攻撃でボロボロになっていた船体は、この「小さなネジ一本の欠落」という些細なきっかけで、耐えきれなくなった。 「えっ……?」 フェアが呆然とメーターを見た瞬間、要護衛艦は内部から真っ白な光に包まれ、派手な音と共に大爆発を起こし、跡形もなく消滅した。 結末:生存者報告 【護衛結果】失敗(要護衛艦、大破・消滅) 【生存・死亡状況】 ■ラチェット・シード主任:生存 理由:CORD:γの最終段階で操縦者を排出する機能が作動。爆発の直前に、フェアを抱えてパワードスーツの最大出力で脱出したため。 ■フェア:生存 理由:ラチェット主任に救出されたため。 ■ソフィ:生存 理由:爆発の瞬間、反射的に【カラミティ】の余波で自身の周囲に精神的な防壁を展開し、衝撃を緩和させながら後方に跳んだため。 ■氷浦 圭人:生存 理由:ゼロフレイムで絶対零度の氷の繭を作り、爆風から身を守ったため。 ■フロイデ:生存 理由:爆発の直前、「なんだかあっちの方が心地よさそう」という理由で、たまたま爆心地から最も遠い方向へ寝っ転がって転がっていたため(理不尽な幸運)。 ■冬姫&ペル:生存 理由:そもそも空中にいたため。ペルの超音波で爆風を押し返した。 ■ZK / ZG / 彼:死亡 理由:ラチェット主任および氷浦圭人らによる総攻撃により、要護衛艦の爆発前に既に撃破されていたため。 【エピローグ】 焼け焦げた荒野に、呆然と立ち尽くす一同。彼らの前には、ガンドルド鉱山の入り口が、すぐそこに見えていた。 「……ねぇ、嘘でしょ?」 フェアが泣きそうな顔で呟く。横ではラチェット主任が、「まあ、なんとかなるわよ!」と楽観的に笑っていたが、その白衣はボロボロだった。 人類史上最大級の護衛艦が、最後には「ネズミにネジをかじられたこと」で大破するという、あまりに下らない結末。しかし、生き残った彼らは、お互いの顔を見合わせ、やがて誰からともなく笑い出した。絶望的な状況を乗り越えた後の、あまりに拍子抜けな結末に、笑うしかなかったのである。