虚無の彼方、次元の境界線が激しく火花を散らす特異点に、その男は立っていた。 黒髪に青い瞳、そして静かに揺れる黒い尾。イアレ・ディアルニテ。多次元を旅し、飽くなき強さを求めて数多の文明と次元を塵に帰してきた龍神である。彼は退屈そうに、目の前に集結した「チームB」の面々を眺めていた。 そこには、全能の権能を身に纏った巨躯の恐竜ギガノトサウルス。銀河そのものを体躯に宿し、星屑を零しながら漂う超絶神龍アストラ=ゼルヴァ。そして、見た目こそ平凡な一般人だが、その拳に星を砕く暴力を秘めた男、残雪。 (ふむ。面白い。この次元には、我を愉しませてくれそうな連中が集まっているな) イアレは口角をわずかに上げ、構えを取らなかった。ただそこに立ち、静かに相手を待つ。彼にとって、今はまだ「遊び」の時間だった。 「ガアアアアアアッ!!」 先陣を切ったのはギガノトサウルスだった。その咆哮だけで周囲の空間がガラスのように砕け散り、衝撃波が数千の惑星を消し飛ばすほどの威力で押し寄せる。ギガノトサウルスは【Ω∞ステータス強化】および【神格的超越】を発動。その存在感は宇宙の法則さえも書き換え、彼が歩くたびに因果がねじ曲がり、運命が塗り替えられていく。 【万物消滅】の権能が発動し、イアレが立つ空間そのものが「無」へと変換されようとした。同時に、アストラ=ゼルヴァが静かに眼を開く。銀河を纏う神龍の意志が、時空法則を直接操作し、イアレの周囲の重力を無限大まで増幅させ、彼をブラックホールの中心へと押し込めようとした。 さらに、その隙を逃さず残雪が動いた。能力など持たぬが、その肉体は概念をも粉砕する。準備運動を終え、基礎能力を100兆倍にまで引き上げた彼は、光速を遥かに凌駕する「軽いジャブ」を放った。それは相手が認識する前に到達し、あらゆる能力を無視して物理的に粉砕する絶対の一撃。 ドゴォォォォォォォォォォン!!!!! 特異点に、宇宙誕生以来最大の爆音と衝撃が走った。ギガノトサウルスの権能、アストラ=ゼルヴァの時空操作、そして残雪の超絶的な拳。三者の攻撃が同時にイアレ・ディアルニテを飲み込んだ。 光が消え、静寂が訪れる。しかし、爆煙の中から現れたイアレは、服に埃一つついていなかった。 「……なるほど。なかなかの威力だ。だが、我の【万象の眼】から逃れられると思うなよ」 イアレの額に碧色の眼が輝く。彼は【万象改変】により、今受けたはずの攻撃という「結果」を、最初から「起こらなかったこと」へと書き換えていた。さらに、彼自身の【超越】スキルが、チームBの攻撃力という基準を瞬時に超え、彼らの攻撃を「子供の戯れ」へと格下げさせる。 「次は我の番だ」 イアレはただ、軽く右拳を突き出した。形態はまだ第一形態。力を抑えた素手の攻撃である。 ドォォォォォン!! 【神速の打撃】。超光速の拳が空気を叩いただけだが、発生した衝撃波は次元の壁を粉砕し、ギガノトサウルスを遥か彼方まで吹き飛ばした。ギガノトサウルスは【絶・不可壊体】と【超耐性】で耐えようとするが、イアレの打撃は「防御という概念」さえも粉砕して直接的に魂を揺さぶる。 「ガハッ……!?」 驚愕するギガノトサウルスに、イアレは追撃を加える。今度は【尾の薙ぎ払い】。黒い尾が超光速で空間を切り裂き、巨大な衝撃波がチームBを襲った。アストラ=ゼルヴァが時空の壁を展開して防ごうとしたが、その壁は紙細工のように容易く破られた。 「ふむ、やはりこの形態では時間がかかるか」 イアレはわざと、残雪の連続パンチを数発受け入れた。残雪の拳は一撃ごとにビッグバンを凌駕する威力を増し、イアレの身体にわずかな衝撃を与える。しかし、それは彼にとって「心地よい刺激」に過ぎなかった。 バキィィィッ!! 残雪の全力の拳が、ついにイアレの肩に命中した。その衝撃で周囲の銀河系がいくつも消滅し、時空が激しく歪む。しかし、イアレは笑っていた。 「いいだろう。少しだけ、本気を出してやろう」 その瞬間、世界が変わった。 イアレ・ディアルニテの身体から、黄金と黒のオーラが爆発的に噴出した。彼が「第二形態」へと移行した瞬間である。 ゴォォォォォォォォォォ!!!!! 宇宙の法則が乱れ、崩壊し始めた。物理法則は意味をなさず、光は逆流し、時間は円環状に乱舞する。チームBが展開していた全ての権能、能力、バフが、文字通り「かき消された」。 ギガノトサウルスの【全知全能】も、【最強無上】も、イアレの解放した圧力の前では霧のように消散する。アストラ=ゼルヴァの神龍としての威厳さえも、崩壊する宇宙の濁流に飲み込まれていった。 「な……何が起きた!? 我の権能が……使えん!?」 驚愕するギガノトサウルス。そこへ、イアレの手に一本の剣が現れた。【宝剣:エナ・ロンメント】。因果と次元を断つ絶技の剣だ。 イアレは静かに剣を振った。一閃。 斬撃は空間を飛び越え、距離という概念を無視してギガノトサウルスの巨躯を真っ二つに切り裂いた。因果を断たれたギガノトサウルスは、再生することも、運命を操作して回避することもできず、ただ絶叫と共に光の粒子となって消滅した。 「一人脱落だな」 次に狙われたのはアストラ=ゼルヴァだ。神龍は絶望的な状況の中で、全存在を賭けて時空の彼方へ逃走しようとした。しかし、イアレは不敵に微笑み、【宝弓:ジ・ペネーク】を構える。 シュッ――!! 放たれたのは、超光速の矢。それは時間と空間を削り取りながら、逃げる神龍を追い詰める。アストラ=ゼルヴァがどれほど次元を跳躍しようとも、矢はそれを先回りし、逃げ道を塞ぎ、最後にはその心臓を正確に貫いた。 「……宇宙の意思、か。我という絶望の前では、意思など無意味よ」 銀河を纏っていた神龍は、自らの星屑へと還元され、静かに宇宙の闇へと消えていった。 残るは残雪のみ。彼は恐怖に震えていたが、それでも戦士としての誇りを捨てず、地を蹴った。能力が効かぬ彼にとって、物理的な打撃こそが唯一の対抗手段である。彼は【サンドバック】のスキルを最大限に発動し、殴れば殴るほど強くなる拳で、イアレに特攻した。 「オォォォォォ!!」 数兆回の連続パンチがイアレを襲う。一撃一撃が宇宙を再構築させるほどの威力。しかし、イアレはそれを、ただの一本の鎖で止めた。 【宝鎖: テトラ・デアセルン】。 次元を超えて伸びた鎖が、残雪の四肢を完璧に拘束する。その瞬間、残雪が持っていた桁違いの身体能力、そして「殴るほどに強くなる」という特性さえも、全てが「ゼロ」にリセットされた。 「な……!? 力が……入らな……」 拘束された残雪に、イアレは冷酷な一撃を準備する。彼の手には、最凶の破壊兵器【宝斧:ペンタ・トルクネイロス】が握られていた。 「さらばだ、凡人。貴様の魂は輪廻の輪からも外れ、永遠の無へと帰せ」 ドガァァァァァァァァァン!!!!! 戦斧が振り下ろされた瞬間、残雪は一瞬にして数京回の死を同時に経験した。肉体、精神、魂、そして存在したという記憶さえも、斧の刃に触れた瞬間に消滅した。そこには、もはや塵一つ残っていなかった。 静寂が戻った。いや、それは静寂ではなく、全てが消え去った「空虚」だった。 だが、イアレはまだ満足していなかった。彼は自身の力をさらに高める。究極の形態――第三形態への移行だ。 「【宝翼:オクタ・エテリューゲ】、【宝輪:ミデン・ドミナムニス】……解放」 彼の背に、眩いばかりの白い翼が展開した。同時に、後光のような黄金の輪が彼の頭上に浮かぶ。 その瞬間、もはや「戦闘」という概念さえ成立しなくなった。イアレ・ディアルニテがそこに存在するだけで、周囲の空間は彼に適合できず、存在を維持できずに崩壊し続ける。もしここに誰かが生きていたとしても、彼と同じ空間に呼吸をすることさえ許されず、瞬時に存在消滅に至るだろう。 多次元の放浪者は、一人、虚無の玉座に座るように空中に浮かんでいた。 「やはり、この次元にも我を満足させる者は居なかったか」 彼は再び、次の次元へと旅立つため、白い翼を広げた。彼が去った後には、何も残らなかった。ただ、かつて激戦が行われたという痕跡さえも、彼の【宝輪】が全てを支配し、塗り潰していたからである。 * 【勝者:イアレ・ディアルニテ】 【勝利理由】 相手チームBが持つ「全能」や「超絶的な身体能力」という概念を、形態変化に伴う能力の解放によって完全に無効化したため。特に第2形態以降の【宝具】による因果・次元の切断および、第3形態における「存在しているだけで相手を消滅させる」という絶対的な格差により、チームBに反撃の機会を一切与えず完封したため。