シナリオ:億鬼夜行(おくきやこう) 【導入】 舞台は、古き良き日本の情緒と近代的な都市機能が混在する地方都市、瑞穂市。人口数十万を抱えるこの街は、今夜、この世のあらゆる『異形』が集う特異点へと変貌する。 夕暮れ時。空はどろりとした血のような赤に染まり、不気味な静寂が街を包んでいた。人々が家路を急ぎ、あるいは店先で談笑していたその時。街中に設置された防災行政無線から、聞いたこともない、地を這うような不協和音の警報が鳴り響いた。 ――ギィィィィィィィィン!! それは避難を促す警報ではない。何かが「来た」ことを告げる、死の鐘だった。 【第一章:邂逅と蹂躙】 市街地の中央広場。そこには、本来出会うはずのない八名が、運命の奔流に押し流されるように集まっていた。 「……不快な音ですね。耳障りです」 白い無地の仮面を被った少女、アル・アインが冷徹に呟く。彼女は周囲の喧騒に興味なさげに、ただそこに立っていた。その隣では、赤い肌に妖艶な笑みを浮かべた少女、ベニカグラが紅の七支刀「紅焔魔」を弄んでいる。 「ふふふ、其方もそう思うか。この空気、堪らぬ血の匂いがいたしておりますぞ」 その周囲では、異様な光景が広がっていた。ブーメランパンツ一枚で、山のような筋肉を誇示する男、肉森がサイドチェストのポーズを決め、その隣で白金色の肌を持つ長身の女性、アルゲナが知的好奇心に目を輝かせ、周囲の空間歪曲を観察している。 「実に興味深い現象です。この次元の壁が薄くなっているようですね」 青鈍色の外套を纏い、電子タバコを燻らせる青年、リンネは、虚ろな瞳で空を見上げていた。彼にとって、この地獄のような光景も「都市」に比べれば些細なことに思えた。 「……最悪だ。また面倒なことに巻き込まれたな」 その足元では、フライパンを持った魚、フライパンマスがピチピチと尾びれを振り、正義と信念を掲げる高校生コンビ、威座内と覇武解が、互いの背中を預け合い、緊張感を持って周囲を警戒していた。 「覇武解、来るぞ! 俺の信念は揺るがせねえ!」 「ふん、私の正義が、この街を浄化してみせるわ!」 そして、静かに宙に浮く本棚に囲まれた大悪魔アビスが、無口に魔導書をめくっていた。 その瞬間、世界が反転した。 【第二章:億鬼の奔流】 地平線の果てから、どす黒い波が押し寄せた。 十億の魑魅魍魎。無限に思える大数の大妖怪。古今東西の怪異。名前さえ持たぬ正体不明の恐怖。忘れ去られた堕ちた神々。そして、幾億の「鬼」。 彼らは一斉に走り、奔り、街を蹂躙し始めた。ビルは飴のようにひしゃげ、アスファルトは砕け、悲鳴さえも怪異の咆哮にかき消される。 「さて……掃除の時間ですね」 アル・アインが静かに認識する。彼女が「彼らは私の前を通り過ぎる」と認識した瞬間、押し寄せていた数万の鬼たちが、物理的な法則を無視して彼女を避けて流れていく。現実が彼女の認識に従い、書き換えられた。 一方で、肉森は動かなかった。正面から突っ込んでくる巨大な山のような鬼に対し、彼はただモストマスキュラーのポーズを決めた。鬼の爪が、牙が、その鋼鉄よりも硬い大胸筋に激突する。しかし、筋肉は一切のダメージを受けず、逆に衝撃で鬼たちが砕け散った。 「筋肉こそが真理。お前もジムに来い」 ベニカグラは狂い踊っていた。紅の七支刀を舞わせ、「焔毒散華」で周囲を切り刻む。触れた怪異たちが毒と炎で爛れ、絶叫する。彼女はその苦悶の表情を嗜虐的に楽しみ、紅霧領を展開して戦場を毒の海へと変えた。 アルゲナは冷静に戦況を分析し、触手を伸ばして敵の組織を採取する。「生体組織複製」により、襲いかかる怪異の能力を瞬時に模倣し、それを脱皮膜包帯として味方の防御に転用する。彼女の理性的判断が、乱戦の中での生存率を高めていた。 リンネは煙の中に消えた。EGO《霧散》を発動し、身体を煙へと変える。知覚不能となった彼は、敵の懐へ潜り込み、煙で形成したライフルを至近距離から叩き込む。麻痺した怪異たちが、気づかぬうちに消し飛ばされていく。 「舞え鳳凰!」「滅せ太陽神!」 威座内と覇武解が召喚した神話級の霊獣と神々が、黄金の光を放って億の群れをなぎ払う。天照大神の光が夜を塗り替え、ゼウスの雷が地を焼き尽くす。その圧倒的な火力こそが、蹂躙を食い止める唯一の壁となっていた。 そしてアビスは、静かに「虚空」の頁を開いた。彼女の周囲に黒い穴が出現し、押し寄せる数億の怪異を、文字通り「無」へと飲み込んでいく。本棚から供給される無限の魔力が、彼女を不滅の要塞へと変えていた。 【第三章:夜明けへの抗い】 しかし、敵は「億」である。いくら個が強くとも、絶え間なく押し寄せる波に、精神と肉体は徐々に摩耗していく。 フライパンマスは、光速を超える突撃で敵の陣形を切り裂き、フライパンで次々と怪異を叩き伏せていたが、あまりの数に包囲され、粘り強い防御力で耐え忍んでいた。 「……しつこいですね」 アル・アインが呟く。彼女は気づいていた。この夜行を終わらせるには、単に敵を倒すだけでは足りない。夜明けまで「生存」し、この現象が収束するのを待つしかないことを。 彼女は自らの権能を最大限に展開した。自分たち八名を中心とした領域を「絶対生存領域」として固定。運命を一つに固定し、彼らが死ぬという未来を抹消した。 だが、その代償として彼女の仮面の裏側、赤く美しい瞳には激しい疲労が滲む。感情が露わになり、彼女は初めて「恐怖」に似た焦燥感を感じた。それでも、彼女は止まらなかった。 「貴方たち、死ぬのはまだ早すぎますよ」 夜が、最も深くなる。億の鬼たちが、最後の一斉攻撃を仕掛けた。街全体を飲み込もうとする絶望の波。肉森が壁となり、アビスが空間を消し、リンネとアルゲナが隙間を埋め、ベニカグラが炎で道を切り開き、威座内と覇武解が神の力で押し戻し、フライパンマスが前線を維持する。 そして、ついに東の空から一筋の光が差し込んだ。 【結末】 光が街を照らした瞬間、億の魑魅魍魎は霧が晴れるように消滅し、元の静寂が戻ってきた。瑞穂市は廃墟と化していたが、生き残った八名は、互いの存在を確認し合い、静かにその場を離れた。 -- 【各キャラクターの結末】 - アル・アイン:【生存】 権能を用いて運命を固定し、自身と仲間を夜明けまで繋ぎ止めた。精神的疲労は激しいが、仮面の下で安堵の表情を浮かべていた。 - ベニカグラ:【生存】 猛毒と火炎で周囲を拒絶し、最後まで妖艶な笑みを崩さず、蹂躙を楽しみながら生き延びた。 - 肉森:【生存】 一切の攻撃を受けきり、貫通無効の筋肉で生存。戦後、生き残った生存者をジムへ勧誘し始めた。 - アルゲナ:【生存】 適応能力と治癒粘液により、自身のダメージを即座に回復。収集した億の怪異のサンプルと共に、研究へと戻った。 - リンネ:【生存】 EGOによる完全回避と煙の遮蔽により、正体を悟られることなく、静かに夜明けを迎えた。その後、フィクサーとしての報酬を考えながら去った。 - フライパンマス:【生存】 無敵に近い防御力で耐え抜き、最後はフライパンの一撃で道を切り拓いて生存。満足げに尾びれを振っていた。 - 大悪魔アビス:【生存】 無限の魔力と「虚空」の魔術により、不滅の存在として生存。再び魔導書の世界へと没頭していった。 - 威座内 & 覇武解:【生存】 信念と正義による神々の召喚で、最前線を死守。互いの信頼関係をより深め、学園へと帰還した。