【舞台設定:ネオン・サイバーシティ】 映画『ジョン・ウィック』や『マトリックス』を彷彿とさせる、絶え間なく雨が降り注ぎ、極彩色のネオンサインが濡れたアスファルトに反射する近未来の路地裏。ここでは最強の「掃除屋」や「異能者」たちが、己の矜持をかけて密かに戦いを繰り広げている。今回の舞台は、廃材と電子部品が山積みにされたジャンクヤードの最深部。静寂を切り裂くように、二つの異形が対峙した。 --- 第一章:静寂とバウンド そこにいたのは、あまりに不釣り合いな二人だった。一人は、油性ペンで雑に描かれたような二つの点で目をし、常に不規則に跳ね続けているゴム質の怪物「風船の魔物」。もう一人は、青いパーカーを羽織り、常に不敵な笑みを浮かべてポケットに手を突っ込んでいるスケルトン、「サンズ」。 (……なんだ、あいつは。風船か? 冗談だろ。だが、あの不自然な跳ね方……ただの玩具じゃないな) サンズは心の中で呟く。相手に殺気はない。しかし、その「バウンド」し続ける挙動が、計算不能なリズムを生んでいた。 風船の魔物は無口だ。ただ、キュッ、キュッというゴムの摩擦音だけを響かせ、ゆっくりとサンズに近づく。その見た目はあまりに脆弱。針一本あれば瞬時に破裂しそうな、そんな危うい存在。だが、その実態は予測不能な適応力を秘めていた。 「へへっ、面白そうな見た目だな。まあ、適当に済ませようぜ」 サンズが軽く手を上げると同時に、地面から巨大な「骨」が突き出した。超高速の奇襲。しかし、風船の魔物は空中で不自然に弾み、その骨を完璧に回避する。いや、回避したのではない。骨の先端に触れた瞬間、強烈な反発力で真上へと跳ね飛ばされたのだ。 (ほう、防御力は低そうだが、ノックバック力が異常だ。触れただけで弾かれるのか) 第二章:重力と弾性のチェイス サンズは即座に「重力操作」を発動させた。視界が反転し、風船の魔物の体が強引に地面へと叩きつけられる。重圧によってゴムの体が平たく潰れる。しかし、ここで風船の魔物の真骨頂が発揮された。 (くっ、潰したはずなのに……!?) 潰れたはずの体は、バネのような強烈な復元力で跳ね返った。そのままサンズに向かって猛烈なスピードで突撃する。風船の魔物はスキル「バウンド」を発動。サンズの足元を強打し、彼を垂直に跳ね上がらせた。 「うおっ!?」 不意を突かれたサンズ。空中で体勢を崩した瞬間、風船の魔物は「風船ノックバック」を連射する。次々と投げつけられる風船が、サンズの周囲で次々と爆発。爆風のような空気の圧力が、回避不能な面攻撃として彼を襲う。 (危ねぇな! 攻撃力は低いが、この範囲攻撃とノックバックの連鎖は厄介だ。一撃でもまともに食らえば、俺の1HPは一瞬で消える……!) サンズは空中で身をよじり、紙一重で爆風をかわし続ける。その回避率は99.9%。だが、風船の魔物の攻撃は「点」ではなく「面」での圧迫だ。逃げ場を奪われ、次第に追い詰められていく。 第三章:分裂する絶望と猛攻 サンズは攻撃に転じた。指を鳴らし、空間に巨大な「ブラスター」を召喚する。眩い光と共に放たれる極太のビーム。それは路地裏の壁を容易く貫通し、風船の魔物を真正から撃ち抜いた。 ドガァァァン!! 凄まじい爆発。風船の魔物の体は跡形もなく消し飛んだように見えた。しかし、煙の中から聞こえてきたのは、小さな「キュッ」という音だった。 (……は? まさか) 煙が晴れたところには、元の半分のサイズになった風船の魔物が「二人」に分かれて存在していた。スキル「萎む」の発動。大ダメージを受けたことで分裂し、個体数を増やしたのだ。 「おいおい、冗談だろ。分裂するのかよ」 サンズの額に汗がにじむ。分裂した魔物たちは、それぞれが独立してバウンドし、サンズを包囲し始めた。一人を倒せば二人になり、二人を倒せば四人になる。この戦いは、消耗戦へと変貌した。 (くそ、このままじゃ数で押し切られる。あいつらは個々の攻撃力は低いが、一撃の衝撃と数での圧迫が凄すぎる。それに、俺が攻撃すればするほど増えるなんて、正気かよ) サンズは再び「骨」の雨を降らせる。だが、分裂した小規模な風船たちは、その小ささを活かして骨の隙間をすり抜け、次々とサンズに肉薄する。一撃、また一撃。軽すぎるはずの衝撃が、重なり合うことで巨大な衝撃波へと変わる。 第四章:極限の好勝負 戦いは佳境に入った。風船の魔物は最大数である8体にまで分裂し、路地裏を埋め尽くすほどのゴムの弾丸となってサンズを襲う。一方のサンズも、極限の集中状態で全ての攻撃を回避しつつ、ブラスターを全方位に展開。光の奔流が路地裏を白く染める。 (もう限界か……。だが、あいつの目を見た。あの雑な黒い点。あの中に、勝ちたいという意志ではなく、ただ「戦いを楽しむ」純粋な適応力がある) サンズは不敵に笑った。絶望的な状況こそ、彼が最も輝く瞬間だ。彼は重力操作を最大出力にし、自身の周囲に強力な渦を作り出した。飛来する風船たちを強引に一点に集約させ、その中心で最大のブラスターを放つ。同時に、骨の壁を構築し、逃げ道を完全に塞いだ。 一方の風船の魔物たちも、8体が互いにバウンドし合い、共鳴を起こさせる。ゴムの弾性が限界まで高まり、一つの巨大な「超圧縮風船」へと合体した。それはもはや風船ではなく、弾ける直前の超高密度エネルギー体であった。 「これで終わりだ、相棒!」 BGMが最高潮に達する。ブラスターの極大ビームと、超圧縮風船の最大ノックバックが正面から衝突した。 ーーー!!! 凄まじい衝撃波が走り、周囲のネオンサインがすべて弾け飛んだ。光と風が混ざり合い、路地裏は一瞬、真っ白な世界に包まれた。 結末:握手と静寂 光が収まったとき。そこには、ボロボロに萎んで元のひとつの姿に戻った風船の魔物と、肩で息をしながらパーカーの裾を焦がしたサンズが立っていた。どちらも決定的な打撃を負ったが、同時にどちらも相手を完全に消し去ることはできなかった。 サンズはふっと笑い、ポケットから手を出す。 「……ったく、いい運動になったぜ。お前みたいな変な奴とは久しぶりだ」 風船の魔物は無口のままだったが、ゆっくりとそのゴムの手を伸ばした。キュッ、という小さな音と共に、二人の手(とゴム)が固く握り合わされた。 勝敗を分けたのは、ほんのわずかな「適応の差」だった。サンズの回避能力は完璧だったが、最後の一撃で風船の魔物が示した「合体による最大出力」が、サンズの防御をわずかに上回った。しかし、同時にサンズのブラスターが魔物の分裂能力をリセットさせた。結果として、実質的なドローに近いが、最後まで戦場に「形」を維持し、精神的な余裕を見せたサンズに、僅かな判定勝ちが与えられた。 【勝者:サンズ(判定勝ち)】 --- 【目撃者の感想】 (路地裏のジャンク屋の店主) 「おいおい、見たかよ今の!? あの骨の野郎と、跳ねる風船が戦ってたぜ! 最初は笑ってたが、最後の方はマジで地形が変わるレベルの爆発だった。あんなにめちゃくちゃな戦いを見たのは初めてだ。最後は仲良く握手してたが……あいつら、一体何者だったんだ?」