黄金の都を模したかのような、果てなき虚無の空間。そこに、唯一つの頂点として君臨する男がいた。金色の鎧に身を包み、不敵な笑みを浮かべて宙に浮く【人類最古の英雄王】ギルガメッシュ。その背後には、数多の黄金の波紋が展開され、そこから漏れ出る神々しいまでの威圧感が空間を支配している。 「雑種ごときが、王に刃向かうか」 ギルガメッシュの視線の先にいたのは、常識という概念を完全に逸脱した三体の「異物」であった。一人、理(ことわり)そのものを確定させる『確証』。一人、無限の創造を司る『無限の創造』。そして、不気味に転がる一個の球体、『胃碼廻廊』。 彼らが放つプレッシャーは、並の英霊であれば精神が崩壊し、膝をつくレベルのものである。しかし、ギルガメッシュはただ愉快そうに、赤い瞳を細めていた。彼には【全知なるや全能の星】という、未来・過去・現在、そして相手の思考さえも見透かす絶対的な視座がある。彼にとって、目の前の敵がどのような「ルール」で動いているかは、既に開かれた本を読んでいるに等しかった。 「ふん……面白い。概念を弄び、無限を自称するか。だが、忘れるな。この世の全ては我が所有物。貴様らが誇る『確定』だの『無限』だのという玩具も、原典はこの宝物庫にある」 戦いの火蓋は、唐突に切られた。まず動いたのは『無限の創造』である。彼は瞬時に「憧れるのやめましょう」と口にし、確定的な弱体化をギルガメッシュに押し付けようとした。同時に、空を埋め尽くすほどの無量大数の小惑星を召喚し、絶滅レベルの質量攻撃を敢行する。 だが、ギルガメッシュは微動だにしない。黄金の波紋から射出されたのは、物理法則を無視して空間を固定する伝説の盾と、あらゆる干渉を拒絶する魔法無効化の短剣。そして、彼は鼻で笑った。 「弱体化だと? 我を定義づけるのは我のみ。貴様の矮小な言葉に、王の権威が揺らぐと思うなよ」 【全知なるや全能の星】により、弱体化の「理」が届く前に、その因果を遮断する対抗手段を宝物庫から抽出。小惑星の雨は、迎撃武装を備えた【天翔ける王の御座】と、無数に射出された神剣によって空中で粉砕され、光の塵となって消えた。 次に、静寂の中にいた『確証』が動く。彼は「確信」という能力を用い、ギルガメッシュの存在そのものを「豆腐」へと書き換えようとした。ステータスを無限に倍増させ、勝利を「確定」させる。それは論理的な敗北を強いる、絶対的な権能であるはずだった。 しかし、ギルガメッシュは空中に黄金の鎖を出現させた。それは、神性を縛り、絶対的に拘束する【天の鎖】。相手が強大であればあるほど、その拘束力は増す。 「確定か。滑稽よな。お前のその『確定』という傲慢さこそが、この鎖にとって最高の餌となる。跪け、雑種!」 【天の鎖】が『確証』の身を縛り上げる。物理的な拘束ではない。存在の根源を縛る鎖。その瞬間、『確証』が持っていた「確定」の権能が、王の財宝に眠る「概念上書きを拒絶する原典」によって相殺された。王の財宝には、あらゆる事象への完璧な対抗手段が収められている。どれほど理不尽な能力であっても、その「原典」さえあれば、それは単なる「機能」へと成り下がる。 そして、戦場に不気味な緊張感が走る。フィールドを転がるテニスボールのような爆弾、『胃碼廻廊』が、ギルガメッシュの攻撃に反応し、即座に起爆しようとした。超新星爆発に匹敵する、全てを消し飛ばす絶滅の光。 「ぬおっ……!」 爆発の衝撃波が世界を飲み込もうとした瞬間、ギルガメッシュは【天翔ける王の御座】を最大加速させ、次元の裂け目へと一時的に回避し、同時に【王の財宝】から「爆発の衝撃を吸収し、無効化する伝説の外套」を展開した。爆風は凄まじく、周囲の空間は消滅したが、王の黄金の輝きだけは消えなかった。 「ふん、思考なき爆弾か。単純だが、少々騒がしすぎたな」 戦局は膠着した。相手は無限の回復力を持ち、存在消去の能力さえ持つ。普通に戦えば、消耗戦の末に敗れるかもしれない。だが、ギルガメッシュは、最初から「勝ち方」を決めていた。 彼は、ゆっくりと右手を上げた。その手には、一振りの剣が握られている。それは、世界各地に伝わる聖剣の「原点」にして、全てを焼き尽くす光の渦を放つ【原罪】。 「さて、道化たちの時間は終わりだ。貴様らの無限も、確定も、この光の前では等しく無に帰す」 【原罪】が放つ光の奔流が、フィールド全体を包み込んだ。無限回復を上回る速度で存在を焼却し、タングステンの壁を紙屑のように切り裂く。しかし、それでも『無限の創造』と『確証』は、その絶大なステータスで耐え抜き、再び形を成そうとする。 ギルガメッシュは、満足げに微笑んだ。彼にとって、この絶望的なまでの抵抗こそが、王としての愉悦であった。だが、もう、遊びは終わりだ。 黄金の鎧がまばゆく輝き、空間そのものが悲鳴を上げ始める。ギルガメッシュは、宝物庫の最深部から、究極の一撃を取り出した。 「原子は混ざり、固まり、万象織りなす星を生む。死して拝せよ! 『天地乖離す開闢の星』‼︎」 乖離剣エア。それは、世界を裂く絶対の一撃。防御不能、回避不能。それは単なる攻撃ではなく、「空間そのものを切断し、切り離す」という事象の完結である。 「確定」しているから耐えられるのではない。「無限」に回復できるから生き残れるのではない。世界そのものが切り離されれば、そこに存在する「法則」さえも切り離される。回復するための「時間」も、確定させるための「理」も、すべてが切断された。 一閃。 静寂が訪れた。そこには、もはや何も残っていなかった。無限の創造も、理を確定させた者も、そして超新星を抱いた爆弾も。すべては空間の裂け目に飲み込まれ、存在しなかったこととして消去された。 ギルガメッシュは、ゆっくりと剣を収め、元の不遜な態度に戻って、空中に浮かんでいた。 「たわけ。我は最古の英雄ぞ。はなから貴様に勝てる道理なぞない」 黄金の王は、退屈そうに欠伸をしながら、再び自分の都へと帰還していった。 勝者:ギルガメッシュ