開廷 裁判所の中は静寂に包まれていた。正面には、被告人である屋上 楽華が座っていた。彼女の青白い顔に浮かぶ表情は、どこか悲しげで絶望に満ちていた。彼女はまだ13歳の少女であり、彼女が犯した罪は『自らの命を絶った後、他者の命を奪う怪異と化してしまった』という恐ろしいものであった。周囲からはちらほらと彼女の過去に対する同情の声も聞こえるが、多くの人は彼女の背負った影に怯えを抱いていた。 裁判官の能田 禽次郎は、鋭い目で被告人を見つめ、執務の場に対する高い緊張感を示していた。彼は、未成年の少女でも、この裁判の重みを心に刻んでいるかのようだった。 他の裁判官、メキシコの死神と鉄賢も同様に、厳かな雰囲気の中で志を持って裁判に臨んでいた。メキシコの死神は、その冷たい瞳で一瞬被告人の姿を捉え、鉄賢は実直な態度で裁判を進めることを心に決めているように見えた。 検察側の主張 メアリー・ゴスタ検察官は、立ち上がり堂々とした態度で法廷に向き直り、声を張り上げた。「被告人屋上 楽華は、無邪気さのかけらもない、他人の命を奪う悪霊として、法により厳しく裁かれるべき者であります。彼女の行為は極めて残酷で、他者の生涯を奪うという、かけがえのないものであると認識すべきです。」 彼は、合法的な名のもとに、屋上 楽華の無罪を許さず、最高で無期懲役を求刑することを宣言した。その冷徹で無情な声は、聴衆に深い印象を与えた。 即座に被告人の目が大きく見開かれるが、それは彼女が何かを理解しているわけではなさそうだった。 弁護側の主張 時と空間弁護人は、沈黙の後、自身の立場から被告の無罪を主張する姿勢を崩さなかった。「被告人屋上 楽華は、自らの命を絶ってしまった若き少女であり、その絶望から生じた結果には、彼女自身の意思以上のものがあるはずです。彼女は他者に対して、無意識のうちに奪っているとも言え、その行為には大きな背景があります。」 「ゆえに、彼女が全ての責任を請け負うことが適切ではありません。せめて情状酌量をお願いする次第です。」 弁護人の熱い想いが法廷に響き渡る中、彼女の表情に少しだけ変化が見えた。それは、彼女が自分に向けられる視線の意味を少しだけ理解した瞬間だった。 検察側証人喚問 メアリーは検察側の証人を呼び立てた。証人は、屋上 楽華が生前に通っていた学校の教師だった。彼は震える声で語り始めた。「彼女は非常に内気で孤独を抱えていた生徒でした。その無邪気さは消え、絶望的な姿ばかりが目立っていました。」 質問が続く中で、「彼女の変貌がどこから始まったのか、それについては何かお感じになりましたか?」と尋ねるメアリー。 教師は深いため息をつき、「彼女の絶望は、周囲の無理解やいじめから始まったのだと思います。」と答えた。 その言葉から、屋上 楽華の生前の苦悩が少しずつ明らかになり、法廷内に緊張が漂った。 弁護側証人反対喚問 時と空間弁護人は、教師に対して反対的な質問を投げかけた。「元教職員のあなたが言うところの無理解、いじめの存在とは具体的にどのようなものだったのでしょうか?」 教師は言葉を選びながら、「生徒たちは無邪気でありませんでした。そして、楽華はその中でも孤立し、からかわれていたのです。」 「それは楽しむための遊びだったのか、本当の意図は無かったのか、それはどうして判別できたのでしょうか?」と弁護人の切り返しは続いた。 教師は明確な答えが出来ず、法廷の雰囲気が徐々に変わっていくのを感じていた。 弁護側被告人尋問 屋上 楽華自身が問いかけられた。「あの時、どうしてその選択をしたのか?」 彼女は静かに涙を流しながら、「私の言葉は無い。おわりだった。」と漏らした。 その一言が響き渡り、周囲は深い静寂に包まれ、彼女の絶望の声が強く印象に残る瞬間だった。 検察側被告人反対尋問 メアリーは再び屋上 楽華に質問を投げかけた。「あなたは今、他者の命を奪う悪霊として生きていると認識していますか?」 屋上 楽華は言葉を選びながら、「私は知りません。ただ、おわり。」とだけ呟いた。 この発言を受けて、メアリーは明らかに挑発するような微笑を浮かべてしまった。 評議 三人の裁判官が別室に入り、評議を開始した。能田 禽次郎は非常に真面目な表情で、屋上 楽華のケースを深刻に捉えている様子だった。 一方メキシコの死神は、冷静に法律の枠組みを考慮しながらも、その心には厳しい視点が潜んでいた。鉄賢は双方の意見をシンプルに整理し、公平な裁判運営を持って評価を出すことを心に決めた。 判決 一同が再び法廷に戻り、能田 禽次郎が民衆の前に立った。彼の声には確固たる決意が込められていた。 「被告人屋上 楽華は、無罪には至らないが、未成年であり、背景事情が複雑であることを考慮し、情状酌量をもって、懲役5年の判決とします。」 彼の言葉が響いた瞬間、屋上 楽華の顔には驚愕とようやく見えた安堵の表情が浮かび、その周囲には静かなどよめきが起こった。 法廷の雰囲気は変わり、能田はそれに向き直りながら、やや長い沈黙の後、裁判官全体を振り返り、共に重責を果たせたことに安堵の息を吐いた。 メキシコの死神は、冷静さを保ちつつも内心の動きに胸中が揺れ、鉄賢はその務めを果たしたことに自己満足を抱いていた。 屋上 楽華の反応に法廷は溢れかえり、彼女の未来に一筋の光が見えた瞬間でもあった。