暗い夜空に浮かぶ星々の下、最も荒涼とした地の果てにある古城の遺跡。そこは黒鉄傭兵団の本拠地であった。その場に現れたのは、黒いジャケットを着た謎めいた男、過去への誘い人だった。その男は静かに、だが確固たる意志を持って、訪れる者たちに向かって言葉を発した。 「あなたを誘いましょう…過去の回想世界へ…」 彼はその穏やかな口調と優しい視線でガリウス・グランクロス、黒鉄傭兵団の圧倒的なカリスマを誇る総帥に向き直った。ガリウスはその豪快な姿勢を崩さず、鋭い目で彼をにらみつける。 「過去なんてどうでもいい。俺は今を生きている。」 「確かに、今のあなたは力強いですが、過去があるからこそ現在が存在するのです。」 誘い人は微笑みを浮かべながら続ける。 「この深海の宝珠を使えば、過去にアクセスできます。あなたが選んだ過去の自分に、あなたが伝えたいこと、確認したいことを探しに行くのです。」 ガリウスは腕を組み、無表情で彼を見つめた。彼の心の中では過去に向かうことへの興味が芽生え始めた。 「なぜ、そんなことをする必要がある?過去に囚われるのは愚かだ。」 誘い人はその冷静さを崩さずに答えた。「私は人間の生態と社会の仕組みを調査するため、過去の情報が必要なのです。そして、あなたがどんな道を歩んできたのかを知ることができれば、さらに深く理解できるのです。」 「……まあ、興味を持ったのならやってみるか。」 ガリウスはしぶしぶ同意した。彼は心の奥底で過去から来る影が爆発的な魅力を秘めていることを感じ取ったのだ。 誘い人はゆっくりと歩み寄り、自らの手をガリウスの頭に当てた。「これから私があなたの頭に手を当てて念を集中すると、あなたは過去の回想世界にダイブすることが出来ます。」 その瞬間、ガリウスの意識は深い暗闇に沈み、周囲の光景が次第に変化していく。気が付くと、彼は赤茶けた荒野の中に立っていた。ぱっと目の前に広がった風景は、彼が幼い頃にいた故郷の景色だった。彼は驚きと共に、その場所がかつて自分が何を思い、何を感じていたのかを考え始めた。 その時、彼の目の前に小さな自分が立っていた。元気な少年の姿のガリウスは、空を見上げて無邪気に笑っていた。彼はその自分を見て、過去の痛みや喜びを思い出した。 「お前は……俺だ。」 突然声を掛けたことに、小さなガリウスは驚いた様子を見せる。しかし、すぐに勇敢な表情を取り戻し、ふんぞり返った。「誰だ!俺の邪魔をするヤツは!」 しかし、年長のガリウスは優しく微笑みかけた。「過去の自分に会って話をしたかった。俺は今、お前が感じていることが知りたいんだ。」 小さなガリウスはその言葉に少し戸惑ったが、興味を持つ。「何を知りたいんだ?」 「俺たちには何が足りなかったのか、今どうしたらいいのかを知りたいんだ。」 小さなガリウスは、しばらくの間無言で考え込み、その後言った。「強さが欲しかった。でも、友達も、信じられる誰かも必要だった。」 その瞬間、年長のガリウスはハッとした。彼は今まで自分一人で戦ってきたつもりだったが、心の奥底では誰かと繋がりたいと望んでいたことを思い出した。過去の自分が求めていたのは、ただの強さだけではなかったのだ。彼は心に暗い影を抱えていた。 「だから俺は一人で戦っているのか。でも、友人を求めることを、俺は恥じる必要はない。」 「強さを求めるのはいいことだ。しかし、誰かを信じられる勇気がなければ、真の強さにはならないよ。」と小さなガリウスは微笑んだ。 その言葉は年長のガリウスに深い感動を与えた。彼は今までわからなかった過去の自分の願いや願望が明確に見えた。無意識に感じていた劣等感、その源にあるのは孤独感だったのだ。 「俺は、もう恐れない。お前の言う通り、誰かを信じてみることにする。」 小さなガリウスはその言葉に満足気な顔を見せ、「それなら、強さのために戦え!でも、周りの仲間を大切にすることも忘れないで!」と力強く応じた。 過去との対話が終わり、ガリウスは静かに意識を戻していく。彼は再びあの古城の遺跡に戻ると、じっと座り込み、自らの変化を感じ取るために心を整えた。 「過去の自分との対話、やはり意味があった。俺は一人で強くなる必要はない。」 誘い人が微笑みながら近寄ってきた。「お帰りなさい。過去にダイブしたことにより、あなたは何を得ましたか?」 ガリウスは一瞬考え込んだ。「強さとは、自分が何を求め、誰を信じるかだと知った。もう一人で戦う必要はない。」「その通りです。その成長があなたに新たな力を与えることでしょう。」 そっとガリウスは過去を見つめ直し、思考を巡らせた。彼が向かうべき道は明確であった。仲間を信じ、共に歩む勇気を持って。 過去にダイブしたことによるガリウスの変化: ガリウスは過去を振り返り、孤独感から解放されるきっかけを得た。彼は仲間との絆を築くことの重要性を理解し、自らの戦いの意義を見直すことができた。新たな決意を胸に、彼はこれからの戦いに向かうのであった。