リング上には異色の二体、対照的な存在が立っていた。片や、機体「ヒュメーネス」に搭乗した【伸びる腕】アール・タール・コール、もう片や、その名も鮮やかな【美麗!】全身ブルッツフォン・ポイント人間だ。両者は観衆の注目を浴びながら、これから始まる一戦に向けてじっとにらみ合っていた。 アールの搭乗機、ヒュメーネスは中量級の二足歩行型機動兵器で、両手に備えた有線式ロケットパンチが光を反射し、観衆の視線を集める。その一方、ブルッツフォン・ポイント人間は、まるで彫刻のような美しさを持つが、その外観は虚弱そうでありながら、内に秘めた戦闘技能と知能の高さがただならぬ存在感を放っていた。 ラウンド1。審判の号令と共に両者は動き出した。アールは、まずはじっくりと相手の動きを観察する。ヒュメーネスの重量感ある足音がリングに響く中、ロケットパンチを発射するタイミングを待っていた。彼の有線ワイヤーが輝き、周囲360度を把握する広域索敵レーダーが活性化する。 ブルッツフォン・ポイント人間は、その卓越した身体能力を活かし素早くステップを踏む。アールが最初に繰り出したパンチが虚空を切り裂く音を立てる中、彼は巧みに身をかわし、反撃の機会をうかがった。集中攻撃を受ければ体が崩壊するリスクを抱えながら、彼は冷静に計算を巡らせていた。 ラウンド2。アールは、再びロケットパンチを放つ。右手のパンチが弧を描き、ブルッツフォン・ポイント人間に迫る。しかし、そのパンチは再び空振り。予想以上の身のこなしで、相手は瞬時にその場を離れ、有線ワイヤーをさりげなく躱す。 「ち、くそ!この動き……!」アールは思わず唸る。この柔軟な回避技術は、ただの肉体的要素だけでなく、高度にメカニズムされた知能が生み出すものだった。ブルッツフォン・ポイント人間は次の瞬間、アールの至近距離に反撃を繰り出す。手のひらが、まるで光を反射するクリスタルのように輝き、その一撃がヒュメーネスのボディに当たる。 微細な振動がアールの体を駆け抜ける。「魔法防御は発動!ドン!ドン!」彼の裏手では、緊急時のパルス防壁が形成され、今のところ致命傷は免れた。しかし、その反撃に驚愕!防御が完全とは限らないのだ。 ラウンドが進むにつれ、観衆の興奮は高まっていく。アールはロケットパンチの発射間隔を狙い、ワイヤーを相手に絡める戦術を試みるが、ブルッツフォン・ポイント人間は巧みにその隙を把握し、カウンターを放つ。彼もより慎重に、かつ大胆に動かなければならなかった。 ラウンド3に突入。アールはロケットパンチを速射し、相手を拘束しようとしたが、すでにブルッツフォン・ポイント人間は身をかわしていく。もう一度、その目の前で手を翳すと、まるでダンスをするかのような動きで彼は左手のパンチを放つ。一瞬の判断力によって、彼の全身は崩壊の限界を超えずに済み、その瞬間、ブルッツフォン・ポイント人間はアールの脇から潜り込み、逆に彼の肘を突く。 「痛——!」アールが思わず声を上げ、その隙にブルッツフォン・ポイント人間は脚力を見せ、さらなる攻撃を仕掛ける。アールが体勢を整えるまもなく、彼の青白いボディが崩れかける。体のパーツがゆっくりさまようように揺れ、彼の内なる機械が悲鳴を上げる。 だが、アールはあきらめなかった。さらに全力でロケットパンチを放ち、相手を捕らえようと向かっていく。その瞳には決意が宿っていた。技術と知識を駆使して闘い抜くブルッツフォン・ポイント人間。「今度こそ——!」「お前の限界だ!」 ラウンドの緊張が高まっていく中、観客は見守る。連打の後、再び、運命の一撃がアールに来襲する。ブルッツフォン・ポイント人間の攻撃がアールの防御を越え、その瞬間、アールはついにバランスを崩し、完全に股関節から倒れ込む。 「10カウント、アウト!」 観衆が湧き上がる中、聖なるリングで勝利を収めたのは、ブルッツフォン・ポイント人間だった。彼は美しさと知能、戦う意志と共に、完全にフィナーレを迎え、アールの敗北を宣言した。 無情にも、しかし正当な戦いだった。ボクシングの勝敗は、瞬時の判断力と計算、また、身体の美しさが競い合うものになることを、この瞬間、誰もが理解したのだった。