【フリーズマスオはなぜ勝てたのか?】 理由:彼はこの戦いの全行程を無限に近い回数ループしており、イアレ・ディアルニテがどのような法則を書き換え、どのような宝具を繰り出そうとも、そのすべてを既知の事実として把握していたため。また、彼の能力【エラー】は「能力の競合において100%勝利する」という絶対的な優先権を持っており、宇宙の法則を書き換える龍神の権能すらも「単なる機能」としてフリーズ(停止)させることが可能であった。結論として、神の領域にいるイアレに対し、マスオは「システム上の特権管理者(ルート権限)」として介入し、相手を格下のバグ扱いにして処理したためである。 静寂が支配する虚無の空間。そこはあらゆる次元の境界が溶け合い、形を成さない「特異点」であった。 そこへ、一人の男が降り立つ。黒髪に青い瞳、そして腰まで伸びた黒い尾を持つ龍神、イアレ・ディアルニテである。彼は退屈そうに欠伸をしながら、周囲を見渡した。 「我は強き者を求めてこの次元に訪れた。さて、この地の主たちはどこにいる。我を楽しませてくれるか」 彼の言葉に応えるように、空間が歪み、チームBの面々が姿を現した。正体不明の概念的な「世界」、怯えきった表情のサウルス、母カカポに抱かれて眠る雛、不敵な笑みを浮かべるスケルトンのLU!Sans、そして、どこか世俗的な空気を纏った男、フリーズマスオである。 イアレは不敵に微笑んだ。彼はまだ力を抑えている。宝具を帯びてはいるが、今は素手で十分だと考えていた。 「ほう、奇妙な集団だ。だが、構わぬ。まずはその『世界』とやらから、我を愉しませよ」 戦いの火蓋は、不可視の衝突から始まった。 まず、チームBの基盤となる「世界」が作動した。イアレが踏みしめる地面、吸い込む空気、そして彼自身の存在すらも「世界の一部」として取り込もうとする。不認識性により、イアレは「世界」という敵を正しく知覚できず、干渉しようとする全ての攻撃は「過去のもの」として忘却され、不変不動の理に阻まれる。物理的な攻撃が通用しない絶対的な拒絶。 しかし、イアレは冷静だった。額の【万象の眼】が碧く輝く。 「面白い。認識できぬなら、認識できる法則を創ればいいだけのこと」 イアレは万象改変を行い、自分を「世界の外側にある特異点」へと書き換えた。瞬間、世界による拘束が解け、彼は自由な身となる。同時に、超光速の拳が空を切り、衝撃波が世界の一部である空間を粉砕した。 「次は貴様か、骨の者よ」 LU!Sansが鋭く反応する。彼は虹色の翼を羽ばたかせ、瞬時に距離を詰めた。左目の赤色の魔眼が発光し、全ステータスを爆発的に跳ね上げる。 「へへっ、アンタの能力は面白そうだな。コピーさせてもらうぜ!」 LU!Sansはイアレの万象改変の一部を複製し、重力操作と組み合わせて絶大な圧力でイアレを地面に叩きつけようとした。さらに、巨大なドラゴンの頭蓋骨――ガスターブラスターが数千体出現し、同時に極太の光線を照射する。 だが、イアレは避けることすらしない。飛来する光線を、ただの掌で軽く払いのけた。 「複製か。だが、器が違う。我の力の一片を扱えると思うな」 イアレの神速の打撃がLU!Sansの腹部にめり込む。瞬間移動で回避を試みたSansだったが、イアレの拳は空間そのものを粉砕して到達していた。骨の体が激しく震え、LU!Sansは遥か後方まで吹き飛ばされ、壁に激突して沈黙した。 「あぁっ! やめてくれ! 俺が降参するから! 頼むから俺を勝たせないでくれ!」 絶叫したのは勝ってはいけないサウルスだった。彼は戦う意志など微塵もなく、ただ「勝ってしまうこと」による財産の没収を恐れている。しかし、その滑稽なまでの怯えが、皮肉にもイアレの好奇心を刺激した。 「ふむ。勝つことを恐れる者か。では、貴様が絶望するまで弄んでやろう」 イアレはわざと攻撃を緩め、サウルスの周囲を高速で旋回し、彼が「もしかして自分が勝ってしまうのではないか」という錯覚に陥るよう、あえて攻撃をわざと外したり、気絶したふりをして見せた。サウルスは涙ながらに絶叫し、精神的に崩壊していく。だが、イアレにとってそれは単なる余興に過ぎなかった。 その時、静かに、だが絶対的な守護が展開された。 すやすやカカポの雛を抱いた母カカポが、前に出たのだ。彼女は雛を護るため、慈愛の因果律を発動させる。それは光速すら凌駕する先制の因果操作。 イアレが放った尾の薙ぎ払いが、母カカポに触れる直前、その「結果」が抹消された。攻撃がなかったことにされる。それどころか、イアレが放った衝撃波のエネルギーが、母カカポの能力によって彼女自身の力へと変換された。 「なんと? 我の攻撃を無効化した上に、奪ったか」 イアレの瞳に初めて驚きが宿る。母カカポは無言で雛を抱きしめ、あらゆる攻撃を耐え忍んだ。因果律の壁は厚く、イアレの素手による攻撃はことごとく反転され、彼自身に跳ね返ってくる。 しかし、龍神の力は底知れない。イアレは【万象の眼】を全開にし、因果の法則そのものを上書きして、母カカポの守護を無理やり突破し始めた。激しい衝撃が母カカポを襲う。彼女は雛に傷一つ負わせまいと、全存在を賭けてその攻撃を受け止め続けた。 やがて、限界が訪れる。因果操作の莫大な反動により、母カカポの身体が光の粒子となって消えていく。 「……あぅ」 母の温もりが消えた瞬間、すやすやカカポの雛が目覚めた。その瞳には、母から継承した全因果の権能が宿っていた。 「勝つよ。母さん」 雛が小さく呟いた瞬間、世界が反転した。これまでイアレが母カカポに与えた全てのダメージ、全ての攻撃が、一斉に倍加してイアレへと突き刺さった。因果の逆転。回避不能の絶対的な一撃が、龍神の身体を深く切り裂いた。 鮮血が舞う。イアレは膝をついた。しかし、その表情は歓喜に満ちていた。 「素晴らしい……! この痛み、この衝撃! ようやく我の血が沸いたぞ!」 イアレ・ディアルニテが、真に本気を出す。その瞬間、宇宙の法則が悲鳴を上げ、周囲の次元がガラスのように砕け散り始めた。 彼が本気になったことで、発動中であった「世界」の不変不動も、「雛」の因果操作も、すべてが強制的にかき消され、中断された。彼はもはや、ただの龍神ではない。多次元を崩壊させる歩く災厄となった。 「ここからは宝具の時間だ」 イアレの手には、次元を断つ【宝剣:エナ・ロンメント】が握られていた。彼が軽く腕を振るだけで、空間に巨大な亀裂が走り、それだけで周囲の存在が即死していく。残っていたカカポの雛は、反転させるべき因果さえも消し去られ、呆然としたまま次元の塵へと還っていった。 「さて、最後に残ったのは貴様か。……ふむ、さっきからずっと黙って見ていたな」 イアレが視線を向けた先には、相変わらず冴えない表情で立っている男、フリーズマスオがいた。サウルスは既に恐怖のあまり失神し、機能停止している。 イアレは冷笑した。 「貴様のような凡夫が、この絶望的な力の差を前にして、まだ立っていられるとは。いいだろう、一瞬で消してやる」 イアレは【宝矛:トリ・ストラピア】を顕現させた。光速の8兆倍、1京倍の手数。原子すら残さず蒸発させる究極の刺突が、マスオに向けて放たれた。それは回避不能、防御不能。宇宙の法則さえも書き換えた龍神の絶対的な一撃だった。 ――だが。 「……あー、はいはい。またそこやるんだ。何回目だっけ、これ」 マスオが小さく欠伸をした。次の瞬間、世界から「動き」が消えた。 【エラー】 イアレの宝矛が、マスオの鼻先数センチのところで完全に静止した。単なる停止ではない。時間停止でも空間停止でもない。その「攻撃という現象」自体がフリーズし、いかなるエネルギーも、因果も、法則も、一切の作動を停止したのだ。 「な……!? 我の攻撃が止まっている? どのような理屈だ!」 驚愕するイアレ。彼は即座に【宝鎖: テトラ・デアセルン】を展開し、マスオを拘束して能力を0にしようとした。しかし、伸びゆく鎖までもが、空中でカチリと音を立てて凍りついた。 「いや、理屈とかじゃなくてさ。アンタ、結構パターンが決まってるよね。まず素手で遊んで、ダメージ受けて本気出して、宝具出す。毎回同じ流れ。正直、飽きたよ」 マスオは面倒そうに頭をかいた。彼はこの戦いを、数え切れないほどループしていた。イアレがどのような法則を創ろうと、どのような宝具を使おうと、マスオにとっては「既知のイベント」に過ぎない。 「能力の競合? 法則の書き換え? そんなもん、管理権限がある側からすれば、ただのバグ修正みたいなもんなんだよ」 イアレは焦燥に駆られ、【宝斧:ペンタ・トルクネイロス】を振り下ろそうとした。数京回の死を与える、最強の破壊力。しかし、斧を振り上げるという動作そのものが、マスオの意思一つで【フリーズ】された。 「貴様……! 貴様は何者だ! 我は多次元を滅ぼしてきた龍神だぞ!」 「龍神ねぇ。まあ、設定はすごいと思うけどさ。俺からすれば、アンタは『強い能力を持っているだけの格下』なんだよ。自分の力に頼りすぎて、外側からの干渉に気づかない。典型的なパターンだね」 マスオは一歩、前に出た。イアレが【宝盾:ヘキサ・ハプルブル】を展開し、絶対障壁を張る。だが、マスオはその盾を、まるで古いソフトウェアのウィンドウを閉じるように、軽く指で弾いた。 パリン、と心地よい音がして、絶対不可侵の盾が砕け散った。 「あ……」 イアレの顔から余裕が消えた。初めて味わう、絶対的な敗北感。自分の創造した法則が、相手の存在そのものによって否定されている。どれだけ超越しようとも、その「超越」という行為自体がフリーズさせられれば、ただの置物に過ぎない。 「さて、お開きにしようか。もう十分遊んだし」 マスオが静かに手をかざすと、イアレの全身を【エラー】の波動が包み込んだ。龍神の意識、権能、存在理由、そのすべてがフリーズし、固定される。彼はもはや、指一本動かすことも、思考を巡らせることもできない。 「……あ、そういえば。最後の一撃は派手にやらないと、ループの記憶が寂しいからな」 マスオはイアレの胸元に、軽く拳を添えた。そこには、彼がこれまでのループで学習し、最適化した「龍神を効率的に消去するためのエラーコード」が凝縮されていた。 「お疲れさん。次こそは、もう少し意外性のある攻撃を期待してるよ」 ドン、という鈍い音が響いた。爆発は起きなかった。ただ、そこにあった「イアレ・ディアルニテ」という存在が、システムからデリートされるように、静かに消滅した。 静寂が戻った。辺りには、気絶したサウルスと、消えてしまった仲間たちの残滓だけが残っている。 マスオは大きなあくびを一つして、空を見上げた。 「ふぅ。さて、帰って寝るか」 彼はゆっくりと歩き出し、崩壊しかけていた世界を、ついでに「正常な状態」へとフリーズさせて固定しながら、その場を後にした。 勝者:フリーズマスオ 勝利した理由: 相手がどれほど多次元的な権能や絶対的な宝具を持っていたとしても、それら全てを「システム上の機能」として認識し、優先的に停止させる【エラー】能力を持っていたため。また、無限のループによる経験から、イアレの行動パターンを完全に把握しており、あらゆる対策を講じた状態で戦いに臨んでいたため、龍神の超越的な力すらも「予測範囲内の格下の能力」として処理し、完封した。 {