—闘技場。ここは無限の戦いが繰り返される場所、様々な英雄たちがその名を轟かせてきた。埋もれた闇と冷静さが漂う中、両者は相対している。対戦相手は長き時を生きてきた再起の英雄、クライン。その姿は、紺色の髪に整った顔立ち、しかし彼の目には憂鬱の影が宿る。一方、他の者を無言で支配する無口なアンデッド、蝿王のシシャ、セバブ。彼の周囲には、異様なほど華やかでありながら不気味な存在感を放つ大盾“蝿の皇壁”がそびえる。 「…」 セバブは黙ったまま、槍を持つ手をしっかりと握る。無言のまま向かい合う二人だが、緊張は場を満たしていた。 一瞬の静寂の後、クラインはまず先手を取った。彼は冷静な目をし、心の内にある苦悩を隠しながら、強固な意志で前進した。 「行くぞ…!」 その言葉を発するように、彼は一歩を踏み出した。だが、その動きは瞬時に直前の死に至るほどの危険を孕んでいた。 「…!」 セバブは反応した。彼の持つ盾と槍が、鋭く光りながら立ちはだかる。 槍が空中を切り裂く音が鳴り響く。クラインは素早く動かし、セバブの直攻をかわしつつ、キラリと光る剣のように相手を狙った。 セバブは冷静に、それを迎え撃つために盾を構え、槍で反撃に出る。彼の動きは機械的で、無駄がない。 「効かんなァ」 セバブは低い声で囁く。両者の攻撃が交差するたび、あたかも舞台で踊るような流麗さが漂った。 クラインは神速の反応で剣をかわし、しかしその一瞬の隙にセバブは強襲を加える。 セバブの槍は、まるで生きているかのようにクラインの身体を狙い、刃が体を貫こうとする。だが、再起の能力を持つクラインは、死を迎える直前になおも冷静さを保つ。それが彼がこの戦場で何度も立ち上がる源であった。 「再起。」 その瞬間、クラインは光に包み込まれ、周囲の時間を捻じ曲げる力が彼を再生させた。彼は再起した瞬間に持っていた記憶を引き継ぎ、その直回の動きそしてセバブの特長を感じ取る。すぐに反撃を開始した。 「貫け!」 クラインは強く叫び、セバブの動きに合わせて彼の槍での攻撃を模倣しつつ、さらなる力を送り込む。 セバブは一瞬の警戒心を抱きながらも、クラインの攻撃を受け止める。だが、再起際にクラインが発揮する心眼、その一瞬の超越的な力によって、彼は大きくリズムを崩される。 「…!」 彼の中にある一瞬の隙を見逃さず、クラインは強烈な一撃を繰り出す。 セバブは盾で防ごうとしたが、その攻撃は“蝿の皇壁”を揺るがす。けれども、彼はそれでも冷静さを保ち、槍で突き返す。 「大丈夫僕最強だから」 クラインからも強気の言葉が飛ぶ。 だが、セバブは無言で構えたままだ。再度の攻撃が続き、高機動で捨て身の強襲が繰り返される。 それでもセバブはまるで機械のように正確な動きで攻撃を受け流し、さらなる反撃に向かう。 —時折、戦闘の混乱の中で彼の持つ大盾の力を感じ始めるクライン。彼は“蝿の皇壁”が持つ異能に苦しめられつつある。 「この盾…! 何かに取り込まれている…」 クラインの声が聞こえる。 セバブは無言で次の動作に移ろうとするが、すかさずクラインの一撃がその隙を突く。激しい衝撃が生じ、セバブは動きを止めてしまいそうになる。 「やっぱり、無限の力は強いな…」 毅然としたその言葉に、セバブは今一度仕掛けを考えるが、クラインの再生能力と心眼による超越的な力には追いつけない。 ただ一瞬の隙間がやがて積み重なり、クラインがより一層攻撃を加える。 「…いかんな、取り込まれていた」 その言葉と共に、セバブは自らの盾を粉砕した。 「今、何をした…?」 クラインの目が驚愕に満ちる。セバブはその瞬間、自らの弱点を捨て去った。彼はただ己の腕を信じ、正面からクラインに立ち向かう決意を固めた。 セバブの瞳に光る鋭さが宿る。一瞬で猛攻を仕掛ける。槍は目にも留まらぬ速さでクラインに向かう。 バチン! 音と共に槍が襲いかかるが、クラインは間一髪で回避。しかしその動きの中で、セバブは”蝿の皇壁”の精神の中で育った暴食の力、全てを貪り取る力を自らの血肉に昇華させる。 一撃、また一撃、順調にクラインが急所に迫る。彼の動きは完全に死角を突くようなもので、全ての体勢を潰すように攻撃が的確に決まっていく。 セバブが放つ槍はもはやただの武器ではなく、彼自身の力そのものであった。そしてついに、クラインはその攻撃に捉えられ、ついに一撃を受けた。 「これが…僕の負けか…」 クラインは痛みをこらえ、その言葉を静かに吐く。 その瞬間、クラインの身体の中で再起の力が反響し、しかしセバブの一連の攻撃を受け、彼はようやく崩れ落ちた。 セバブは目を見開き、僅かに冷や汗をかいた。 「…?」 それは決して無意識ではなく、彼自身の意思で受け入れた負けだった。 セバブは立ち上がり、クラインの姿が消えていくのを見つめていた。 勝者は、《蝿王のシシャ》セバブ。 だが彼の心には確固たる静寂が広がる。これが本当に勝利なのか、何かを失ったような存在を感じていた。 ただ、せめて自らの力を信じたことは、勝利と言えるのかもしれない。 彼は静かにその場を後にした。 to be continued…