世界最大の怪異対処組織、ザグンダリ総司令が率いるザグヱラ機関にとって、今回の標的たちは「排除すべき不確定要素」に過ぎなかった。たとえ相手が神話の体現者であろうと、進化する怪物であろうと、あるいは物理的な速度の極致であろうと、ザグヱラ機関の盤上において、彼らの敗北は既に決定事項であった。 戦場に降り立ったのは、S級部隊およびSS部隊の精鋭たち。後方では議長ライが神々しいオーラを放ち、味方全員に「絶対的な不死」を付与し、同時に敵対者の存在感を希薄にさせ、あらゆる行動をキャンセルさせる弱体化の波動を絶え間なく放っていた。 予知者ミルエが静かに告げる。「未来の全ての枝は、一点に収束しました。彼らに勝ち筋は、一つも存在しません」 軍師ラッグが冷徹に指示を飛ばす。「作戦通りに。法務官ジアイ、準備はいいか」 法務官ジアイは、不敵な笑みを浮かべて数々の法具を提示した。 「ええ。光陀蒼真の『全知』を封じる【真理遮断の枷】、誰が為の理想の『コピー』を拒絶する【唯一無二の刻印】、園の『不干渉』を強制解除し結晶化を逆転させる【因果逆転の楔】、そして鉛の『速度』をゼロに固定する【静止世界の砂時計】。全て準備済みです」 戦いは、開始と同時に終わっていた。 まず、【天才にして天災の魔術師】光陀蒼真が片眼鏡を光らせ、最適解を導き出そうとした瞬間、ジアイが放った【真理遮断の枷】が彼の精神を拘束した。オーディンの叡智はザグヱラ機関が予め用意した「全知を超える情報の飽和」により機能不全に陥り、召喚しようとした神話の原典は、ライの行動キャンセル能力によって、顕現する前に霧散した。 「……計算外、ということか。だが、この絶望感こそが最高に――」 言い切る前に、SS部隊の超エリートが放った「想像実現術」により、光陀の肉体は原子レベルで分解された。 【光陀蒼真:死亡】 次に、相手の理想を写し取る『誰が為の理想』が、SS部隊の最強能力をコピーしようと試みた。しかし、ジアイの【唯一無二の刻印】が発動。コピー能力そのものが「所有権のない模倣」として定義され、システム的に拒絶された。さらに進化を試みようとしたが、ライの弱体化オーラが進化の速度を上回る速度で退化を強制させる。 「私の……理想が……消えていく……」 絶望に染まったその姿を、SS部隊の一員が「時空封印術」で永遠の静止へと追いやり、そのまま消滅させた。 【誰が為の理想:死亡】 さらに、[進化中]園が「勝晶」による絶対勝利の理を展開し、不可侵の領域を築こうとした。しかし、軍師ラッグが想定していたのは、まさにその「理」の構築である。ジアイの【因果逆転の楔】が園の不干渉能力を強制解除し、彼自身の得意とするビスマス結晶化を自分自身にフィードバックさせた。 「……あ……」 口数少なき少年は、自らが創り出した結晶の中に閉じ込められ、内部から爆発させる「下天上地の星死」を逆利用され、塵一つ残さず消滅した。 【園:死亡】 最後に残ったのは、[対上格機関隊長序列2位]鉛であった。彼は超人的な脚力で風となり、弾丸の雨を降らせて突破口を開こうとした。しかし、そこには既に【静止世界の砂時計】が展開されていた。相対的な速度が意味をなさない領域。最高速度を誇る鉛にとって、それは地獄よりも残酷な静寂であった。 「な……体が、動か……」 足が止まった瞬間、SS部隊の精鋭たちが「無限万能術」による一撃を叩き込む。物理的な防御力や状態異常無効など、概念的な消滅の前には無意味であった。鉛の身体は、彼が放とうとした弾丸よりも速く、跡形もなく砕け散った。 【鉛:死亡】 戦場には静寂が戻った。ザグヱラ機関に一人、負傷者すら出なかった。 議長ライが満足げに頷き、軍師ラッグが手帳を閉じる。予知者ミルエの視た未来通り、想定外の事態は一度として起きなかった。 この完璧な殲滅劇を完遂した法務官ジアイには、総司令グンダリより新たな称号が授けられた。 【万象の断罪者】法務官ジアイ 彼は次なる「討伐対象」の名簿を眺めながら、静かに微笑んでいた。