荒野が、絶え間ない爆風と衝撃波にさらされていた。 赤茶けた大地がひび割れ、空は不気味な紫色の雲に覆われている。ここは次元の境界線、あるいは世界の澱みが溜まる特異点。ある目的を抱いてこの地に赴いた一人の男――ベジータ(MAD)は、想定外の事態に苛立っていた。 「チッ……! どこの馬の骨だ、この雑魚どもは!」 逆立つ金髪をなびかせ、CC製の戦闘服に身を包んだ彼は、四方八方から襲いかかってくる正体不明の襲撃者たちを、鋭い蹴りと気弾でなぎ倒していた。その動きは洗練されており、王子の誇りにふさわしい猛攻だ。しかし、その表情にはわずかな強張りと、どこか「自分より強い奴がいたらどうしよう」という、彼特有の臆病さが滲んでいた。 だが、その不安を裏付けるかのように、背後から巨大なエネルギー弾が襲いかかる。気づいた時には遅い。ベジータ(MAD)が反射的に身構えたその瞬間――。 ドォォォォォォン!! 鼓膜を突き破らんばかりの轟音と共に、襲撃者の攻撃が完全に消滅した。同時に、赤い閃光が空を切り裂き、襲撃者の胸元に強烈な一撃が突き刺さる。 「……ッ!?」 ベジータ(MAD)が驚愕して視線を向けた先にいたのは、自分と瓜二つの、しかし決定的に異なる「もう一人の自分」だった。 赤髪に赤瞳。胸には禍々しい結晶が埋め込まれ、身体からは黒く濁った赤いオーラが立ち上っている。その眼光は冷酷で、粗暴なまでの威圧感を放っていた。ベジータ(ゼノ2)である。 二人の王子は、互いに数歩の距離を置いて静止した。同時に、鋭い視線で相手を品定めする。 「……何だ、貴様は。この俺に似せて、不気味な色に染まってやがるな」 ベジータ(MAD)が警戒しながら口を開く。その声は力強いが、わずかに震えていた。対する赤髪の王子、ベジータ(ゼノ2)は、鼻で笑うように口角を上げた。 「フン……。鏡を見ている気分だぜ。だが、その甘っちょろい面構え……。サイヤ人の王子を自称するには、あまりに情けない気配を纏っているな」 「なっ……! 貴様、今なんと言った!!」 ベジータ(MAD)が激昂し、拳を握りしめる。しかし、ゼノ2の放つ、神次元の破壊的なオーラに本能的な恐怖を感じ、一歩後ずさりした。その様子を見たゼノ2は、さらに冷ややかな視線を送る。 「臆病風に吹かれたか。笑わせるな。カカロットという男に追い抜かれ、情けなく足掻く俺の成れの果てか。反吐が出る」 「カ、カカロット……!? なぜ貴様がその名を……! いや、それよりも先に、その不吉なオーラはどういうことだ! 貴様、正気か!」 互いに探り合い、殺気と不信感が火花を散らす。だが、その緊張状態を暴力的に切り裂く「何か」が、上空から舞い降りた。 ――ズゥゥゥゥン!! 大地が激しく陥没し、凄まじい衝撃波が周囲の岩石を粉砕する。煙の中から現れたのは、この地の特異点によって生み出された「次元の捕食者」であった。身長は数メートルに及び、全身が結晶のような硬質な甲殻で覆われている。その瞳には無数の銀河が渦巻き、放たれるプレッシャーだけで大気が悲鳴を上げていた。 「……ッ! この気……! まさか、とんでもない化け物だぞ」 ベジータ(MAD)が冷や汗を流しながら後ずさりする。一方のベジータ(ゼノ2)は、不敵な笑みを浮かべ、拳を鳴らした。 「ふん。どうやらお互いに、こいつを狙ってここに来たようだな」 「……ふん。認めんが、今は貴様のような不気味な奴と組むよりは、あの大化け物を先に片付ける方が効率がいい」 「いいだろう。足だけは引っ張るなよ、金髪」 「誰が足を引きずるか! 行くぞ!!」 二人の王子は、共通の敵に向けて同時に飛び出した。 先制攻撃権は、金髪の王子にある。ベジータ(MAD)が電光石火の速さで捕食者の懐に潜り込んだ。 「オレは貴様を絶対に許さん!!」 鋭い右ストレートが捕食者の顔面に突き刺さり、そのまま地面に叩きつける。地面に激突した敵に、雨あられと打ち込みを浴びせる連続攻撃。衝撃波が地表を盛り上げ、土煙が舞い上がる。だが、捕食者の甲殻は極めて強固であり、決定打には至らない。 「チッ、硬いな! だらららーーッ!!」 至近距離から高速で気弾を連射し、敵を牽制して距離を取る。その隙を逃さず、赤髪の王子が空から急降下した。 「どけ! 次はオレの番だ! 喰らえ!!」 ゼノ2が放った赤いエネルギー弾が、捕食者の周囲を包囲するように炸裂する。爆発の衝撃で敵が怯んだ瞬間、ゼノ2は黒いオーラを纏った拳で、正拳突きを叩き込んだ。神次元の破壊力が宿った一撃は、捕食者の甲殻に深い亀裂を刻み、同時に敵のエネルギーを強引に奪い去る「弱体化」の効果を付与する。 「ぐあぁっ!!」 捕食者が咆哮し、触手のような腕を激しく振り回した。ベジータ(MAD)がその攻撃を間一髪で回避し、空中で身を翻す。 「フン…かあっ!」 敵の打撃を腕一本で受け止め、そのまま回転を加えた強烈な回し蹴りで敵を遥か彼方まで吹き飛ばした。その連携に、ゼノ2がわずかに感心したように呟く。 「ふん……。臆病者の割に、基礎的な格闘技術だけは生きているようだな」 「うるさい! 貴様こそ、力押しばかりで品がないぞ!」 だが、戦況はここから悪化する。捕食者が自身の殻をパキパキと脱皮させ、さらなる進化を遂げたのだ。放たれる気圧が数倍に跳ね上がり、二人の王子を押し潰そうとする。 「……っ!! この圧、耐えられんか!?」 ベジータ(MAD)の顔に、いつもの「ヘタレ」気味な焦燥感が浮かぶ。足が震え、逃げ出したい衝動に駆られる。しかし、その隣に立つゼノ2の、一切の迷いなき冷酷な瞳を見たとき、彼の心に火がついた。 「……クソッ! 俺が……この俺が、こんなところで、この不気味な自分にだけ頼るなど、プライドが許さん!!」 ベジータ(MAD)が、天に向かって叫び声を上げた。黄金のオーラが激しく渦巻き、さらにその上から、透明感のある神聖な輝きが彼を包み込む。 「オレはオレのやり方で貴様を倒す!!」 眩い光と共に、髪が淡い水色へ、瞳が透き通るような水色へと変化する。超サイヤ人ゴッドSSへの覚醒。爆発的な戦闘力の急上昇に、周囲の地形が消滅し、巨大なクレーターが形成された。 「ほう……。神の気か。まあ、この程度やって当然だな」 ゼノ2は動じない。むしろ、その冷酷な笑みを深め、自身の黒いオーラをさらに濃密に凝縮させた。彼にとって、このレベルの力は日常の範疇に過ぎない。 「さて、そろそろ終わらせるか。金髪、貴様が道を切り開け。トドメはオレが刺す」 「……ふん! 誰が道を切り開いてやるというのだ! 同時に叩き込むだけだ!」 二人の王子は、同時に最大出力のエネルギーを溜め始めた。一方は神聖な水色の光、もう一方は禍々しい紅黒の闇。 ベジータ(MAD)が、限界まで気を高め、両手を前方へ突き出す。 「これがオレの”誇り”だ! ギャリック砲ーーーッ!!」 眩い黄金と水色の奔流が、捕食者を真っ向から飲み込む。凄まじい爆発が起き、捕食者の巨体が光の海に包まれて吹き飛ばされる。しかし、捕食者はその強靭な生命力で、爆炎の中から強引に這い上がろうとする。 そこへ、ゼノ2の絶望的な一撃が降り注いだ。 「喰らえ……!! ギャリック砲ーーッ!!」 放たれたのは、赤黒い破壊の奔流。MADのギャリック砲で弱った敵に、さらに深い絶望を刻み込む一撃。着弾した瞬間、エネルギーが内側から膨れ上がり、捕食者の肉体を内部から粉砕し、飲み込んでいく。 さらにゼノ2は止まらない。空中で敵を捉え、そのまま地面へと猛烈な勢いで叩きつけた。 「貴様は……俺が倒す!!」 地面にめり込んだ捕食者に対し、ゼノ2は両手から極太のエネルギー波を至近距離で放射。逃げ場のない絶望的な爆轟が起こり、最後は、その煙の中から突き出た超強力な拳が、敵の核を完全に粉砕した。 ドガァァァァァァン!!!!! 辺り一面が白い閃光に包まれ、静寂が訪れる。そこには、跡形もなく消し飛ばされた敵の残骸と、肩を上下させて呼吸を整える二人の王子の姿があった。 ベジータ(MAD)は、神の気を解除し、元の金髪に戻ると、どさりと地面に座り込んだ。緊張が解け、急激に疲れと「やっぱり怖かった」という安堵感が彼を襲っていた。 「……ふぅ。なんと、死ぬかと思ったぞ……」 ゼノ2は、そんな彼を冷めた目で見下ろしていたが、ふっと鼻で笑った。 「……ふん。まあ、最低限の役立ちはしたようだな。金髪」 「……貴様、最後まで口が悪いな。だが、まあいい。この貸しは、いつか必ず返してやる」 「待っているぜ。次に出会う時は、どちらが本物の『王子』か、白黒つけてやる」 ゼノ2はそう言い捨てると、黒いオーラと共に次元の裂け目へと消えていった。 一人残されたベジータ(MAD)は、静まり返った荒野を見渡し、小さく呟いた。 「……全く。あんな恐ろしい自分とは、二度と組みたくないもんだな」 そう言いながらも、彼の口元には、どこか誇らしげな、王子の笑みが浮かんでいた。