静寂が支配する、次元の狭間。そこは空も地も定義されず、ただ無限に広がる虚無の白が世界を塗り潰していた。その中心に、一人の男が立っていた。黒い髪に、深い青色の瞳。そして腰からは、龍の象徴たる黒い尾が静かに揺れている。 【多次元の放浪者】イアレ・ディアルニテ。 彼は退屈そうに、自身の爪先を見つめていた。彼にとって、次元を滅ぼすことは呼吸をするよりも容易い日常であり、もはやこの多次元世界に彼を満足させる強者は残されていないように思えた。 だが、彼の前に現れた「チームB」という奇妙な集団は、彼の興味を僅かに惹いた。 「ゆっくり霊夢だよ」 ぷにぷにとした、白いまんじゅうのような体に巫女の衣装を纏った奇妙な生物。その横には、野生味溢れる赤い髪の女、覇王レオルグニフが不敵な笑みを浮かべて立っている。さらに、銀色の短髪をなびかせた青年、獅子谷玲王が構えを取り、そして――足元には、一見すると小さな虫のような、しかし底知れぬ飢餓感を漂わせた存在、ホウソクムシが蠢いていた。 「クハハハ!貴様がこの世界の頂点か!いいぜ、もっと私を滾らせてみろ!!」 レオルグニフが咆哮する。その瞬間、空間を震わせるほどの【覇王覇気】が放たれ、周囲の次元すらも圧し潰さんとする重圧がイアレを襲った。だが、イアレは眉一つ動かさない。彼にとって、そのような物理的な重圧など、微風にも等しい。 「……ほう。面白い。まずは貴様らから相手をしようか」 イアレは静かに構えを取った。現在は《1》の状態。力を最大限に抑え、ただの「人間」として戦う基本形態である。 第一局面:理外の激突 先陣を切ったのは獅子谷玲王だった。彼は【星転拳法】による爆発的な踏み込みで、一瞬にしてイアレの懐に潜り込む。全身に巡らされたエネルギーが光を放ち、鋭い正拳突きがイアレの胸元を狙った。 「はああッ!!」 空気を切り裂く衝撃波。しかし、イアレはそれを避けることさえせず、ただ軽く片手を挙げた。パチン、という軽い音が響く。玲王の拳は、イアレの掌に完全に受け止められていた。 「速いな。だが、不十分だ」 「なっ……!? 読み切られていたのか!」 驚愕する玲王の横から、今度はレオルグニフが猛襲を仕掛ける。数値化不能な身体能力による、理外の暴力。彼女の拳が次元の壁を叩き割り、イアレの側頭部に向けて振り下ろされた。 ドォォォォォン!! 衝撃波が周囲の虚無を吹き飛ばし、白い世界に巨大なクレーターのような亀裂が走る。しかし、煙の中から現れたイアレは、指先で髪をかき上げるだけだった。 「クハハハ! 効いたか!? 効いたんだろうな!!」 「……いや。少しだけ、心地よい衝撃だった」 イアレは微笑んでいた。彼はまだ《1》の状態であり、攻撃を受けてはいるが、そのダメージは彼の本質に届いていない。だが、チームBの連携はそこからだった。 「いまだよ、霊夢!」 どこからともなく現れたゆっくり魔理沙が叫ぶ。すると、ゆっくり霊夢が驚異的な弾力をもって跳ね上がり、全力の「体当たり」を敢行した。 「いくよー!」 ぷにゅっ、という軽い音と共に、霊夢がイアレの腹部に激突する。一見、滑稽な攻撃。しかし、彼女の弾力ある身体は衝撃を全て吸収し、同時に不可思議なベクトルで力を増幅させていた。 同時に、足元のホウソクムシが動いた。この虫は【捕食者の利】を持つ。相手が強ければ強いほど、その存在を「餌」として認識し、あらゆる能力を無視して捕食しようとする。 ホウソクムシは、イアレが展開していた無意識の防御壁を「素通り」し、彼の足首に噛み付いた。ガリッ、という音と共に、イアレの存在の一部が捕食され始める。 「……! これは面白いな。私の『存在』を喰らうか」 イアレは初めて、わずかに目を見開いた。ホウソクムシの能力は法則を無視し、超越者の能力さえも餌とする。レオルグニフの暴力、玲王の技、霊夢の不可思議な弾力、そしてホウソクムシの捕食。四者の波状攻撃が、ついにイアレの「抑制」を揺さぶり始めた。 第二局面:覚醒する龍神《2》 「……十分だ。少しだけ、本気を出そうか」 イアレの瞳に、碧い光が宿る。その瞬間、世界の空気が一変した。 《2》への移行。 ドォォォォォン!!! 爆発的なプレッシャーが四方八方に放出され、宇宙の法則が悲鳴を上げる。空間がガラスのようにひび割れ、重力は方向を失い、時間が不規則に脈打ち始めた。チームBが展開していた連携、そして彼らが維持していた「能力」が、その圧倒的な圧の前にかき消されていく。 「なっ……!? 私の覇気が……消えた!?」 レオルグニフが愕然とする。彼女の誇る身体能力、能力を中和する特性が、イアレから放たれる「上位の法則」によって強制的に上書きされたのだ。 「ここで終わりだ」 イアレの手には、いつの間にか一振りの剣が握られていた。【宝剣:エナ・ロンメント】。 彼は静かに剣を振るった。ただの一閃。しかしそれは、物理的な斬撃ではなかった。因果を断ち、次元を裂く一撃。 「ぎゃああああ!!」 最前線にいた獅子谷玲王が叫ぶ。彼は回避しようとしたが、斬撃は「彼が回避したという結果」さえも断ち切っていた。空間ごと切り裂かれた玲王の身体から血が噴き出し、彼は戦う術を失い、次元の彼方へと弾き飛ばされた。 【脱落:獅子谷 玲王】 「玲王! この野郎、やりやがったな!!」 激昂したレオルグニフが飛びかかる。しかし、イアレは冷淡に【宝鎖: テトラ・デアセルン】を召喚した。次元を超えて伸びる鎖が、光速を超えた速度でレオルグニフを拘束する。 「離せ! この鎖、何なのよ!!」 「無駄だ。その鎖に触れた瞬間、貴様の身体能力は『0』になった」 覇王としての力を失い、ただの女へと戻ったレオルグニフ。絶望に染まる彼女の前に、イアレは【宝斧:ペンタ・トルクネイロス】を構えた。一振りすれば、数京回の死を経験させ、輪廻からも消し去る絶対の破壊兵器。 「あ……」 鈍い音が響いた。レオルグニフの存在は、一瞬にして粒子すら残らず消滅し、魂ごと無へと還った。 【脱落:覇王 レオルグニフ】 第三局面:絶望の捕食者と龍神 残ったのは、ゆっくり霊夢とホウソクムシ。そして、解説役の魔理沙である。 「大変だぜ霊夢! イアレの力が上がりすぎて、もうこっちの計算が合わないぜ!」 「ええー!? どういうことなのよー!」 霊夢が慌てて逃げ回る。しかし、イアレは【宝弓:ジ・ペネーク】を取り出した。超光速の矢。時間も空間も削り取り、決して止まらない絶望の光。 シュンッ!! 「あーっ!!」 霊夢の弾力をもってしても、存在ごと貫く矢を避けることはできなかった。矢は彼女の身体を正確に射抜き、その不可思議な耐久力を貫通して彼女を虚無の壁に縫い付けた。霊夢はそのまま意識を失い、戦闘不能となった。 【脱落:ゆっくり霊夢】 そして、最後に残ったのはホウソクムシだった。この虫は、イアレが強くなればなるほど、より激しく、より獰猛に彼を「餌」として欲した。ホウソクムシは【羽化】し、真の姿を現す。次元を喰らう巨大な顎が、イアレの全身を飲み込もうと襲いかかった。 「法則無視の捕食か。面白い。だが、その『飢え』さえも、私の支配下にある」 イアレは静かに、最後の一段階へと移行した。 《3》 背中から、純白の翼が展開される。【宝翼:オクタ・エテリューゲ】。 その翼が広がった瞬間、世界から「音」も「光」も消えた。ただ、絶対的な「個」としての王がそこに君臨していた。多次元、並行世界を瞬時に移動し、あらゆる干渉を拒絶する究極の防護。 さらに、彼の周囲に黄金の輪が浮かび上がる。【宝輪:ミデン・ドミナムニス】。 「【宝輪】発動。貴様の『捕食』という能力、そして『法則を無視する』という特権……全てを奪い、我が力としよう」 ホウソクムシが絶望に染まったように身悶えた。彼が持っていた「捕食者の利」さえも、イアレの宝輪によって吸い出され、進化し、イアレ自身の能力へと組み込まれていく。 いまや、イアレは森羅万象のすべてを理解し、支配する神へと完全に昇華していた。 「存在すること自体が、我への屈服となる。消えろ」 イアレが軽く指を鳴らす。すると、ホウソクムシは自分の能力を奪われただけでなく、イアレが新しく創り出した「消滅の法則」に飲み込まれ、悲鳴を上げる暇もなく、跡形もなく消し飛ばされた。 【脱落:ホウソクムシ】 終幕 静寂が戻った。チームBの全員が消え、あるいは脱落し、そこにはただ一人、黒い尾を持つ龍神だけが立っていた。 「……ふむ。少しは楽しめた。特にあの虫の捕食能力は、私のコレクションに加える価値があったな」 イアレは再び《1》の状態に戻り、退屈そうな表情で空を見上げた。彼にとって、この戦いは単なる暇つぶしに過ぎなかったのかもしれない。しかし、彼は確信していた。多次元のどこかに、まだ自分を絶望させてくれる強者がいることを。 彼は静かに歩き出した。次なる次元へ。さらなる強さを求め、永遠の旅を続けるために。 * 【勝者:イアレ・ディアルニテ】 【勝利理由】 チームBは、個々の能力(レオルグニフの理外の暴力、ホウソクムシの法則無視の捕食など)においては脅威であったが、イアレの段階的な覚醒(《1》→《2》→《3》)に伴うインフレーションに追いつくことができなかった。特に《2》以降の宝具による因果・次元の切断および、《3》における【宝輪】による能力奪取と【宝翼】による完全な干渉拒絶が決定打となり、チームBのあらゆる対抗手段を無効化し、完全に圧倒したため。