舞台設定:『ラスト・ボーダー・シティ』 (映画『マッドマックス』のような荒廃した世界観と、『ジョン・ウィック』のような絶え間ないアクション、そして『ロボコップ』のような重厚なメカニック描写をミックスした舞台。かつての帝都の残骸がそびえ立ち、錆びついた鉄屑の山が地平線まで続く死の街である) --- 第一章:邂逅の咆哮 空は濁った鉛色。絶え間なく降り注ぐ酸性雨が、錆びついた鉄の街を黒く塗り潰していた。かつての帝国国境線、今はただの瓦礫の山と化した関所の門前に、その男は立っていた。 ジャック・ドゥ。ボロボロの英軍野戦服に身を包み、斜めに被ったベレー帽からは雨水が滴っている。彼は目の前に立つ巨大な鉄の塊を見上げ、狂気に満ちた笑みを浮かべた。 「おいおい、見ろよ! どっからどう見ても立派な歩哨じゃないか! 貴様、まだここに配属されてるのか? 休暇申請は出したか、兵士よ!」 ジャックの瞳には、目の前の光景が「第二次世界大戦中の戦場」に見えている。彼にとって、目の前の怪物は敵軍の最新鋭兵器であり、同時に敬意を払うべき「軍人」だった。 対するは、全高3.5メートルの黒鉄の巨人、AUT。琥珀色の単眼レンズがジィィ……と音を立ててジャックをフォーカスする。内部の演算回路が高速で回転し、目の前の生物——いや、バイオロボットであることを検知した。 『――個体識別不能。市民権保持の形跡なし。判定:侵入者。帝国国境線への接近を禁ず。直ちに撤退せよ』 機械的な声が空気を震わせる。AUTにとって、この任務は絶対である。たとえ国が滅び、命令を下した主がいなくとも、その規律だけが彼という存在の核(コア)だった。 「撤退だぁ? 笑わせるな! 俺は今、最前線に突撃しに来たんだよ! 最高の戦場をくれてありがとうな!」 ジャックは背負っていたバグパイプを地面に叩きつけ、激しい旋律を奏でる。それは彼にとっての出撃信号だった。 第二章:鋼鉄の雨と不屈の舞 先制攻撃を仕掛けたのはAUTだった。右腕に装備された「破式雷撃砲」が、凄まじい蒸気と共に唸りを上げる。 ドガァァァン!! 琥珀色の閃光が空気を切り裂き、ジャックの足元を直撃した。爆風が巻き上がり、土砂と鉄屑が舞う。しかし、ジャックは空中で身をよじり、驚異的な身体能力で爆心地から脱出した。 (クソッ! いきなり最大火力かよ! まったく、最近の新兵は気が短いな! だが、これがいいんだよ、この緊張感こそが戦場だ!) ジャックは着地と同時に、愛用のステン短機関銃を乱射する。タタタタッ! と乾いた音が響くが、弾丸はAUTが展開した「帝国用大盾」に弾かれ、火花を散らすのみだ。 『攻撃確認。敵対行動へと移行。迎撃モード、起動』 AUTの脚部から超高圧の蒸気が噴射される。「煙型加速器」による爆発的な加速。3.5メートルの巨体が、信じられない速度でジャックの間合いに潜り込んだ。 「おっと!」 ジャックは反射的に大剣を突き出し、盾の側面を弾く。ガギィィィン! と激しい金属音が響き、ジャックの腕に激痛が走った。バイオロボットとしての強靭な肉体を持ってしても、この重量級の衝撃は無視できない。 (ぐっ……重い! 象に踏まれた気分だぜ。だが、こいつの動きにはリズムがある。規律正しすぎるんだよ、教科書通りだ!) ジャックはわざと懐に飛び込み、軍隊格闘術による鋭い打撃をAUTの脚部関節に叩き込む。金属と肉がぶつかり合う鈍い音が連続して響く。一撃一撃に込められた狂気的なパワーが、AUTの装甲をわずかに歪ませた。 『警告:外装ダメージ検知。だが、許容範囲内である。貴殿の戦術は非合理的だが、技術は認めよう』 AUTの単眼が怪しく光る。同時に、右腕から「射出式鉤爪」が射出された。電撃を帯びたワイヤーがジャックの右腕を捉える。 「げっ!?」 ガチィィィ! と強烈な電撃がジャックの全身を駆け抜けた。バイオ回路がショートし、視界が白くなる。そのまま強引に引き寄せられ、AUTの巨大な拳がジャックの腹部にめり込んだ。 ズドォォォン!! ジャックの体は後方に吹き飛び、数メートル先のコンクリート壁に激突し、深い穴を開けた。 第三章:策略と再生の反撃 静寂が訪れる。土煙の中で、ジャックは意識を朦朧とさせながら自問自答していた。 (……あー、痛い。マジで痛い。肋骨が数本逝ったな。だが……最高だ。この絶望感、この絶望こそが俺を突き動かす。俺は死なない。死ぬまで戦うのが俺の仕事だからな) ジャックの身体にわずかな再生能力が働き、傷口がじわりと塞がっていく。彼はゆっくりと立ち上がり、口端から血(オイルの混じった赤い液体)を拭った。そして、不敵に笑う。 「おい、鉄クズ。お前の盾は完璧だ。だが、完璧すぎる奴は、想定外に弱いもんだぜ?」 ジャックは懐から、どこで手に入れたのか、古びた煙幕弾をいくつか取り出した。そして、それを自らの足元に投げ捨てる。 真っ白な煙が辺りを包み込む。視界を奪われたAUTは、単眼のセンサーを赤外線モードに切り替えた。しかし、ジャックはあえて煙の中で「音」を消して移動し、さらにバグパイプを遠隔で作動させ、不協和音を鳴らして音響的な撹乱を仕掛けた。 (今だ!) 煙の中から、ジャックが飛び出した。武器は短機関銃ではない。弓矢だ。彼は特製の電磁矢を、AUTの脚部の接続部に正確に放った。 パシュッ! 矢は装甲の隙間、蒸気機関の排気口に深く突き刺さった。直後、ジャックはあらかじめ仕掛けていた小型爆弾を起爆させる。 ドカン!! 「ガッ……!?」 AUTの脚部から蒸気が激しく漏れ出し、バランスが崩れる。巨体がゆっくりと膝をついた。完璧な防御を誇った盾が、一瞬だけ地面に接し、隙が生まれた。 「ここだぁぁぁ!!」 ジャックは大剣を両手で握りしめ、全力で跳躍した。空中で身体を捻り、遠心力を乗せた一撃が、AUTの肩口の装甲に深く突き刺さる。 キィィィィン!! 火花が激しく散り、AUTの装甲がひしゃげる。しかし、AUTは崩れなかった。むしろ、その衝撃を利用してジャックを抱え込み、地面に叩きつけた。 第四章:魂の共鳴、そして握手へ 互いにボロボロの状態だった。ジャックの服は破れ、全身に打撲と火傷を負っている。AUTの黒い装甲は至る所でひしゃげ、琥珀色のレンズにはひびが入っていた。 雨が止み、雲の間から薄い光が差し込む。 ジャックは地面に大の字になり、大げさにため息をついた。 「はぁ……はぁ……。お前、いい根性してるな。俺が今まで戦ったどこのどいつよりも、真面目な軍人だぜ」 AUTは静かに立ち上がり、武器を収めた。その単眼が、静かにジャックを見つめる。 『……分析完了。貴殿の行動には一貫した戦術的意図はなく、ただ狂気と勇気のみが突き動かしていた。しかし、その「不屈」という精神構造は、かつての帝国騎士たちが持っていたものに似ている』 「騎士だぁ? 褒め言葉として受け取っておいてやるよ」 AUTはゆっくりと、巨大な右手を差し出した。それは攻撃のためではなく、明確な「親愛」と「敬意」の意図を持ったジェスチャーだった。 『任務は継続される。だが、貴殿のような戦士を敵として排除することは、帝国にとっても損失である。一時的な休戦を提案する。……兵士よ』 ジャックは目を見開き、それから愉快そうに笑った。彼はよろよろと立ち上がり、泥にまみれた自分の手を、AUTの巨大な指先に重ねた。 「いいぜ。ちょうど腹が減ったところだ。俺の隠し持ってるサンドイッチ、半分分けてやるよ。もちろん、お前は食えないだろうがな!」 錆びついた鉄の巨人と、狂気のバイオロボット。相反する二人の軍人が、静まり返った国境線で固い握手を交わした。 --- 【結末】 勝者:引き分け(互いの精神的勝利) 目撃者の感想: (遠くの瓦礫から戦いを見ていたジャンカーズの構成員の一人) 「……おい、見たかよ。あのジャックさんが、あの化け物と握手してたぜ。どっちが勝ったのかさっぱり分からなかったが、あんなに激しい喧嘩の後に仲良くなるなんて、やっぱりあの人たちはどっか壊れてるな。まあ、いいんじゃねえか。死ななくて済んだんだからよ」