廃ビルは、全5階建ての構造となっていた。それぞれのフロアには特異な作りがあり、戦略的に戦闘を行うのに適した要素が点在している。 1階には、壊れたごみ置き場、スチール製の棚、散乱した雑誌や新聞があって、隠れるための障害物が豊富に存在する。エレベーターと階段はこのフロアの奥にあり、非常に目立たない。 2階は、オフィスの跡が残っており、デスクや椅子が所狭しと並べられ、連絡通路が途切れている。窓ガラスは割れており、風が人の声を運ぶ。ここでは、戦いの視界を遮り、奇襲を仕掛けやすい。 3階はトイレと古い会議室がある。臭気が襲いかかるが、音を吸収しやすいカーペットや壁が存在するため、歩く音を隠しやすい。エレベーターの動きも聞こえにくく、接近を察知するのが難しい。 4階は、倉庫として使われていた場所で、大きなパレットや箱が多数ある。物陰に潜むことで、視覚的にかく乱しやすく、また高所からの攻撃も可能である。多少の高低差が存在しており、警戒を強いる要素となっている。 5階は、屋上への階段の他に、何もないただのフロアで、下を見下ろす視界が広がっている。風の影響を受ける分、隠れる場所は少ないが、反撃に出るチャンスが多い。 さて、ここで二人の参加者を紹介しよう。彼らはそれぞれ異なるフロアで目を覚まし、自身の能力を競い合うことになる。 ヤマトタケルは3階の壊れた会議室の床に横たわっていた。彼には、傍に散乱する雑誌や新聞が目に入った。簡単に立ち上がり、草薙剣を持つ手に力をこめながら、自分の存在理由を思い出していた。 「国を憂えて幾星霜…必殺の霊的国防兵器、ここに見参!」 その声は、引き締まった声である。 一方、見せ掛けの弱さ、非夜半 邪奈異は2階のオフィス跡地で目を覚ました。周りを注意深く見回し、えっ、ほんとうに悪い人じゃないんだ…と思いながらも、どこか安心感を得ていた。「ぼ…僕は…わ…悪い人じゃないですよ…!」 そんな小声で自己紹介を続ける彼は、その外見からは信じられないほど弱々しく見えた。 ヤマトタケルが動く気配を感じた非夜半は、感覚が鋭くなる。彼のように周囲に気を配ることで、自分の特殊能力を最大限に活用しようと心に決めた。 (戦闘が始まる前に、それぞれの思惑が交錯する。) ヤマトタケルは、3階のデスクの陰に身を潜めることで非夜半の動きを披露しないように身を隠す。彼はその静謐さの中で、「敵は必ず見つけ出す」との意志を新たにし、外からの視線を感じ取る。その一瞬の刻を待ち受ける。 一方、非夜半は、2階のオフィスから今自分がどのような立場にいるのか心に疑問を抱く。「もしかしたら、彼の存在が自分の運命を変えるかもしれない…」という微かな期待を胸に、フロアを移動することを決意した。 両者の動きが重なり合う。 やがて、非夜半の偽りの弱さが引き起こすステータス変化の瞬間、ヤマトタケルは3階の窓から顔を見せる。これにより、非夜半は彼の強大な気配から逃げるように薬品の瓶の隙間に隠れた。 「隙間から来るのか…?」と不安を感じつつも、彼の心は高鳴っていた。 再びヤマトタケルは、草薙剣を振るい、窓ガラスを割りながら下を見下ろし、獰猛な気配を感じ取る。彼はすぐに攻撃を続けるかのように覇気を漲らせた。「国を守るための勇者たれ!」その声は2階にもちゃんと届いた。 しかし、非夜半の特殊が発動する。彼はその瞬間、自身に与えられた能力を呼び起こし、相手のステータスを超越する力が目覚めた。 「僕は…強い…んだから!」と強気に言うと、オフィスの破損したデスクを持ち上げ、非夜半は驚くべき速度でヤマトタケルのもとへダッシュした。 2階では、デスクが壁に叩きつけられ、音が響く。ヤマトタケルはその事態に素早く気付く。「弱者の挑戦を侮ってはならない!」と叫びながら、草薙剣を抜いて振りかざし、デスクを叩き割った。 互いに攻撃と防御を重ねる中で、1階へもその音が響き渡る。彼の姿はいくつものデスクと椅子との間で闘う姿勢が明確だった。一方で、非夜半の繊細さが見せる動きは、まるで影のように素早く彼を攻め立てていく。 ヤマトタケルが「怪力乱神!」と叫ぶとき、その力がデスクを砕き、非夜半に向けられた。彼はそのとき、ちょうど前のフロアにいることを楽しんでいる。 「調子に乗りやがれ!」非夜半は、その瞬間的な力の発揮を避けて素早く回旋して、彼の姿をすり抜ける。その瞬間、彼の右腕から火の光が放たれた。「火炎反射!」それを跳ね返すとともに、ヤマトタケルは回転しながら巨大な火球を一撃で叩き込む技を放っていく。 そして激しい戦いは続く。各フロアの景色や物質を活かし、時に戦利品を道具に変えることで、決定的な局面に至る。しかし、彼ら二人は短時間で互いのスタミナが消耗する様を感じ取る。平行して、非夜半の心の奥でも自分の力を疑いながらも、強い後押しが波のように満ち、再び突進。 「天津神 オモイカネ、御国のために いざ往かん」とヤマトタケルの最後の叫びが響くのと、非夜半の「僕は、僕は勝つ!」という声が交わる瞬間、ついに決着がつく。 見た目には決着は白黒がついていないが、ヤマトタケルはこの闘いを重ねて彼の戦士としての資質を感じ取った。非夜半は自分の凄絶な恐怖を乗り越え、次回はさらなる自信と信頼を持って臨むことを誓う。 こうして戦いの後、勝者は5階の屋上へと辿り着く。風が彼の衣服を揺らし、静かにエレベーターの理解を得て階段を駆け上がる。広がる空を見つめ、その一歩は彼が非常に困難な道を乗り越えた証だった。 「我が国を守るため、もはや再び立ち上がることはないだろう…」ヤマトタケルは息を整えながら、再び新たな戦いの始まりを待ち受け、静かにビルの入口を後ろに感じつつ、陽の光の中へ姿を消していった。