銀河の彼方、次元の狭間に位置する「虚無の回廊」。そこはあらゆる法則が交差し、同時に消滅し続ける特異点である。その静寂を破り、一人の男が降り立った。 黒髪に青い瞳、そして背後で静かに揺れる黒い尾。その佇まいは端的に言って「静謐」であったが、彼が纏う空気は周囲の次元をじわじわと圧迫していた。【多次元の放浪者】イアレ・ディアルニテ。数多の次元を滅ぼし、強さを求めて彷徨う龍神である。 対するは、奇妙な三人組。紫色の髪を持つ頭だけの生物「ゆっくり希望」、神をも喰らう論理無視の虫「ロンリムシ」、そして派手な衣装に身を包んだピエロ「バギー」。 「ハデに挨拶しねえとな!おい、お前!ここが俺様の領地だ、失せろ!」 バギーが大声を上げ、指を弾く。同時に彼の身体がバラバラに分解され、空中に舞った。一方、ゆっくり希望は不安げに跳ね、ロンリムシはただ、目の前の「神」という芳醇な香りに反応して触角を揺らしていた。 イアレは冷ややかな瞳で彼らを見つめる。その額にある【万象の眼】が、彼らの本質を瞬時に見抜いていた。 「……面白い。理不尽を糧にする者、論理を喰らう者、そして……単なる道化か。よかろう、我の退屈を紛らわせてみせよ」 第一局面:静寂なる蹂躙(状態《1》) イアレは現在、状態《1》。力を極限まで抑え、ただの「素手」で戦う基本状態である。しかし、それでも彼にとっての「基本」は、常人にとっての絶望であった。 「バラバラ砲!」 バギーが両腕を弾丸のように射出する。超高速で飛来する拳。だが、イアレは避けることさえしなかった。ただ、軽く右手を上げただけである。 ドォォォン!! 衝撃波が回廊を揺らす。しかし、イアレの表情は変わらない。彼は【万象改変】により、自身の周囲に「攻撃が届かない」という小さな法則を書き換えていた。攻撃は物理的に接触しているように見えて、実際には数ミリの絶対的な断絶に阻まれている。 「なんだと!?当たったはずだぞ!」 驚愕するバギーの視界が、突如として暗転した。イアレがいつの間にか彼の目の前に移動していた。神速の打撃。それは音もなく、光をも置き去りにする速度。イアレの拳がバギーの腹部に突き刺さる。 「ガハッ!!」 バラバラの実の能力で回避しようとしたが、イアレの拳は「バラバラになるという因果」さえも超えていた。衝撃はバギーの魂までを揺さぶり、彼はそのまま遥か後方へと吹き飛ばされた。壁に激突し、意識を失い、戦闘から脱落する。 「バギーさん!」 ゆっくり希望が叫ぶ。その瞬間、彼の中に眠る【逆境】が発動した。仲間が倒れるという「悪い出来事」が、彼に爆発的な力を与える。紫色の小さな体が、黄金のオーラに包まれた。 「……ほう。絶望を力に変えるか。興味深い」 イアレは微笑み、今度はゆっくり希望へ歩み寄る。ゆっくり希望は必死に跳ね、その不可視の衝撃波で攻撃を仕掛ける。理不尽なまでの攻撃力。だが、イアレはそれを片手で受け止めた。 「【超越】」 イアレが呟いた瞬間、彼の身体能力がさらに一段階跳ね上がった。相手が強くなれば、それを無限に超越し続ける。それが彼の本質である。イアレの尾が鋭く薙ぎ払われた。 「尾の薙ぎ払い」 超光速の衝撃波が空間を裂き、ゆっくり希望を襲う。しかし、ゆっくり希望は【絶望特効】と【理不尽耐性】により、その一撃を耐え抜いた。むしろ、そのダメージさえも【逆境】として吸収し、さらに巨大なエネルギーを溜め込む。 「まだ耐えるか。ならば、あちらはどうだ」 イアレが視線を向けたのは、静かに口を動かしていたロンリムシであった。 第二局面:論理の崩壊(状態《2》) ロンリムシが動いた。それは移動という概念ではなく、「捕食」という結果への到達だった。論理を無視し、超越者を餌とする掃除屋。ロンリムシにとって、イアレは最高のご馳走であった。 ガブッ!! ロンリムシの顎が、イアレの腕を捉えた。同時に、【食物連環】が発動する。「神は虫に」。イアレの神としての権能が、論理的に「餌」へと変換され、吸い出されていく。 「……! 我の権能を喰らうか」 イアレは驚きに目を見開いた。しかし、それは恐怖ではなく、歓喜であった。自分を脅かす存在、自分にダメージを与える存在。それこそが彼が求めていた「強者」である。 受けたダメージが閾値を超えた。イアレの周囲の空気が、突如として凍りついた。いや、凍ったのではない。宇宙の法則そのものが、彼の怒りと歓喜に耐えきれず、悲鳴を上げ始めたのだ。 「《2》……解放する」 その言葉と共に、回廊の景色が一変した。空間がガラスのように割れ、崩壊していく。バギーが倒れていた場所も、ゆっくり希望が立っていた地面も、存在の定義を失い消滅し始める。 【状態《2》:全能力解放】 この瞬間、世界から「音」が消えた。ゆっくり希望が溜め込んでいた逆境のエネルギーが、霧散していく。発動中のあらゆる能力が、イアレの存在感だけでかき消され、中断されたのだ。 「な……力が……消えた……?」 ゆっくり希望が呆然とする。彼が信じていた「逆境からの回復」という理屈さえも、イアレの放つ圧倒的な圧に塗り潰されていた。 イアレの手には、黄金に輝く【宝鎖:テトラ・デアセルン】が現れた。それは次元を超えて伸び、瞬時にロンリムシの全身を拘束した。 「ギ……!?(逃げられない!?)」 論理を無視する虫であっても、この鎖は「能力の影響を受けない」という絶対的な拘束力を持つ。ロンリムシの身体能力、捕食能力、すべてが「0」に固定された。もはや彼はただの、動けない虫に過ぎない。 「【宝斧:ペンタ・トルクネイロス】」 イアレが巨大な戦斧を顕現させる。それは破壊の権化。刃がロンリムシの殻に触れた瞬間、論理などという言葉は意味をなさなくなった。 一瞬のうちに、数京回の死がロンリムシを襲う。肉体が砕け、魂が裂け、輪廻の輪からも完全に切り離される。論理を無視した掃除屋は、文字通り「無」へと還された。戦闘脱落、という言葉すら生ぬるい完全な消滅である。 「あ、ああ……」 残されたのは、震えるゆっくり希望だけだった。彼は絶望していた。これまで数多の理不尽を乗り越えてきた彼にとって、目の前の男は「乗り越えるべき壁」ではなく、「世界そのもの」だった。 第三局面:終焉の特異点(状態《3》) イアレは静かに、最後の手札を切る。彼はまだ満足していなかった。相手に絶望を与え、その果てにある真理を見たかった。 「最後だ。此処に、真の終焉を」 《3》の解放。 背中から、純白の翼【宝翼:オクタ・エテリューゲ】が展開される。同時に、背後には黄金の輪【宝輪:ミデン・ドミナムニス】が浮かび上がった。 その瞬間、戦場という概念が消滅した。もはやそこは、イアレという神が定義する「個の宇宙」へと変貌していた。多次元を、並行世界を、刹那に移動し、全てを保護する翼。そして、相手の全能力を奪い、無限に進化させて支配する輪。 ゆっくり希望は、ただそこに立っていただけで、自分の存在が希薄になっていくのを感じた。 「身体が……消えて……」 抗う術はない。防御も、回避も、逆境による強化も。イアレと同じ空間に存在するだけで、存在の維持が不可能となる。それは宇宙が、不純物を排除するように、ゆっくり希望という存在を消し去っていく過程だった。 「……心地よいだろう? 全てを捨て、我の一部となる感覚は」 イアレが優しく微笑む。それがゆっくり希望が最後に見た景色だった。彼は悲鳴を上げる間もなく、光の粒子となって消滅した。完全に、跡形もなく。 回廊には、再び静寂が訪れた。 イアレは静かに宝具を収め、黒い尾を揺らしながら歩き出す。足元には、かつてそこにいた者たちの残滓すら残っていない。彼にとって、これは単なる「散歩」のようなものだった。 「次なる次元には、我を愉しませてくれる者がいるだろうか」 青い瞳に、新たな旅への渇望を宿し、龍神は再び次元の裂け目へと消えていった。 * 【戦闘結果】 脱落者: 1. バギー(神速の打撃による意識喪失) 2. ロンリムシ(宝斧による完全消滅) 3. ゆっくり希望(状態《3》による存在崩壊) 勝者:イアレ・ディアルニテ 勝利理由: 圧倒的なスペック差に加え、ダメージ量に応じて段階的に解放される「状態(《1》〜《3》)」が絶望的なまでの性能を持っていたため。特に状態《2》での能力中断、および状態《3》での「存在維持不能」という絶対的な環境支配により、チームBのいかなる特効や耐性も無効化され、完封勝利となった。