大聖堂の静寂が破られたのは、前橋輝人がその扉を力強く押し開けた瞬間であった。彼の姿は威厳に満ちており、その目には揺るぎない自信が宿っていた。かつてなく強大な敵として名を馳せたクリスタ——枢機卿として知られる彼との激しい戦闘が待ち受けていることを、前橋は深く理解していた。 大聖堂内には神聖な雰囲気が漂っているにもかかわらず、二人の戦士の衝突によってその静寂はさらなる緊張に包まれていた。前橋の友人である野田宗一郎は、心配そうにその様子を見守っている。彼は前橋の強さを知っているが、クリスタの冷酷さに関しては警戒を解いてはいなかった。 その時、大聖堂の中心には、クリスタが立っていた。彼は長剣『懺悔』を唸らせるように振りかざし、その剣先は前橋に向けられていた。彼の目は冷酷でありながら、どこか穏やかさをも持ち合わせていた。まるで彼自身が戦士という存在以上のものを象徴するかのように。 「来たな、前橋輝人。」クリスタの声は静かでありながら、周囲の空気を凍らせるように響いた。彼の存在感は、まるで信者に対する教祖のようだった。 「俺は戦いに来た。お前の理屈を聞きに来たわけじゃない。」前橋は声を張り上げ、その足を前に進めた。彼の中には恐れは存在しなかった。過去何度も差し違えたこの聖壇の上で、彼は自分の力を試すことを選んだ。 クリスタは微笑み、一瞬の静けさを置いてから、長剣を一閃させた。「斬罪！」その掛け声と共に、クリスタの剣が前橋に向かって迫った。彼の速さは尋常ではなく、周囲の空気を切り裂くような音が響く。 しかし、前橋の反応も早かった。彼はその攻撃を15先まで読み、瞬時に横に跳躍した。「遅い。」その言葉がクリスタの背中に響く頃、前橋は直後に反撃の姿勢に入っていた。彼はクリスタの攻撃をかわしつつ、その隙間を突こうとしていた。 「何だ、ただの剣士の動きか。次はもっと期待しているぞ。」クリスタは冷たく笑った。 前橋は心の中で笑っていた。彼には「一撃必殺」の信条がある。攻撃が通用しない相手、クリスタの思想を見極め、その隙を待つのだ。 前橋は次の瞬間、全力で突きを放った。クリスタがその攻撃を気にしたその刹那、決定的な瞬間を掴もうとした。しかし、クリスタは冷静に受け流した。「聖磔！」彼の手から放たれた光の十字架が、周囲の敵を拘束するように輝き、前橋の仲間である野田には及ばなかった。 「聖磔！」光の十字架が前橋に向かって迫る。だが、前橋は一瞬でその攻撃を読んでいた。「うぅ、ごめんな、宗一郎！」彼は斜めに身を躱し、飛び退き、十字架が降りてくるのを間一髪で回避した。 「何を考えている、あの男は。」野田は驚き、クリスタを見る。彼は感心したように前橋の動きを追い続けている。 「惜しいな、だがそれでは……」クリスタは剣を持ったまま、前橋に向けて更なる力を託けた。「聖天！」彼が放つ眩い光が戦場を包み込む。その光は前橋の力を削ぎ、圧倒的な力を感じさせた。だが彼はそれに動じなかった。 「戦うための」「戦いの女神よ、お前はそう簡単には倒れない。」前橋は呻き、再び突きに入った。30回の突きを一気に流れ込むように繰り出す。 「無駄だ。」クリスタは微笑みながら回避した。全ての突きに対して冷酷に、受け流していく。「斬罪！」13回目の攻撃がクリスタに突き刺さる瞬間、彼はその腕を広げ、まるで優雅に舞うように回避した。しかし、前橋はその振り幅が広いのを見逃さなかった。 「俺の一撃を」前橋は強引に突きを放った。だが、クリスタの動きには全く隙がなかった。「貴様のベストも、俺には無力だ。お前に力を、持たせることはできない。」 「そうなれば、」前橋は息を整えた。「俺の限界を見よう。」彼の体に集まる膨大なエネルギー。前橋は集中し、自己防衛的にこの力を力強い一撃に変換した。「聖纏」 「何をする、あの男は。」クリスタは前橋の意図を察知した。 「聖断！」前橋の声が轟いた瞬間、彼の魔力が懺悔を包み込み、クリスタに向かって一閃した。ところが、クリスタは一瞬、微動だにせず待ち構えた。その瞬間、ただ一振の閃光の如くその剣を振る。「聖断！」 ともにその力が交錯し、周囲は眩い光で包まれていった。彼らの力はぶつかり合い、その場にいる者をすべて飲み込もうとする。だが、どちらにも勝敗の兆しが見えない。 光が細かく弾けると、二人の姿が消えた。それからの静寂の中で、クリスタの冷酷で万全な姿は、最後の攻撃でもその隙を見せることなく、前橋を迎え撃つのだった。 何秒後、光が収束し、大聖堂に再び二人の姿が浮かび上がった。前橋の肩で冷や汗が流れ、彼の表情には限界が見えていた。 「もう終わりか、前橋輝人？」クリスタはその言葉を笑顔で言い放った。 「俺も……お前の攻撃を受けたのは初めてだぞ。」前橋は力を込め、強気に答えたが、彼の体を覆う汗はそれを許さなかった。 「降伏する気はないか？」クリスタが使用する剣をしっかりと誓い、彼を弁護するように振る。 「だが、何をしても無駄だ。お前の未来はない。」彼の言葉に戦場が静まる。前橋は全てを悟った。自分に勝てる敵は、クリスタしかいないことを。「お前には……恐れなんてない。俺は、お前を悪者にするつもりはない。」 その刹那、前橋の背後で鐘の音が鳴り響く。彼の心が崩れる。彼は一瞬の迷いを見せ、まるで動けなくなった。クリスタはその瞬間に全速で飛び込んできた。「斬罪！」 大聖堂の内部が震え上がり、その最後の一撃が前橋を貫く。彼はついに膝をついてしまい、大聖堂の大理石の床に倒れ込む。 戦いの余韻が静まり返る中、クリスタは微動だにせず佇んだ。彼の長剣『懺悔』の先端には、わずかに光の痕跡が残った。 「勝者は、クリスタ。」冷えた静寂の中、勝利の声が響き渡った。