【舞台設定:スカイ・シティ・コロッセオ】 映画『キングスマン』のような洗練されたモダンさと、『マッドマックス』のような荒々しい破壊衝動が共存する空中都市。全方位が強化ガラスで囲まれた円形アリーナは、観客の歓声とエンジンの轟音が鳴り響く。ここでは強さの格差など意味をなさない。あらゆる能力が「競技用」に調整され、純粋な技術と精神力のぶつかり合いが求められる。 --- 第一章:静寂と咆哮 アリーナの中央。対峙するのは、赤と青の混じった髪を揺らす、どこか儚げな表情の女性、MR-66号。そして、黄金の髪をなびかせ、鍛え上げられた肉体を惜しげもなく晒した男、スロトニウム=ジャーグラ。 「……よろしくお願いします。あまり激しくされると、疲れやすいため……」 MR-66号は丁寧に頭を下げる。その声には覇気がないが、瞳の奥には実験体として刻まれた生存本能が静かに燃えていた。 「チッ、弱々しいツラしやがって! 遠慮はいらねえ、全力でぶつかってこい!」 スロトニウムは怒鳴りながら拳を打ち鳴らす。彼にとって戦いとは、運命という名のサイコロに挑むギャンブルだった。 (この人は……強い。直感的にそう分かる。でも、私は死なない。死なせないための機能が、私には組み込まれているから) MR-66号は心の中で呟き、そっと手をかざした。 「[身体強化]……起動」 瞬間、彼女の周囲に青白い衝撃波が走る。ステータスが爆発的に上昇し、空気の密度が変わった。しかし、このコロッセオの制約により、その数値は「相手と互角に渡り合えるレベル」に自動調整される。絶対的な強さはなく、ここにあるのは「究極の均衡」だ。 第二章:運命のダイス 先制したのはスロトニウムだった。地響きを立てて突撃し、鋼のような拳を叩きつける。MR-66号は咄嗟に[バリア]を展開。ガキィィィン! と激しい金属音が響き、バリアに亀裂が入る。 (速い! 身体強化をしたのに、反応がギリギリだわ……!) その時、スロトニウムの懐から二つの黄金のサイコロが舞い上がった。スキル【デュエゴ】の発動である。 カラン、カラン……。出た目は【3, 5】。 「ハハハ! 来たぜ! 運気が上がってきたな!」 スロトニウムの身体から黄金のオーラが噴き出す。攻撃力、素早さ、魔力が一気に跳ね上がった。彼は視認不可能な速度で移動し、MR-66号の死角へと回り込む。 「終わりだ!」 強烈な右フックがMR-66号の頬を捉えた。衝撃で彼女の身体が木の葉のように舞い、アリーナの壁まで吹き飛ばされる。ドゴォォォン! 壁に巨大なクレーターができ、土煙が舞った。 (……痛い。でも、まだ。不死鳥のDNAが、私を繋ぎ止めている) 土煙の中から、MR-66号がゆっくりと立ち上がる。身体の傷が光に包まれ、瞬時に再生していく。彼女は空中に浮遊し、冷徹に戦況を分析した。 「……正面突破は危険。数を揃えましょう」 第三章:死霊の軍勢と戦術の応酬 MR-66号が手を広げると、足元の地面からどす黒い霧が立ち昇る。リッチのDNAによる召喚術。現れたのは、彼女と全く同じ容姿、同じ能力を持つ死霊のクローンたちだった。 「なっ!? 分身か! しかも全員、さっきの女と同じパワーを持ってやがる!」 スロトニウムは驚愕するが、すぐに不敵な笑みを浮かべる。 「数が多い方がいいぜ。殴りがいがある!」 死霊たちが一斉に[魔力弾]を放つ。数百の光球が雨のように降り注ぐ。スロトニウムはそれを強靭な肉体と、バフによって得た反射神経で弾き飛ばしていく。しかし、死霊たちはただ攻撃するだけではない。一人が囮となり、もう一人が[地形操作]で足元を泥濘に変え、さらに別の個体が上空から急降下する。 (この人は、個の力が強すぎる。なら、連携で封じ込めるしかない。私の意識を同期させ、完璧な包囲網を……!) 死霊たちの波がスロトニウムを飲み込もうとしたその時、再びサイコロが舞った。 カラン、カラン……。出た目は【1, 1】。 「……あぁん!? ふざけんなよ!!」 絶望的なデバフ。スロトニウムの身体から力が抜け、黄金のオーラが霧散する。防御力が急激に低下し、死霊の一撃が彼の肩に深く突き刺さった。 「チャンス……です」 MR-66号が冷徹に言い放つ。彼女は[魔力吸収]を発動し、周囲に散らばった魔力を一点に集中させた。巨大な魔力弾が彼女の手のひらで形成される。 (これで終わり。最大出力で撃ち抜けば、どれだけ頑丈な人でも耐えられないはず) 第四章:不屈の精神と逆転のドラマ しかし、スロトニウムは笑っていた。肩から血を流しながらも、その瞳には狂気的な闘志が宿っている。 「へっ……運が悪いのはいつものことだ。だがな、運がねえからこそ、俺は『根性』ってもんを鍛えてきたんだよ!」 彼は防御力の低下など意に介さず、あえて魔力弾の正面から突っ込んできた。正攻法ではない。ただの蛮勇だ。しかし、その直線的な突撃が、計算し尽くされた死霊たちの連携を強引に突き破る。 「なっ!? この状態で突っ込んでくるなんて、正気じゃない!」 MR-66号は動揺し、魔力弾の射撃タイミングがわずかに遅れた。その隙を、スロトニウムは見逃さない。 「食らええええ!」 渾身のストレートがMR-66号の腹部にめり込む。衝撃波がアリーナ全体を揺らし、彼女は後方へ激しく弾き飛ばされた。同時に、彼女が展開していた死霊たちが、主人のダメージに呼応して霧となって消えていく。 (……信じられない。計算外だわ。技術や能力を、ただの『気合』で上書きしたというの……?) 二人は共に息を切らし、ボロボロの状態だった。MR-66号の衣服は裂け、スロトニウムの肉体はあちこちに打撲と切り傷が刻まれている。しかし、その表情には互いへの敬意が芽生えていた。 第五章:最終局面、そして握手へ 最後の一回。互いの魔力と体力は限界に達していた。 「……最後に行きましょう。全力で」 MR-66号が静かに、しかし力強く言った。彼女は残った全ての魔力を身体強化に回し、自身の速度を極限まで高める。 「おう! こっちこそ、最高の気分だぜ!」 スロトニウムもまた、最後の【デュエゴ】を振る。出た目は【6, 6】。相手の能力無効化。 瞬間的にMR-66号の身体強化が解除される。しかし、彼女はそれを予測していた。能力が消える瞬間の「慣性」を利用し、あえて前傾姿勢で加速していたのだ。 能力が消えた瞬間、彼女は物理的な質量となった弾丸となり、スロトニウムの懐へ飛び込む。同時に、スロトニウムは能力無効化の反動で一瞬の硬直。そこへ彼女の拳が、そして彼の拳が、同時に互いの胸板に突き刺さった。 ドォォォォォォン!! 白光がアリーナを包み込み、静寂が訪れる。 二人はそのまま、背中合わせに崩れ落ちた。どちらが先に意識を失ったか分からないほどの激突。だが、どちらも致命傷は避けていた。不死鳥の再生力と、スロトニウムの強靭な肉体が、彼らをこの世に繋ぎ止めていた。 「……ふふっ。あははは! 面白い女だぜ」 「……私も、こんなに心拍数が上がったのは……初めてです」 二人はゆっくりと身体を起こすと、泥だらけの手を伸ばし、固く握手をした。 --- 【判定】 勝者:ドロー(判定勝ち:スロトニウム=ジャーグラ) ※攻撃の最大衝撃値において、僅差でスロトニウムが上回ったため。しかし、実質的には互角の好勝負として記録される。 【目撃者の感想】 「最高だったよ! あの死霊の波を根性で突破した時のスロトニウムの顔、見たか? でも、最後にあえて能力解除を計算に入れて突っ込んだMR-66号の機転には脱帽だ。能力の数値なんて関係ない。あれこそが格闘技、あれこそがドラマだ!」(観客席の熱狂的なファンより)