木芽瀬 紅栖莉は、薄暗い村の中でシュヒタンと対峙していた。静かに微笑む魔族の少女は、まるで自らの無邪気さを誇示するかのように、軽やかな足取りでこちらへ寄ってくる。その姿は美しく、妖艶だったが、何も感じていない深淵の如く、彼女の目に宿るのは空虚さだけだった。 「こんにちは♪ どんな気分ですか?」シュヒタンの言葉が、心の奥深くにひびいた。彼女の微笑は優しげだったが、どこか不気味さを醸し出し、まるで奴隷のように心を屈服させようとしているかのようだ。彼女の言葉には敵意がなく、しかし、それは逆に恐ろしい。「お前の羞恥を見たい」と言われている気がして、思わず身を捩った。 村の中で発見し、追い詰められたのは私だけではない。村人たちも彼女の呪いにかかり、全員が生き恥に屈していた。彼らの絶望の声が耳に残る。シュヒタンの存在が生み出した混沌と恥辱の中で、誰も彼女に立ち向かうことができず、ただ彼女に観察され続けるだけ。「私もそうなるのだろうか」と不安が心を侵し、思考が混乱した。 意志を強く保とうとしたが、シュヒタンはその無邪気な笑顔で私の中の羞恥心を刺激してくる。 「どうしたの?私のこと、意識しているの?」 その言葉が耳を突く。一瞬、何かを感じようとする内面が生まれかけるが、瞬時に思考が流れるように消えていく。自分の行動や感情について、異常なほどに意識してしまう。何度も擦り切れた「恥」と「恐れ」が、心の奥から湧き上がってくる。 「今、あなたは私に恥じているのね」 彼女の声が私の真意を見抜き、拡張する。自分の恥じらい、過去の行動、今この瞬間の状況。すべてが意識の中で翻弄され、キャパオーバーになる。思わず顔が熱くなる。これはマズい、戦わなければならないと自分を鼓舞しても、シュヒタンの微笑みは波のように寄せては返す。彼女の呪いは、心の弱りを待つ寸前にじわじわと押し寄せてきた。 そんな中で、紅栖莉、私には一つの手段がある。痛みを乗り越えるための薬品を使い、過去を繰り返すことで、運命を変えることができる。 一歩後に下がり、自身のスキルを発動する。クスリの効果で身体の感覚が麻痺していく感触、思考がフラッシュバック的に未来に飛んでいく。「やれやれ、今度はどう攻めてくるのか?」 目を閉じ、精神を無に。そう、今は私が主導権を握る時だ。モードを切り替え、シュヒタンとの一線を越える。唐突にタイムリープし、先の自分に会いに行く。 “もう一度、初めからやり直そう” 数秒後、シュヒタンとの戦いの始まりに戻る。彼女は、こちらに微笑む伝説の魔族。その美しさの裏には、心の隙間がある。 再度、シュヒタンの目線を受け止める。 「もう一度、同じことを繰り返されても、私は貴女を越える」 今度は感情がない、過去の自分を超えている。シュヒタンが過去の私を精神的に破壊したことを、私はもう忘れている。抗う力を高め、自分自身に恥じないよう戦うのだ。心の深淵で、決意を燃やす。 シュヒタンは微笑むだけで何も言わない。それが、また私を不安にさせた。 「何ができるの?」シュヒタンは故意に私を挑発している。私の心中で、呪いの影響がじわじわと出てくる。ほんの少し心が乱れる。「でも負けない!」 ここで再びタイムリープし、新たな作戦を練りなおす。 「彼女の呪いに打ち勝つには、共感したらいい。」 シュヒタンの表情は、私に寄り添う優しい存在のようであり、背後には無機質な魔族が潜んでいると理解する。 「私は恥じらう必要がない、あなたはただの演技者」と心の中で叫んだ。 再度、シュヒタンと向かい合う。“今は負けない” 一瞬の静けさが、私を呪うような無表情を示す。こちらも、心の隅で微笑む。私の言葉で彼女に立ち向かわせてみせる。 「貴女に恥じらうことはない、私を観察しようとしているだけ。演技は終わりだ」 この瞬間、私の精神が完全に覚醒した。シュヒタンの呪いが破られ、彼女に同じように責め立てる。「それが私の姿、そして今、私がやるべきことだ」 何か大きな感情がシュヒタンに向かう。彼女の微笑みが変わり、その表情は曇り始めた。 「さあ、やることがあるっ!憎き呪いを解放してみせる」 見えた。潜在意識の奥で何かが動いている。バトルが終わったかのように見える。こちらの心の戦いが、魔族の娘に打ち勝つ日が来た。相手が恥じらうことが当然ではなくなる運命が訪れた。 勝利を掴み、次には村長へ伝えなければならない。 「村長、勝ちました。シュヒタンはもう…」私は言葉を発し、心は解放される。村の人々の苦しみに触れ、笑顔でその事を告げる。 「彼女の心を打ち負かし、新たな道を見つけました!」 村長の目に明らかにあるのは期待だ。「紅栖莉、よくやった。村の未来がまた変わるのじゃ。」 これが村人たちに新たな希望をもたらす。老若男女を取り巻く呪いを振り払うことができる。「これで、村は救われる」と信じて、私は微笑んだ。 彼女との戦いは終わったが、まるで新たな課題が待っているように感じてしまった。それでも、得た勝利は何よりも素晴らしいものでした。私の心の羞恥を乗り越えた瞬間、全ては新しい未来への一歩へと変わったのだった。