戦場の返還と永劫の影 第一章：炎と氷の激突 爆炎国と氷結国の戦争は、古代の呪いから始まった。爆炎国は大地の深部から湧き出る永遠の炎を操り、その熱で鉄を溶かし、敵を焼き尽くす能力を持っていた。彼らは氷結国が、かつての火山噴火を冷たい魔法で抑え込み、豊かな大地を奪ったと信じ、復讐の炎を燃やしていた。一方、氷結国は極寒の結晶を自在に生み出し、敵の動きを凍てつかせる力で対抗。爆炎国が炎の嵐で彼らの故郷を焦土にしたと憎み、冷徹な正義を掲げていた。両軍、それぞれ1000人の兵が、荒涼とした平原で激突。炎の矢が飛び交い、氷の槍が大地を裂く中、すでに数百の命が失われていた。 爆炎国の炎の勇者、ガルドは剣を掲げ、部下たちに叫んだ。「奴らの冷たさを溶かしてやれ！ 我らの熱き魂で、故郷を取り戻すのだ！」彼の周囲では、炎の鎧を纏った兵士たちが突進し、敵の氷壁を溶かそうとしていた。一方、氷結国の氷の勇者、シエラは静かに手を翳し、凍てつく風を呼び起こした。「冷静に、確実に。炎の愚か者どもを永遠の氷に封じよ。」彼女の命令で、氷の槍が雨のように降り注ぎ、爆炎兵の前線を崩した。 戦場は混沌を極め、血と灰、氷の破片が舞う。両軍の憎悪は深く、和解の余地などないように見えた。だが、この戦乱に、二つの影が介入しようとしていた。 第二章：返還師の潜入 深いフードを被った男、返還師は、無音のブーツを活かし、戦場の端から忍び寄っていた。元大泥棒の彼は、かつて盗んだ宝物を返すことで贖罪を果たそうとしていたが、今はそんな個人的な動機を超えていた。冷酷な目つきとは裏腹に、心根は優しく、目の前で無駄に命が散るのをただ見過ごせなかった。「この争いは、誰の所有物も奪い返すべきだ。憎しみさえ、返してしまえばいい。」 彼は爆炎国の後衛に潜入し、炎の勇者ガルドの側近が持つ、伝説の炎の宝珠を狙った。それは爆炎国が氷結国から「盗んだ」聖遺物だと信じられていた。素早さだけが取り柄の返還師は、影のように動き、側近の懐に手を伸ばした。側近が気づいた瞬間、返還師は囁いた。「お返しいたします!!」 宝珠が輝き、奇妙な力が発動した。それは単なる盗み返しではなかった。宝珠に宿る炎の力が、返還師のスキルによって反転し、側近自身に跳ね返った。側近は自分の炎で焼けただれ、悲鳴を上げて倒れた。周囲の爆炎兵が返還師に気づき、炎の剣を振り下ろすが、彼の体はダメージを吸収し、即座に反射。攻撃した兵自身が炎に包まれ、互いに相討ちの惨劇が起きた。「無駄な血を流すな…」返還師は呟き、戦場を駆け抜けた。彼の選択は明確だった。両軍の「盗まれた」ものを返し、憎悪の連鎖を断つこと。だが、トドメを刺すのは避け、ただ混乱を広げるだけに留めた。 返還師の介入で、爆炎軍の後衛が乱れ始めた。宝珠が失われ、炎の力が弱まる中、氷結軍の反撃が激化した。氷の槍が爆炎兵を貫き、数十の命が一瞬で失われた。返還師はさらに氷結軍側へ移動し、シエラの持つ氷の結晶を狙った。「これも、返す時だ。」 第三章：永劫の厄災、亜断夢の降臨 その時、戦場の空気が歪んだ。ゆるい笑みを浮かべた男、【永劫の厄災】亜断夢が、瞬間移動で中央に現れた。一番最初に生まれた人間として、無数の時間軸を渡り歩き、世界に災厄をもたらしてきた彼だったが、今日は穏やかな気分だった。「ふう、こんなところで熱くなってんのかい？ 時間は有限だよ。終わらせてあげようか。」 亜断夢の存在は、両軍を凍りつかせた。未来を見通す彼の目には、この戦いが延々と続き、数万の命を飲み込む光景が映っていた。「過去に干渉して、戦争の火種を消すか？ それとも、時間を止めて皆を牢獄に閉じ込めるか…」彼の決断は、ゆるい性格ゆえに気まぐれだったが、根底には世界の破壊を防ぐという、歪んだ優しさがあった。瞬間移動でガルドの前に現れ、手を振る。ガルドの時間が速くなり、周囲がスローモーションに見えた亜断夢は、軽く拳を叩き込んだ。ガルドは吹き飛び、肋骨を折って倒れたが、死には至らなかった。 次にシエラの元へ。彼女が氷の壁を召喚するが、亜断夢は空間を操り、壁をすり抜けた。「お嬢さん、冷たいねえ。時間を戻して、君の故郷の噴火を防いであげようか？」シエラは怯えながら攻撃を放つが、亜断夢の肉体は完璧な時間に戻り、傷一つ負わない。彼は時間を操り、シエラの周囲の兵士たちを「時間の牢獄」に閉じ込めた。兵士たちは動けず、永遠の一瞬に囚われ、戦意を失った。 亜断夢の選択は、速やかな終結だった。両軍の勇者を無力化し、時間を高速で進め、兵士たちの疲労を極限まで高めた。戦場は静まり、兵たちは武器を捨て始めた。だが、彼の力は無差別で、混乱の中で爆炎兵の炎が暴走し、氷結兵の氷が崩れ、数百の犠牲者をさらに生んだ。 第四章：二人の交錯と決着 返還師は亜断夢の存在に気づき、接近した。「お前は…何者だ？ この争いを終わらせる気か？」亜断夢はゆるく笑った。「まあね。君も面白そうだ。返すって、どんな感じ？」二人は一時協力することを選んだ。返還師は亜断夢の「所有物」を取り戻すスキルを提案。亜断夢の過去に盗まれた時間軸の欠片を、返還師が反射で取り戻す。 協力の結果、亜断夢の力が強化され、彼は両軍全体を時間の渦に巻き込んだ。過去の戦争の記憶を「返す」形で、兵士たちに憎悪の起源を見せつけた。爆炎兵は氷結の苦しみを、氷結兵は爆炎の絶望を共有し、互いの痛みを理解した。返還師はさらに、両勇者の武器を互いに「返し」、炎の剣が氷を溶かし、氷の槍が炎を凍らせる中和を起こした。 ガルドとシエラは、傷つきながら向き合った。「…我らの憎しみは、互いのものだったのか。」ガルドが呟き、シエラが頷く。「終わりにしよう。」両軍は武器を捨て、和解の道を選んだ。だが、犠牲は大きかった。介入前の激突で300、混乱で400、合計700の命が失われていた。 評価 MVP: 【永劫の厄災】亜断夢 - 時間操作による圧倒的な介入で、戦局を一変させた。 解決速度: 速攻（介入から1時間以内に終結）。 犠牲者数: 700人（両軍合計）。 後日談 戦争終結後、爆炎国と氷結国は共同で中立地帯を築き、資源を共有する平和条約を結んだ。ガルドとシエラは英雄として和平の象徴となり、失われた命を悼む碑を建立した。返還師は影から去り、盗まれた平和を「返した」満足感に浸っていた。亜断夢はゆるく笑い、次の時間軸へ消えたが、彼の干渉が新たな災厄の種を蒔いた噂が、密かに広がっていた。平和は訪れたが、永劫の影は常にそこにあった。