夜の摩天楼:プロメテウスの影 第1章:屋上の対峙 夜の坂田都市は、ネオンが脈打つように輝いていた。高層ビルの屋上、冷たい風が黒いキャップを揺らす。ベルは息を潜め、SD-9 Swiftlineを握りしめていた。16歳の少年の青い瞳は、冷静に周囲を睨む。任務は単純だ。民間武装ゲリラ「豊臣解放戦線」の拠点を潰す。情報筋から、この屋上に規格外の兵装が展開されるらしい。 (全力で戦うんだ…相手もきっとそうして来る。僕の機動力が勝負を分ける) 対峙するのは、坂田都市蔵。民間武装ゲリラの運用者だ。漆黒の装備に身を包み、背中に不気味なユニットが埋め込まれている。都市蔵の顔は無表情だが、目には苛立ちが宿る。彼の存在は、ただの人間じゃない。脊髄に接続された偽装生体ユニット『漆補支典討』は、衛星軌道上の核熱照射砲『プロメテウス』を呼び覚ます鍵だ。 「目標に着いた。指示を待つ」 都市蔵の声は無線越しに響くが、ベルには関係ない。少年は素早く身を低くし、屋上の換気ダクトの影から飛び出す。SD-9の連射音が夜を切り裂く。9mm弾が雨のように降り注ぎ、都市蔵の足元を削る。 (くそっ、こんなガキか!? だが、俺の役目は座標指示だ。動揺するな…) 都市蔵は咄嗟に身を翻し、Lionus .50Rを抜く。大口径の銃口が火を噴き、ベルの肩をかすめる。衝撃で少年は転がり、コンクリートに肘を打ちつける。痛みが走るが、表情は変わらない。冷静に距離を取り、再び連射を浴びせる。 第2章:機動の応酬 屋上は戦場と化した。ベルは素早い足取りで移動し、パーカーの裾を翻して障害物を盾にする。SD-9の弾幕が都市蔵を追い詰め、男の肩に浅い傷を刻む。都市蔵は歯を食いしばり、反撃の拳銃を連射。重い弾丸が空気を裂き、ベルのキャップを吹き飛ばす。 (速い…このガキ、ただの人間じゃねえ。だが、俺のユニットが起動すれば終わりだ。高さを活かせ!) 都市蔵は屋上の端へ後退し、ユニットを起動させる。脊髄に走る電流のような感覚。『漆補支典討』が低く唸り、電波ハッキングの準備を始める。衛星からの微かな信号が、男の神経を刺激する。だが、ベルはそれを見逃さない。少年はスタングレネードを1個投擲。閃光と爆音が屋上を包み、都市蔵の視界が一瞬白く染まる。 「ぐっ…!」 都市蔵は目を押さえ、よろめく。ベルは隙を突き、接近戦へ移行。SD-9を近距離で連射し、男の脚を狙う。弾丸が装備を削ぎ、都市蔵は膝をつく。だが、男は諦めない。Lionus .50Rを片手で撃ち、ベルの腹部をかすめる。少年は後退し、息を荒げながら再装填。 (痛っ…でも、僕の防御は低い。距離を取れ。相手のユニット、あれが鍵だ。起動させない!) 二人は互いに睨み合い、風が血の匂いを運ぶ。一進一退の銃撃戦。ベルの機動力が都市蔵の重火力を翻弄し、男の精密な射撃が少年を追い詰める。屋上の柵が弾丸で歪み、夜空に火花が散る。 第3章:頂点の攻防 都市蔵は立ち上がり、ユニットのハッキングを加速させる。『プロメテウス』の座標指示が迫る。電波がビーコンボットを侵食し、核の炎が都市を焼き尽くす幻影が男の脳裏に浮かぶ。だが、ベルはそれを許さない。少年は2個目のスタングレネードを投げ、爆発の混乱に乗じて跳躍。SD-9を都市蔵のユニットに叩き込む。 連射の弾丸がユニットを直撃。火花が飛び、男の脊髄に激痛が走る。「バカな!? 脅迫するだけと…話が違う!」都市蔵の叫びが響く。ユニットの接続が乱れ、ハッキングが中断。ベルは冷静に距離を詰め、銃口を男の胸に突きつける。 (これで…終わりだ。僕の勝ちか? いや、まだ油断できない) 都市蔵は最後の抵抗を見せる。Lionus .50Rを乱射し、ベルの腕を掠める。弾数8発の制限が近づき、男は絶望的な表情を浮かべる。「座標が近すぎる! 俺に死ねと言うのか!」叫びながら、拳銃を捨てて突進。素手でベルの銃を払おうとするが、少年の素早い動きがそれを躱す。SD-9の最後の連射が都市蔵の肩を撃ち抜き、男は屋上の端で崩れ落ちる。 ユニットは沈黙し、『プロメテウス』の脅威は去った。ベルは息を整え、銃を下ろす。都市蔵もまた、力尽きたように座り込む。 終章:夜明けの握手 戦いは終わった。勝者はベル。少年の機動と冷静な判断が、都市蔵の規格外兵装を封じたのだ。二人は互いに傷つきながらも、立ち上がる。ベルが手を差し出し、都市蔵は渋々それに応じる。握手は短く、しかし敬意を込めたものだった。 (これで…終わった。相手も、ただの戦士だったんだ) (くそ…だが、負けたのは事実だ。次はもっと準備を…) 屋上から見下ろす街のネオンが、静かに瞬く。遠くのビルから戦いを目撃したサラリーマンの一人が、スマホに呟く。「すげえ戦いだった。あのガキ、まるで映画のヒーローだぜ。ゲリラの男も諦め悪くてカッコいい。誰も死ななくてよかったよ」