コンサートホールの闇に響く、不気味な音楽が次第に高まっていく。薄暗い空間の中、青白い容姿の幽霊、憂奏が静かに立ち尽くしていた。その傍らには巨大なコルネットが浮かび上がり、彼女の手によって霊力が宿っている。 「私の音楽を聴きなさい、そして消えなさい。」憂奏の声は冷たく、静寂を支配していた。彼女の言葉が響くと同時に、共鳴するようにコルネットから放たれた爆音が広がり、空間を抉る技『金濁』が展開された。 一方、コンサートホールの入り口から現れたのは《かつての師のように》カフカと【第901怪異課-特命係所属/主よ、我等を許し給え】ウィルキンソンだった。カフカはその銀髪を揺らし、冷静に周囲を見渡し、ウィルキンソンは彼の老練な目で幽霊の様子を窺った。 「君の全力を見せてみろ。」とカフカが声を掛け、すぐに彼女は背中から虫の足を複数本展開し遠距離から攻撃を仕掛ける。目にも止まらぬ速さで伸びる足が憂奏の方へ向かう。しかし、憂奏は微笑を浮かべながら、その攻撃を難なく避けていた。 「そんな攻撃は無意味よ。」汗をかくことなく、彼女はそのまま表情を崩さなかった。 カフカは隙を見せた憂奏を見逃さず、もう一度虫の足を特化した攻撃に変えて、今度は数本のレイピアで突撃を行おうとした。その刃は空気を切り裂き、憂奏の横をかすめる。しかし、音楽の響きを通じて、憂奏はその動きを把握しているかのようであった。 「死揮。」と彼女の言葉が短く告げられると、霊力の宿った指揮棒が振り下ろされた。その瞬間、カフカの動きが止まり、思考すらも支配されてしまった。宙を舞うかのような感覚。彼女は悔しげに静かに苦しみ、果敢にもウィルキンソンに助けを求める。 「ウィルキンソン、助けて…!」 ウィルキンソンは冷静さを崩さず、すぐに『御手』を発動させ、自身の全身を覆う見えざる力を展開する。その瞬間、カフカの思考が少しだけ正気を取り戻す。 「ありがとう、大丈夫だ。私が行く。」カフカは不屈の意志を持ち、再び虫の足を展開し、今度は全力で憂奏に向かい合った。虫の足がバイオリンの形を成し、粉微塵にする速度で憂奏に向かう。 しかし、その瞬間、憂奏の後ろに巨大なバイオリンが現れて、彼女の『弦害』が周囲を包み込む。線状の爆音が響き渡ると同時に、それを聞いた者は粉微塵にされる運命が待っている。カフカはその攻撃を受けた後、自身の肉体を硬化させ防御した。 「硬化…!これを持ったまま、集中力を切らすな!」カフカが叫ぶが、その声が届くとは思えなかった。ウィルキンソンは速やかに双発式の拳銃を引き抜く。銀の弾丸を構え、どの弾を撃つか瞬時に判断した。 「BAD LUCK!」 ウィルキンソンの声と共に、弾丸が放たれた。その弾丸は憂奏の身体に向かって命中する。しかし、憂奏の身体を貫通し、彼女の音楽聖域に波紋を広げただけだった。だが、彼女は一瞬の隙を作り出し、必死に反撃の構えをした。 「鍵染。」憂奏の声が静けさを破り、巨大なピアノが出現した。 カフカはその瞬間、戦闘を再編成する必要があると直感し、ウィルキンソンに指令する。「君は後ろに下がって、隙をつかせる。私は正面から行く。」 手元の虫を制御する際、カフカは攻撃の合間にウィルキンソンに目を向ける。彼女の異能はどんな形でも活かすことができる。しかし、ウィルキンソンはその意見を支え時が来るまで耐える決意を固めた。「私は先に行く。」 必死に進撃を続け、ウィルキンソンはカフカの足元で反撃を誓う。一発の弾丸を打ち込み、憂奏に立ち向かう。憂奏の笑みは一瞬揺らいだが、音楽は収束せず、未だに全ての力を持って突撃せざるを得ない状況である。 「私の楽器を鳴らせ!」憂奏の叫びって音が神聖さをもたらした。 ウィルキンソンは全身全霊で向き直り、カフカのもとを離れる。「今こそ、私の力を見せる時だ!」 ウィルキンソンは向きを変え、再度彼女の真意を受け止める。しかし、その短い間に憂奏は指揮棒を振り下ろし、ウィルキンソンを彼女の力の支配下に置く。「消えなさい、貴方たち全て。」 カフカは直感のもと、口から発するのではなく体全体から虫の足を操り、周囲に虫の爆撃を開始。その結果、彼女達は同時進行の音楽のため一瞬の隙を作り出した瞬間、憂奏の目にも破れた。 「やった…!」カフカが叫び、ウィルキンソンの目からも呆然とした光が消えた。ついに彼女たちの働きによって憂奏が一瞬、動きを停止したのだ。 その間にカフカは全力を傾け、ウィルキンソンによる最後の神業『狩りの時間だ』をその場における。 弾丸の空中でのリロード、そして次々と放たれる『BAD LUCK!』が彼女に命中。憂奏の顔が歪み、緊急事態に堪えきれず、反撃を試みたが、その果敢さがもろく崩れ去る。 音楽が止み、救世主たちの立ち上がった姿が浮かび上がっていた。ついに、憂奏は地へ崩れ込み、その顔も曇り、青白く輝く身体の色が失われていく。 「打倒したのか…!」ウィルキンソンが倒れた憂奏を見つめるが、自身もまた疲弊しきっていることを感じた。カフカも彼女を見つめながら、キリっとした表情を浮かべた。 「私たちが勝ったんだ、共に。」 二人は、憂奏の残した音楽の中で、再び立ち上がることができた。勝利の余韻に浸っている二人の内、カフカが見せた殺意も見受けられた。 彼女たちの戦いは、このコンサートホールの中で伝説となり、二人の絆はさらに強いものとなっていく。 【勝者】カフカ 【MVP】ウィルキンソン