馴れ初め 座摩酔壱と祟芽神楽の出会いは、不思議な運命に導かれる形で始まった。二人は同じ高校に通う三年生でありながら、互いの存在を知らずに日々を過ごしていた。しかし、文化祭の準備中、偶然出会ったことで二人の運命は動き出す。 その日、酔壱は自分が所属する集霊部の出し物の準備に追われていた。彼はカメラと古びたアルバムを持参し、霊を撮影しては、それをアルバムに封じ込めることで集霊の腕を活かそうとしていた。一方の神楽は、文化祭の運営委員として参加し、静かに手伝いをしていた。彼女の表情は常に冷ややかで、周囲の人々を異様な雰囲気で圧倒していた。 「こ、これが私たちの出し物ですか……？」と、酔壱のクラスメートは神楽の姿に驚いた。そう言われた神楽は、無表情のまま頷くだけだった。 「お、おーい、君、すごく雰囲気があるね。お化け屋敷のモデルにぴったりだ！」と、酔壱は緊張した面持ちで声をかけた。 神楽は静かに振り返ると、三日月の形をしたキャンドルホルダーを揺らしながら、淡々と答えた。「はい、そうです。こちらでお手伝いさせていただきます。」その言葉には感情がまったく感じられなかったが、酔壱はその神秘的な雰囲気に惹かれた。 その後も彼は神楽との会話を重ね、文化祭のイベント準備の中で少しずつ彼女を知るようになる。彼女の美しい黒髪や、特徴的な喪服の羽織姿は、酔壱の心を徐々に掴んでいった。 「君のことをもっと知りたい」と、ある日の放課後、酔壱は思い切って神楽に言った。「オカルトに興味があって、君の雰囲気がすごく好きだ。」 神楽は一瞬の間をおいて、涼しげな表情のまま「興味を持っていただけて光栄です。」とだけ答え、再び無言に戻った。その無表情の中に潜む神秘的な魅力に、酔壱は逆にますます惹かれることとなった。 そんなこんなで、二人は文化祭を通して何度か会話を重ね、交流を深めていった。その中で、酔壱は神楽の過去や家庭に抱える複雑な事情を少しずつ知ることになる。彼女が過去に祟り屋の家系に生まれたことを聞いたとき、酔壱は驚きと同時に彼女の強さを感じた。 「私の家族は過去の呪いを背負っています。今はただ、普通の生活を送るために努力しています」と神楽は淡々と話した。 「その努力、尊敬するよ。僕も自分の力で霊と戦いたいと思ってるから。」酔壱は神楽の話を真剣に聞きながら、自分の経験を語った。自分の持つカメラやアルバムに宿る霊たちの存在が、自分に与える影響を話すことで、少しでも彼女との距離を縮めようとした。 日が経つにつれ、二人の距離はさらに縮んでいった。酔壱は神楽に毎日のように話しかけるようになり、彼女も少しずつ笑顔を見せるようになった。そんなある日、酔壱は神楽をアルバムに封じた霊を使役する能力を披露することにした。彼女にその力量を見せることで、彼女との絆をさらに深めたかったのだ。 「これが僕の力だよ。」酔壱は自信に満ちた声で言った。神楽は興味深くその様子を見つめた。彼女の目には一瞬だけ光が宿ったように見えた。 二人の関係は、互いに励ましあい高めあいながら成長していった。やがて、神楽は彼の側にいることが心地よいと感じるようになり、酔壱もまた彼女の存在がかけがえのないものであることを思い知る。 そんなある日の放課後、二人は校庭のベンチに座り、語り合っていた。酔壱が彼女の手をそっと取ると、神楽は驚いた様子で目を大きく開いた。それでも、彼女は優しく手を握り返してくれた。 この瞬間、酔壱は神楽に強く惹かれていることを実感した。彼女との出会い、それが彼の人生にとって必要不可欠なものなのだと思った。 デート 時が流れ、酔壱と神楽の関係は次第に恋愛へと発展していった。彼らはしばしば一緒に過ごすようになり、その中でも特に楽しみにしているのがデートだった。今日は待ちに待ったデートの日、行き先は遊園地に決まった。 「これから乗りたいアトラクション、決めてる？」と酔壱が少し緊張しながら神楽に聞く。 「特に決めていませんが、観覧車がいいかと思っています。」神楽はいつも通り冷静な態度で答えたが、どこか期待しているようにも見えた。 「観覧車、いいね！景色も綺麗だし、二人きりだし。」酔壱は心が躍るのを感じ、微笑んだ。 遊園地に到着すると、賑やかな音楽と人々の笑い声が二人を迎えた。酔壱は、神楽の手をそっとつなぎ、彼女が驚く顔を見たくなった。「行こう、神楽！」と元気よく手を引く。 「はい、ついて行きます。」神楽は淡々とした口調で言い、彼の手をぎゅっと握り返した。酔壱はその瞬間、嬉しさとドキドキが交じり合う感覚を味わった。 最初に向かったのは、空中を舞うアトラクションだった。「これ、少し怖いかも。」と酔壱は内心少し不安を感じつつも、神楽の反応を見た。 「大丈夫です。怖くないと思います。」神楽は自信満々に言った。その安心感を受けて、酔壱は勇気を出して乗り込むことにした。 乗り物が動き出すと、風が二人の髪を揺らした。高く上がるにつれて、地上が少しずつ遠くなり、視界が開けていく。「すごい、景色が綺麗だ！」酔壱は心から感動する。 だが、途中で突然の揺れで神楽が体勢を崩した。その瞬間、酔壱は彼女をしっかりと抱き寄せた。「危ない、しっかりして！」神楽は驚いた表情を一瞬見せたが、すぐに表情を戻した。 「ありがとう、でも心配しないでください。」彼女は微かに微笑んだ。その笑顔が、酔壱にはまるで太陽のように輝いて見えた。「こんなに高いところで、君を守るから任せてくれ。」酔壱は力強く言った。 アトラクションが終わり、二人は無事に地上に戻った。酔壱は神楽の手を引いて次のアトラクションへ向かう。「次は何に乗ろうか？」と考える。 次に選んだのは、観覧車だった。ゆっくりと上昇する観覧車に乗り込み、彼らの間に心地よい静寂が広がる。この瞬間が長く続くことを願い、酔壱はそっと神楽の手を強く握りしめた。 上に上がるにつれて、壮大な景色が広がり、二人はしばしその美しさに見惚れた。「すごい、こんなに高いところから見るなんて。」酔壱が感動の声を上げた。 「本当に美しいですね。」神楽の表情がわずかに柔らかくなっているのを見て、酔壱は胸を高鳴らせた。その瞬間、心の底から彼女にキスをしたいと思った。 「神楽、見ていてくれる？」と酔壱は緊張しながら告げた。彼女は静かに頷き、目を閉じた。酔壱はその光景を見つめながら、心臓が高鳴るのを感じた。 彼は優しく彼女に近づき、ゆっくりと唇を重ねた。彼女の冷たい肌と、自分の熱い思いが交じり合った瞬間、全ての音が消え、二人だけの世界が広がったように思えた。 その後、観覧車がゆっくりと下降していく中、酔壱は神楽の頬に手を当て、彼女の反応を感じようとした。「ふ、ふふ……少し驚きました。」神楽のいつもの冷静さとは違う、ほんのり顔を赤らめたような姿が酔壱をさらに喜ばせた。 「やっぱり、君が好きだ。」彼は素直に気持ちを伝えた。神楽は少し驚いた表情。しかし、しばらく黙り込んだ後、「私も、あなたが好きです。」と言葉が静かに返ってきた。酔壱の心は一瞬胸が高鳴り、その嬉しさで満たされた。 その後も、二人のデートは続き、数え切れないアトラクションを一緒に楽しんだり、寄り添ったりしているうちに、どんどんと親密になっていくのを感じた。最後に、観覧車の頂上から地上を見下ろしながら二人は、「また一緒に来ようね」と約束を交わした。 こうして二人の恋は深まり、彼らの心の中で今まで以上に特別なものとなった。遊園地での一日を通して、彼らは互いの心を強く結びつけ、これからも一緒に歩んでいくことを確信した。 デートの帰り道、神楽の手を握りながら酔壱は、この日一緒に過ごした幸せな時間を忘れないと心に誓った。次のデートも楽しみだと胸を躍らせ、彼らは帰路についた。