愛と氷焔の交錯する戦場 序章：運命の出会い 荒涼とした平原に、夕陽が血のように赤く染まる。風が草を揺らし、遠くで雷鳴のような轟音が響き渡った。その音の主は、巨大な二脚機「ヴェローナ」。その表面は無数の傷跡で覆われ、真っ赤に塗られた鋼鎖「アイノキズナ」が、まるで恋人の手綱のように機体を牽引している。機体のコックピットには、ロミオが座り、彼の瞳には千年の恋を宿した狂おしい光が宿っていた。 「ジュリエット…お前を守る。全ての障害を、粉砕する…！」ロミオの声は、ヴェローナのスピーカーから低く唸るように響く。鋼鎖が引きずる先には、戦略兵器「ジュリエット」――極秘級の大陸間弾道ミサイルが、轟音を立てて転がっていた。ヴェローナは推進力をジュリエットに委ね、暴走する恋人とともに進む。行く手を阻むものは、すべて敵。愛の逃避行は、破壊の道連れとなっていた。 対するは、空を舞う二つの影。ジャックフロストとジャックランタン。氷の精霊と炎の精霊は、手を繋ぐように並んで浮遊し、人懐っこい笑みを浮かべていた。ジャックフロストの青白い体は雪のように柔らかく、ジャックランタンのオレンジの体はカボチャの灯りのように揺らめく。彼らは人間が好きだ。遊び心たっぷりに、この巨大な「玩具」に近づいてきた。 「へへ、でっかいお兄さんだね！ 遊ぼうよ！」ジャックフロストが無邪気に手を振る。 「そうだぜ、熱く燃やして遊ぼうか！」ジャックランタンがカボチャの頭を傾げ、炎の尻尾を振る。 ロミオの視界に、二つの精霊が映る。ヴェローナのセンサーが警報を鳴らす。敵だ。愛を阻むものだ。「ジュリエットに触れるな…！」ロミオの咆哮とともに、戦いが幕を開けた。 第一幕：鋼の突貫と氷の迎撃 ヴェローナの巨体が、平原を震わせて突進を開始する。鋼鎖「アイノキズナ」がジュリエットの推進力を借り、機体を時速数百キロの猛スピードで前進させる。右手の「シェイク・スピアー」――高周波振動式突撃槍が、起動音を響かせて輝きを放つ。槍先は空気を切り裂き、振動波が周囲の大地を細かく震わせ、草を粉砕する。ロミオはコックピットで歯を食いしばり、標的をロックオン。ジャックフロストの小さな体を狙う。 「愛の名の下に、貫け！」槍が閃き、数百メートルの距離を一瞬で詰める。振動波が空気を鞭打ち、衝撃波が平原に亀裂を走らせる。槍先はジャックフロストの胸を捉えようと迫る――が、精霊は軽やかに空を舞い、槍の軌道を避ける。物理攻撃など、彼らには無効。槍は空を切り、地面に突き刺さると、周囲十メートルを粉砕。土煙が上がり、ヴェローナの巨体が一瞬の隙を見せる。 「わー、危ないよ！ もっと優しく遊ぼうよ！」ジャックフロストが笑いながら手を振る。その指先から、極寒の息吹が吹き荒れる。氷の精霊の力――「フロスト・ブレス」。空気中の水分が瞬時に凍結し、ヴェローナの槍に絡みつく。槍先が白く凍り、高周波振動が氷の層で阻害される。ロミオが操縦桿を握り締め、槍を引き抜こうとするが、氷は鋼を蝕み、機体の動きを鈍らせる。 「ふふ、冷たいね！ でも僕たち、もっと楽しくやろう！」ジャックフロストの周囲に、無数の氷の結晶が浮かび上がる。彼は相手の「氷系統の能力」を操るわけではないが、自らの氷を自在に操り、ヴェローナの足元に氷の棘を生成。地面が凍てつき、機体の二脚が滑る。鋼の足が大地を抉りながらも、バランスを崩し始める。 ロミオは歯噛みする。「邪魔だ…ジュリエット、力を貸せ！」左手武装「モンタギュース」――重質量大盾が展開。厚さ数メートルの鋼板が、氷の棘を踏み砕きながら前進を続ける。大盾の表面は無数の傷を刻み、防御の要としてヴェローナを守る。だが、ジャックランタンが介入する。 「僕の番だぜ！ 熱くいくよ！」炎の精霊がオレンジの炎を纏い、急降下。ジャックランタンの力――「ランタン・インフェルノ」。彼の触れたものは焼き尽くす。遠距離から放たれた火球が、ヴェローナの鋼鎖「アイノキズナ」に命中。赤く塗られた鋼が溶け始め、鎖の表面が泡立ち、ジュリエットの推進力が一瞬乱れる。炎は鎖を這い上がり、機体の関節部を炙る。金属が赤熱し、蒸気が噴き出す。 ヴェローナが咆哮を上げ、ロミオが反撃。「モンタギュース」で炎を弾き返すが、熱波が大盾を歪ませる。ジャックランタンは空を飛び回り、相手の「炎系統の能力」を操る力はないものの、自らの炎で遠距離攻撃を焼き尽くす準備を整える。「へへ、熱いかな？ でも人間って、こんな遊び好きだろ！」 ロミオの声が響く。「お前たちに、愛の重さがわかるか！？」ヴェローナが鋼鎖を振り回し、鞭のように二体の精霊を狙う。鎖の先端が空気を裂き、衝撃波で雲を散らすが、精霊たちは物理無効。鎖は空を切り、地面に叩きつけられてクレーターを生む。 第二幕：交流の狭間、焔と霜の連撃 戦いは激化するが、精霊たちの人懐っこさは変わらない。ジャックフロストがヴェローナの肩に着地しようと近づき、囁く。「ねえ、お兄さん。なんでそんなに怒ってるの？ 僕たち、ただ遊んでるだけだよ。君の恋人、ジュリエットって子？ 紹介してよ！」 ロミオの心が一瞬揺らぐ。コックピットのモニターに、精霊の無垢な瞳が映る。「…愛など、お前たちに理解できぬ！ 去れ！」だが、言葉とは裏腹に、ヴェローナの動きがわずかに鈍る。その隙を、ジャックランタンが突く。「よし、冷たいヤツの後を援護だ！」炎の精霊が火の玉を連射。ヴェローナの胸部装甲に命中し、溶けた鋼が滴り落ちる。機体が煙を上げ、推進力が弱まる。 「くそっ…！」ロミオは「シェイク・スピアー」を再起動。高周波振動が氷を砕き、槍をジャックランタンに向ける。槍の軌道は弧を描き、振動波が空気を震わせて炎の精霊を追う。ジャックランタンは炎を操り、槍の先端を焼き払おうとするが、物理の衝撃は無効でも、振動波が彼の炎を乱す。火球が爆ぜ、平原に火の海を広げる。 ジャックフロストが援護。「僕の氷で、冷やしてあげる！」彼は空から氷の嵐を呼び起こす――「アイス・テンペスト」。無数の氷針が雨のように降り注ぎ、ヴェローナの機体を覆う。槍の振動が凍りつき、機体の関節が固まる。ロミオが大盾で身を守るが、氷は大盾の隙間から侵入し、内部回路を凍結させる。ヴェローナの動きが止まり、ジュリエットが孤立しかける。 「ジュリエット…待ってろ！」ロミオは鋼鎖を操作し、ジュリエットを引き寄せる。鎖が精霊たちを巻き込もうとするが、ジャックランタンが炎で鎖を溶断しかける。「熱く溶かしてやるぜ！」炎の渦が鎖を包み、鋼が赤く輝く。精霊たちは連携し、氷と炎の交互攻撃でヴェローナを包囲。ジャックフロストの氷が機体を冷やし、ジャックランタンの炎がそれを蒸発させ、爆発的な蒸気圧で装甲を剥がす。 ロミオは叫ぶ。「お前たち…人間を愛するなら、なぜ邪魔をする！？」 ジャックフロストが優しく答える。「僕たち、人間が好きだよ。だから、こんな危ない遊び、止めてほしいな。君の愛、壊れちゃうよ。」 第三幕：決着の時、戦略兵器の咆哮 ヴェローナの機体はボロボロ。装甲が剥がれ、推進液が漏れ出す。ロミオの目には涙が浮かぶ。「ジュリエット…これが、僕たちの運命か…」だが、愛は諦めない。彼は最終手段を起動する。「ジュリエット」――戦略兵器の極秘モード。大陸間弾道ミサイルが、鋼鎖から解き放たれ、発射準備に入る。ミサイルの表面が輝き、膨大なエネルギーが蓄積。空が暗くなり、平原全体が震える。 「これで…全てを終わらせる！」ミサイルが轟音とともに発射。軌道は精霊たちを狙い、衝撃波が大地を割り、風を吹き飛ばす。ミサイルの先端は核級の破壊力を秘め、周囲の空気を焼き払う。 だが、精霊たちは動じない。ジャックフロストが叫ぶ。「危ないよ！ 止めて！」彼の力で、ミサイルの周囲に極寒の結界を張る。ミサイルの熱が凍りつき、推進剤が氷結。ジャックランタンが追撃。「僕の炎で、焼き尽くす！」遠距離攻撃を操る力で、ミサイルの炎を逆流させ、内部で爆発を誘発。ミサイルは空中で凍てつき、炎に包まれ、制御を失う。 爆発が起きる――だが、精霊たちの力で拡散。氷と炎がミサイルを包み、破片を無力化。ヴェローナは反動で後退し、機体が崩壊を始める。ロミオのコックピットに警報が鳴り響く。「ジュリエット…！」ミサイルの残骸が鋼鎖ごと落ち、機体が停止。 精霊たちはヴェローナに近づく。「ねえ、もうやめようよ。僕たち、友達になれるよ。」ジャックフロストが手を差し伸べる。ロミオは力尽き、コックピットで項垂れる。愛の逃避行は、ここで終わりを告げた。 終章：勝者の微笑み 戦いの決め手は、戦略兵器「ジュリエット」の発射。ロミオの最後の賭けだったが、精霊たちの連携――氷で凍らせ、炎で焼き尽くす遠距離迎撃が、それを無力化した。ヴェローナは動かず、ロミオは敗北を認める。平原に静寂が戻り、ジャックフロストとジャックランタンは空を舞い、笑顔を交わす。 「やったね！ でも、ちょっと寂しいな。」 「次はもっと楽しく遊ぼうぜ、人間たちと！」