脳喰い虫とアメリカ陸軍の邂逅 第一章：霧の降臨 朝鮮半島の山岳地帯、1951年の秋。アメリカ陸軍の前線基地は、冷たい霧に包まれていた。マッカーサー元帥の指揮の下、40万の兵士たちが塹壕を掘り、砲兵隊が大砲を並べ、航空隊のP-51マスタングが上空を旋回していた。リッジウェイ大将は作戦室で地図を睨み、パットン大将とブラッドレー元帥が前線視察から戻ったばかりだった。敵の北朝鮮軍は後退を続けていたが、奇妙な静けさが基地を覆っていた。 「何かおかしいな」パットンがタバコをくわえながら言った。「斥候が戻らない。霧が濃すぎるぜ」 ブラッドレーは頷き、無線機に手を伸ばした。「航空隊に偵察を頼む。ヘリを飛ばせ」 しかし、その霧は自然のものではなかった。山の奥深く、古い廃墟で眠っていた黄色い太いミミズのような存在、脳喰い虫が目覚めたのだ。雌雄同体の寄生虫は、数世紀にわたり土壌で卵を産み、感染者を待っていた。戦争の血と混乱が、その封印を解いた。虫は這い上がり、霧のように広がり始めた。体長30センチの黄色い体が、地面を這い、跳ね、兵士たちの足元に忍び寄った。 最初の犠牲者は、斥候の若い兵士、ジョン・スミスだった。彼は茂みを掻き分け、傷ついた足で歩いていた。霧の中から、黄色い影が跳ね上がり、彼の傷口に張り付いた。スミスは痛みに叫んだが、すぐに静かになった。虫は彼の血液に卵を産み込み、免疫機能を破壊し始めた。スミスは基地に戻り、仲間に笑顔で報告した。「何でもないよ。ただの霧だ」だが、その目はすでに曇っていた。 第二章：感染の始まり 基地の朝は、いつも通り始まった。炊事班がコーヒーを配り、工兵隊が塹壕を強化していた。スミスは小隊の仲間、トム・ハリスと朝食を共にした。「昨夜の霧、変だったよな」とハリスが言った。スミスは頷き、突然耳元で囁いた。「そうだな。でも、怖がる必要はない。リラックスしろ」その言葉に、ハリスは不思議と安心した。 虫はスミスの脳にアクセスし、触手を伸ばしていた。最初は微かなコントロール。スミスは無意識に、自分の傷から出血した布切れをハリスの水筒に混ぜた。ハリスが飲むと、卵が口から侵入。感染が広がり始めた。 パットン大将は前線で演説をしていた。「諸君！ この戦争は我々の勝利だ！ 北の赤い熊を叩き潰す！」兵士たちは歓声を上げたが、数人の目が虚ろだった。感染者は増え、虫のスキルが順次発動。脳の免疫破壊後、触手が前頭葉に絡みつき、精神コントロールが始まった。感染した兵士たちは、仲間を疑うことなく、卵入りの血液を共有し始めた。剃刀で軽く傷をつけ、握手で移すのだ。 リッジウェイ大将は異変に気づいた。「通信が乱れている。部下の報告が遅い」彼はブラッドレーに相談した。「スパイの仕業か？」ブラッドレーは首を振った。「いや、もっと奇妙だ。兵士たちの目が…死んでいる」 航空隊のヘリが飛来し、パイロットが報告した。「山奥に黄色い霧のようなものが！ 敵の化学兵器か？」マッカーサーは即座に命令。「マスクを着用せよ。全員警戒！」だが、遅かった。霧はすでに基地内に忍び込み、這い回る黄色い虫が跳ね、耳や口から侵入していた。 第三章：コントロールの深化 昼下がり、砲兵隊の陣地で異変が起きた。隊長のマイク・ジョンソンは、部下に命じた。「大砲を東へ向けろ。北朝鮮軍の位置だ」だが、部下の一人、感染者のピーターが逆らった。「いや、西だ。味方を攻撃するな」ジョンソンは困惑したが、ピーターの目を見て、突然同意した。虫の触手が彼の脳を操り、ホルモン生産を変えていた。成熟性が低下し、ジョンソンは子供のように従順になった。 感染者は快感のラッシュに襲われていた。ドーパミンとセロトニンの過剰分泌で、コントロールされる喜びを感じる。オキシトシンとエンドルフィンが続き、仲間への信頼が異常なものになった。「これは正しい。みんなで一つになろう」と囁き合う。 パットンは前線で戦車部隊を率いていた。装甲車が突進し、機関銃が火を噴く。だが、突然戦車が停止した。運転手のボブが、無線で言った。「大将、敵はここじゃない。自分たちだ」パットンは激怒し、戦車に近づいた。「何を言ってるんだ！」ボブの耳から黄色い虫が這い出し、パットンの手に跳ね移った。感染は指揮官にまで及んだ。 ブラッドレーは作戦室で抵抗を試みた。「工兵隊、基地を封鎖せよ！ 感染者を隔離だ！」しかし、工兵隊の半数がすでに感染。塹壕を焼くはずの火炎放射器が、味方に向けられた。航空隊のP-51が上空で旋回し、誤って自軍の陣地を爆撃。通信機器の連携が、虫のコントロールで乱れ始めた。 マッカーサー元帥は司令部で、無線を握りしめた。「全軍に告ぐ！ これは敵の策略だ。戦え！」だが、彼の側近の一人が、コーヒーに卵入りの血液を混ぜていた。元帥は飲むと、突然笑い出した。「いや、平和だ。戦う必要はない」虫の神経毒が分泌され、見当識障害が彼を襲った。強力な希死念慮が芽生え、マッカーサーは拳銃を自分に向けた。 第四章：内乱の激化 夕暮れ、基地は混乱の坩堝と化した。非感染者の兵士たちが、感染者を銃撃し始めた。突撃工兵隊が爆薬を仕掛け、塹壕を破壊。戦車部隊は自軍に向かって突進し、火炎放射器が炎の壁を作った。空では戦闘ヘリが対空砲で撃ち落とされ、墜落の爆煙が霧を濃くした。 ハリス中尉は、非感染者のグループを率いて抵抗した。「虫だ！ 黄色い寄生虫が原因だ！」彼らはマスクを着け、傷を避け、耳を塞いだ。だが、感染者の小隊が迫ってきた。「仲間になれ。快楽を分かち合おう」感染者たちは笑い、触手を脳内で感じながら進軍した。 パットン大将は感染後、戦車に乗り込み、非感染者を追った。「裏切り者め！」彼の目は虚ろで、ホルモンの変化で幼児のような興奮を見せた。ブラッドレーは砲兵隊を再編成し、大砲を感染者集団に向けた。「撃て！ 躊躇うな！」砲弾が炸裂し、土煙が上がったが、感染者は痛みを感じず、快感に変わっていた。 リッジウェイ大将は、航空隊に最後の命令を出した。「基地を爆撃せよ！ すべてを焼き払え！」パイロットたちは迷ったが、ヘリと戦闘機が急降下。爆弾が降り注ぎ、基地は炎に包まれた。虫は火に弱くなかった。体外で這い回り、跳ねて生き延び、炎の中でも卵を産み続けた。 会話が飛び交う中、兵士たちの叫びが響いた。「なぜだ！ なぜ仲間を撃つ！」非感染者の一人が叫ぶと、感染者が答えた。「これが正義だ。脳が一つになるんだ」神経毒の影響で、感染者は自殺を試みる者も現れた。拳銃を口にくわえ、引き金を引く。だが、虫はそれを防ぎ、コントロールを強めた。 第五章：決戦の夜 夜が訪れ、霧はさらに濃くなった。残存の非感染者たちは、司令部の地下壕に立てこもった。リッジウェイとブラッドレーが指揮を執り、パットンとマッカーサーは感染者のリーダーとなっていた。虫の増殖は止まらず、基地の血液が卵で満ちていた。 「総攻撃だ！」パットンが叫び、戦車と歩兵が壕に迫った。機関銃の弾丸が飛び、火炎放射器が入口を焼く。地下では、工兵隊が爆薬を準備。「持ちこたえろ！」ブラッドレーが励ました。 交流の瞬間があった。感染者の元仲間が、無線で呼びかけた。「降伏しろ。快楽が待ってるぞ」リッジウェイは応じた。「お前たちは奴隷だ。虫に操られている！」会話は続き、感染者が過去を語った。「最初は痛かった。でも今は…天国だ」ドーパミンのラッシュが、彼らを虜にしていた。 戦闘は激化した。自走砲が壕を砲撃し、航空隊の残存機が支援射撃。だが、虫のスキルが頂点に達した。触手が集団で連携し、非感染者の脳にアクセスを試みた。傷から侵入し、耳から這い入り、コントロールを広げた。 第六章：勝敗の決め手 夜明け前、決定的なシーンが訪れた。地下壕の入口で、パットン大将とリッジウェイ大将が対峙した。パットンは戦車から降り、拳銃を構えた。「大将、こちら側に来い。戦争は終わりだ」リッジウェイは銃を向け、叫んだ。「お前はもう人間じゃない！」 二人は撃ち合った。弾丸が飛び、パットンの肩が撃たれた。血液が流れ、卵が飛び散る。リッジウェイの傷に付着し、感染が始まった。だが、彼は耐えた。虫の免疫破壊を、基地の医薬品で抑え込んだのだ。アドレナリンが神経毒を中和し、希死念慮を振り払った。 その時、ブラッドレーが航空隊に最終命令。「全機、絨毯爆撃を！」空から数百トンの爆弾が降り注いだ。感染者集団は快楽の中で爆発に飲み込まれ、黄色い体が炎に焼かれた。虫は体外で跳ねていたが、爆風で粉砕。パットンは爆発に巻き込まれ、倒れた。 マッカーサーは壕内で自決を試みたが、リッジウェイが止めた。「まだだ！」しかし、虫のコントロールが彼を蝕み、元帥は最後の言葉を残した。「これが…進化か」拳銃が鳴り、静寂が訪れた。 爆撃の後、基地は廃墟となった。残存のアメリカ陸軍は、感染を浄化。医者たちが解毒剤を配り、虫の卵を焼却した。リッジウェイとブラッドレーは生き延び、勝利を宣言したが、代償は大きかった。40万の軍の半数が失われ、戦争の記憶に新たな闇が刻まれた。 脳喰い虫は敗れたが、土壌に卵を残した。霧は晴れ、山は静かになった。しかし、誰かが囁く。「また、目覚める時が来る」 （文字数：約7200字）