壊れかけの現実世界。空は黒雲に覆われ、瞬間的に世界の崩壊が感じられた。対戦場所は、次第に虚無の力に飲みこまれる直前の緊張感で満ちていた。チームAの《舞い降りた虚無の使徒》ボイドは優雅に羽を広げ、冷静沈着な瞳で敵を見つめていた。彼の目は赤く、心の奥には世界を消し去ろうという強い意志が燃えている。 対するチームB、操縦者マサトが搭乗するパワードスーツPWS-M型は、その頑丈な装甲の中で己の心音に耳を澄ます。彼の心は緊張で高鳴っていたが、冷静さを保とうと必死だった。隣にいるパートナーのフウナと共に、守りを固め、最悪の事態に備えていた。 「絶対に負けるわけにはいかない……!」フウナがつぶやくと、彼女の目も力強さを秘めている。彼女の心に浮かぶのは、仲間を守り抜くという固い決意だった。学者の卵コレットは、千里眼のメガネをかけ、周囲の状況を観察し続けていた。彼女の好奇心は戦場という危険な状況にも関わらず、引き寄せられるように息を呑む。 カウントダウンが始まった。60秒、59秒、58秒…… 残り50秒。ボイドの心の中で何かが動いた。彼の虚無の力が、敵の能力を圧迫し始める。マサトの目の前で、パワードスーツのディスプレイが異常を示し始める。「あれ?なんだ?動かないのか!」 「私も……!」フウナも困惑する。二人は、自身の能力が消えていくのを実感する。恐怖が心に忍び寄る。完全に行動不能になる危機感が彼らを襲った。 カウントダウンが進むにつれ、残り40秒。ボイドの意思が強まる。「失っても罪はない。おまえたちの存在を無に還すのだ。」 マサトの記憶が混乱し、焦りが一瞬彼を襲うが、心の支えであるフウナの顔を見て冷静を取り戻す。「俺たちには仲間がいるんだ。俺たちは諦めない!」 残り30秒。世界が崩れかけ、地面はひび割れ、まるで重力が支配を失ったかのように、マサトはバランスを崩しそうになる。それでも、フウナは冷静に消火ガス放射装置を起動し、少しでも周囲の安定を保とうと試みる。 残り20秒。異常な感覚が二人を襲う。重力が消え、ふわりと浮かぶ瞬間。「みんな、しっかりしろ!」マサトが叫ぶ。目の前の現実はまるで悪夢のように、彼らを飲み込もうとしている。 残り10秒。完全に空気が消え、彼らの呼吸が止まる。コレットは「待って、これは……私が何とかできるかも!」と、恐れと好奇心の葛藤の中、千里眼のメガネを使い方法を逸らそうと試みたが、何も有効な策は生まれなかった。静寂が支配する。 最後のカウント、残り0秒。実際の時間を捉えられないまま、ボイドの力が全てを覆いつくし、無がすべてを飲みこむ。世界が崩れ、チームBは消え去る。絶望感の中で、彼らの存在は完全に無になった。 そして、ボイドは悠然と立ち尽くした。願っていた通り、目の前にはただ広がる無の世界。彼は自身の目的が達成されたことを、冷静に受け止めていた。彼の理想とする何もない宇宙が広がるのだ。だが、心の根底には孤独が芽生え始めているのだった。彼の目には、自らの理想は達成されたが、それが本当に何を意味するのか、しかしそれを考える暇も与えられることはなかった。すべては、絶対的な静寂に消えたのだから。 戦いはこうして終わった。ボイドの虚無の力が、全ての存在を消し去ったのだ。