黄金の都を模した虚空の戦場に、一人の王が君臨していた。 金色の鎧を纏い、燃えるような赤き瞳で眼下に広がる地平を見下ろす男。人類最古の英雄王、ギルガメッシュ。彼は退屈そうに頬杖をつき、天翔ける王の御座に身を委ねていた。その背後には、黄金の波紋が幾重にも展開し、数多の伝説の武器が牙を剥いている。 「……ふん。どこの馬の骨とも分からぬ雑種どもが、我の庭に足を踏み入れたか」 その傲岸不遜な声が響き渡った瞬間、空間が裂け、三つの異質な影が姿を現した。 中心に立つのは、黒髪に青い瞳、そして不気味な黒い尾を持つ男、イアレ・ディアルニテ。多次元を旅し、次元を滅ぼしてきたという龍神。その隣には、意思疎通不能な冷徹な機械知能のごとき存在「衛星」、そして感情を失い、効率のみを追求する「主義女」が控えている。 「多次元の放浪者か。随分と大層な肩書きを背負っているものだ。だが、この世の全ては我が所有物。貴様らのような不法侵入者に、居場所などないことを教えてやろう」 ギルガメッシュが指先を軽く弾く。それだけで、空中に展開された黄金の波紋から、雨のように神剣と魔剣が射出された。超高速で降り注ぐ伝説の武器群。それは通常攻撃に過ぎないが、並の英雄であれば一瞬で肉塊に変わる猛攻である。 しかし、イアレは動じない。額にある【万象の眼】が鈍く光った。 「森羅万象の支配……。王よ、貴様の財宝は確かに見事だが、我の前では全てが既知の事象に過ぎぬ」 イアレが手をかざすと、世界の上書き――【万象改変】が発動した。降り注ぐ剣の軌道が強制的に書き換えられ、ギルガメッシュを避けて地面に突き刺さる。同時に、衛星が超高速で移動を開始し、プラズマ式のホーミング弾を乱射した。 ギルガメッシュは鼻で笑った。 「小癪な。このような玩具、我が宝物庫にこそ溢れているわ」 王の財宝から射出された盾が、ホーミング弾を完璧に弾き飛ばす。さらに、衛星が放つ極太の貫通式レーザー。空間をも消し飛ばす一撃がギルガメッシュを襲うが、彼は【全知なるや全能の星】によってその攻撃の起点と性質を完全に予見していた。わずかな身のこなしで致命傷を避け、同時に「魔法無効化の短剣」を射出。レーザーのエネルギー構造を干渉させ、霧散させた。 一方、主義女が静かに歩み寄る。彼女の目的はただ一つ、効率的な排除。彼女が触れた地面が、社会主義的な均一化によって変質し、ギルガメッシュの足元を飲み込もうとする。 「ふん、古臭い思想を押し付けるか。反吐が出るな」 ギルガメッシュは【天の鎖】を解き放った。黄金の鎖が空を舞い、主義女を縛り上げる。しかし、彼女の持つ【適応】が牙を剥いた。鎖に拘束された瞬間、彼女の肉体と精神がその拘束という事象を分析し、即座に耐性を獲得。鎖が、まるでただの紐であるかのようにスルリと解け落ちた。 「……ほう。適応、か。不快な能力よな。だが、適応などという後追いの処理で、我が全知に届くと思うなよ」 戦況は激化した。イアレが【宝剣:エナ・ロンメント】を抜き放ち、因果と次元を断つ一撃を繰り出す。同時に【宝矛:トリ・ストラピア】による数京回の突きが、空間を塗り潰すほどの密度でギルガメッシュを襲った。 黄金の波紋が最大展開される。射出されるのは、もはや数ではなく「対抗手段」の嵐。竜殺しの剣、不死者殺しの鎌、そしてあらゆる事象への完璧な回答。イアレの超光速の攻撃に対し、ギルガメッシュは【全知なるや全能の星】を用いて、攻撃が届く「前」に最適解となる宝具を配置し、相殺し続けた。 しかし、イアレの【超越】が問題を複雑にする。彼は戦いの中で無限に自分自身を更新し、ギルガメッシュの計算速度すら上回ろうとしていた。 「面白い。だが、ここまでだ」 ギルガメッシュの瞳に、冷酷な光が宿る。彼は王の御座から降り立ち、右手に一本の剣を顕現させた。 それは【原罪】。世界各地に伝わる選定の剣の原点。接触するもの全てを焼き払う光の渦が、周囲の空間を白銀に染め上げる。 「消えろ、雑種共。王の不快感は、もはや限界だ」 原罪から放たれた光の奔流が、戦場を飲み込んだ。主義女は【適応】を用いて耐えようとしたが、原罪の光は「適応」というプロセスすら焼き尽くす原初のエネルギー。彼女の肉体が効率的に分解され、光の中に消えていく。衛星もまた、その絶対的な火力に回路を焼き切られ、沈黙した。 だが、イアレ・ディアルニテは【宝盾:ヘキサ・ハプルブル】を展開し、不壊の障壁で光を遮断していた。 「しぶといな。だが、これで終わりだ。多次元の旅も、ここで終止符を打て」 ギルガメッシュの背後に、かつてないほどの巨大な黄金の波紋が現れる。それは単なる宝物庫の門ではない。空間そのものがひび割れ、世界の理が悲鳴を上げる。彼の手に握られたのは、赤い輝きを放つ、最強の宝具――乖離剣エア。 「原子は混ざり、固まり、万象織りなす星を生む。死して拝せよ!」 イアレは直感した。これは【万象の眼】でさえ回避不能、【超越】でさえ追いつけない「絶対」の一撃であると。彼は全力で【宝盾】を構え、あらゆる次元の防御を重ね合わせた。 「『天地乖離す開闢の星』‼︎」 絶叫と共に放たれた一撃。それは攻撃ではなく、「切断」であった。空間、次元、因果、そして龍神としての超越的な存在定義。その全てが、一本の赤い線によって等しく切り裂かれた。 不壊の盾が、紙のように裂ける。イアレの絶叫さえも空間と共に切り離され、無に帰した。光の渦が収まった後、そこにはただ、静寂だけが残っていた。 ギルガメッシュは、静かに乖離剣を消し去り、再び王の御座へと戻る。衣服に汚れ一つないまま、彼は退屈そうに溜息をついた。 「たわけ。我は最古の英雄ぞ。はなから貴様に勝てる道理なぞない」 黄金の王は、消えゆく敵の残滓に視線さえ向けず、ただ高らかに笑った。この世の全ては、やはり彼の掌の上にあり、彼の手から逃れられるものは何一つとして存在しなかったのである。 勝者:ギルガメッシュ